貿易事務のお仕事解説

貿易事務って?

食品、電化製品、衣料、車、住宅、医薬品など、わたしたちの暮らしは、さまざまな「もの」で彩られています。輸出や輸入を経て世界中の原料や製品が、私たちの手元へと届けられています。ものを動かす貿易の多面的な業務を支えるのが、「貿易事務」という仕事です。キャリア・カウンセリングの担当が、グローバルに活躍できる貿易事務についてお答えします。

生活と貿易は密接に関わっているのに、「貿易事務」の実務となると途端にわかりにくくなる。具体的にはどのような仕事があるのでしょうか。

まず大きく、輸出に関する仕事と輸入に関する仕事の2つに分かれます。具体的な業務内容は、商品の受発注や納期・スケジュールの確認、船便などの輸送手段の予約や手配、通関書類の作成・チェック、さらに代金支払いの諸手続や利益計算などがあります。

海外とのやりとりなので、それらの事務全般を英語で処理できなくてはなりません。もちろん英語力も必要ですが、輸出と輸入では業務内容は異なるのですか?

一般に、書類を作成する輸出業務の方が、書類を確認する輸入業務よりも難易度が高いと言われています。業界としては、メーカー、乙仲(海運貨物取扱業者)、船会社、商社の4つがあり、それぞれで役割も異なります。メーカーは主に自社製品の販売、乙仲は仲介業として船の予約や税金の処理などを請け負います。船会社は実際に船を保有し、運送します。そして商社は代金決済までを含めた幅広い業務を行っています。

パソナのスタッフの方が、貿易事務に携わる場合は?

メーカー、商社からのご依頼が多いですね。メーカーの場合は、海外から自社製品の問合せが入ると国内の工場に発注をかけ、その納期などを海外のお客様にお答えします。また輸出するための書類を作成したり、場合によっては船の予約なども行います。そのため、必要なスキルとして、納期の確認が英語でできる程度の語学力を求められることが多いです。

ということは、未経験であってもある程度の英語力があれば、貿易事務は可能なのですか。

人材不足の今、即戦力として活躍できる経験者はもちろんのこと、たとえ未経験でも英語力があり意欲がある方ならばぜひ、というご要望を多くいただいております。英語力は最低でも英検2級程度は必要でしょう。未経験の場合は、まずアシスタントとして貿易の仕事に携わり、専門用語などを学びながら貿易全体の流れを掴んでいくことで、徐々に貿易の実務経験を積むことができます。

貿易と聞くと専門性が高い難しい仕事と敬遠しそうですが、アシスタントとして入ることもできるのですね。商社の場合は?

商社でも、輸出に関しての流れはメーカーと同様ですが、商社は最後に代金決済まで請け負うので、より業務は複雑になります。代金決済のひとつにL/C (Letter of Credit)という信用状に基づく決済方法を用いています。海外と取引を行う貿易では、通常の国内取引のように、商品が取引先に届いてから入金されるシステムだと決済に長い時間が掛かってしまいます。そこで、多くの場合、直接お金のやりとりはせず、銀行に介入してもらうことで、支払いの保証を得ています。そのため、L/C決済が必要となります。一番複雑な処理なので、これができればどこの商社でも安心して仕事を任せられるスタッフと言われますね。

L/Cを経験すれば商社からも引く手あまたなのですね。とはいえ決済に関わる書類の作成となると、貿易事務の全体像を把握していないとできませんよね。

貿易は、「お金」と「もの」の流れが同時引き渡しではなく、時間差で発生します。そこに銀行、役所、税務申告、通関手続きといった複雑な業務と様々な業者が絡んできます。例えばこの商品は日本に入れていいのか悪いのか、法律に照らし合わせるなど、総合的に考える力も必要となります。

事務の実務だけでなく、より広い視野で全体を掴めないといけないのですね。

未経験の方が、初めから、責任の大きな仕事を任せられることはありません。まずアシスタントから貿易事務に入っていただき、キャリアをひとつひとつ積んでいく。少しずつステップアップして、やがては契約を取ったり、交渉をしたり、値決めをするなど、貿易のスペシャリストとして仕事を任されるようになった派遣スタッフの方も実際にいらっしゃいます。

商社マンと、肩を並べて働くこともあるとは!

主に商社では、男性社員のポジションではありますが、実際にそうしてご活躍される方もいらっしゃいます。いずれにしても貿易事務はある程度の責任があり、やりがいのある仕事です。また仕事の幅も広いので、未経験の方でも入っていける仕事はたくさんあります。そして働きながら段階的にスキルを身に付けていくことができるのです。

総合商社もメーカーも、現在、女性一般職の正社員の人員を減らす傾向が続いています。貿易という仕事に就くには今は正社員を目指すよりも、派遣スタッフとしてスキルを上げていく方が、チャンスが多いかもしれません。

実際に100名以上の派遣スタッフが活躍されている総合商社もあります。さらに最近では働く側の意識も多様化しています。将来独立してご自身で個人輸入を始めるために、貿易事務の基礎を身につけたいという方もいらっしゃいます。貿易での仕事は本などから得られる知識を理解していても、実際に経験してみないと掴めない要素がたくさんありますから。

経験を積んでから開業したい、それは今日的な発想かも。アシスタント業務でも、開業に必要な知識が得られますか?

書面的な手続きの全てを任されることも多いので、さまざまな知識を身に付けることができると思います。大きな企業に入ると業務の担当が細分化されるので、もし自分で全部やってみたいという希望があるのならば、中小の規模の企業を選び、総合的に仕事を覚えていくのが良いかも知れません。

ところで、貿易事務に必要な資質とは何でしょう。

やはり「正確さ」ではないでしょうか。貿易の仕事ではケアレスミスが許されません。為替が1円上下するだけでも莫大な金額が動く世界です。しかも決まりごとがとても多い。為替の計算や数字を扱った処理が得意か苦手か、私たちもご本人にヒアリングしています。もし苦手意識があるならば、あまり数字を扱わない仕事をご案内することもできます。ご本人の意志を尊重しながら、どのような適性があるか、ご相談させていただいています。

貿易事務は、多くの派遣の方が活躍できる職業です。
もしそれに憧れを抱いているならば、まずは怖がらずにトライすること、そして真摯に仕事に向き合うやる気を持続させることが大切です。

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