おすすめ特集・コラム産業保健師とは?企業における役割・業務内容・産業医との違いをわかりやすく解説
更新日:2025.10.03
- 健康経営
企業で働く人の健康を守るうえで、産業医の存在はよく知られていますが、そのサポート役として注目されているのが産業保健師です。
産業保健師は、身近で相談しやすい存在として不調の早期発見を助けるだけでなく、産業医の専門性を最大限に活かせるよう橋渡し役も果たします。
本記事では、産業保健師の役割や業務内容、導入するメリットや注意点をわかりやすく解説し、企業に合った導入方法を紹介します。
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健康経営を推進『保健師活用事例集』
産業保健師とは従業員と産業医、人事、上長間のハブ的役割を果たし、きめ細かいサポートを行う存在です。この資料では、産業保健師に任せられる業務と計8ケースの活用事例をご紹介しております。
- 産業保健師に任せられる業務
- 活用事例
- パソナの産業保健師が選ばれる理由
産業保健や健康経営に課題をお持ちのご担当者の方はぜひご参考にしてください。
産業保健師とは?
産業保健師の基本的な定義と企業での位置づけや、産業医・産業看護師との違いについて紹介します。
産業保健師の役割
産業保健師は、企業で働く従業員の健康を日常的に支えることが役割です。具体的には、健康相談や面談で従業員の体調やメンタルの不調に対応し、必要に応じて医療機関や産業医と連携します。
また、健康診断の結果に基づく生活習慣改善の助言や再検査の案内、長時間労働者やメンタル不調者のフォローも行います。産業医と連携しながら、現場に近い立場で従業員の健康を守る橋渡し役を果たす点が主な役割です。
産業保健師に必要な資格
産業保健師として働くには、看護師免許に加えて保健師免許が必要です。
看護師免許によって基礎的な医療知識や応急対応のスキルを持ち、保健師免許があることで健康教育や予防活動など幅広い支援が可能になります。
企業が産業保健師を採用する際は、この二つの資格を保有しているかどうかを確認することが大切です。
産業医との違い
産業医は、労働安全衛生法に基づいて選任される医師で、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、健診結果をもとにした就業上の判断などを行います。従業員が50人以上の事業場では選任が義務付けられています。
一方、産業保健師は、健診後のフォローやストレスチェックの実施、日常的な健康相談など、現場に寄り添った実務を担う点が特徴です。
産業保健師が日々の状況を整理し、産業医に伝えることで、産業医は専門的な判断に集中できるという役割分担が成り立ちます。
関連記事:産業医とは?役割や医師との違い・仕事内容について詳しく解説!
産業看護師との違い
産業看護師は、企業の医務室などで従業員のけがや病気への応急処置を行い、日常的な健康管理を担う役割です。
産業保健師と協力しながら健康相談や保健指導を支え、治験コーディネーターや臨床開発モニター、品質管理者、ヘルスカウンセラーなども広い意味で含まれます。
一方で産業保健師は、看護師免許に加えて保健師資格を持ち、産業医と連携し健康診断結果に基づく指導や就業上の措置、職場環境の改善など法律に基づく活動を担います。
つまり、産業看護師は現場で身近な健康サポートを行う役割、産業保健師は制度面から専門的に健康管理に関与する役割という点が両者の違いです。
産業保健師の主な業務内容
産業保健師の主な業務内容は以下のとおりです。
- 従業員の健康管理
- メンタルヘルス対策
- 職場巡視・作業環境改善のサポート
- 労働安全衛生委員会への参加
- 従業員向け健康教育セミナーの実施
業務内容を詳しく解説します。
従業員の健康管理
産業保健師の大切な役割は、健康診断後のフォローをしっかり行い、従業員の不調を早期に発見することです。健診結果には再検査が必要な人もいますが、月1回の産業医だけでは全員をカバーするのは難しいのが現実です。
そこで産業保健師が結果の説明や受診の案内、経過の確認を継続的に行い、必要に応じて産業医に情報を共有します。こうした体制によって従業員が適切に医療を受けられ、産業医は限られた時間を専門的な判断に集中できます。
メンタルヘルス対策
精神状態の維持や心のケアなどのメンタルヘルス対策も産業保健師の役割です。特にストレスチェック制度では、実施から運営までを担い、気軽に相談できる窓口として従業員を支えます。
ストレス不調は早い段階で相談しにくく、産業医面談まで進まないケースもあるため、産業保健師が身近な相談相手になることが重要です。
高ストレスと判定された従業員には寄り添いながら話を聞き、必要があれば産業医や医療機関へとつなげます。
さらに、部署ごとの分析結果をもとに職場改善を提案することで、個人の支援と組織全体の環境づくりの両面からメンタルヘルス対策を進めます。
ストレスチェックについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
関連記事:ストレスチェックの義務化。従業員50人未満の事業所が対応すべきポイント
職場巡視・作業環境改善のサポート
産業保健師は、産業医が行う職場巡視をサポートし、現場の状況を整理して伝える役割も担います。産業医は月1回以上の巡視が義務付けられていますが、短時間で職場の状況全てを把握するのは難しいのも事実です。
そこで産業保健師が事前に作業環境を見て、健診データとあわせて課題を整理します。
たとえば、重量物を扱う職場で腰痛の声が多ければ、その背景をデータで示すことにより、産業医が状況を判断しやすくなるでしょう。そのうえで作業台の調整や補助器具の導入といった改善策を提案し、効果の確認まで継続的に行います。
こうした取り組みで、職場環境の改善が実際に根付いていきます。
労働安全衛生委員会への参加
産業保健師は、衛生委員会に参加して専門的な視点から会議を支えます。
従業員50人以上の事業場では毎月労働安全衛生委員会の開催が義務付けられていますが、人事部門だけでは専門的な議題を用意するのは難しいこともあるでしょう。
産業保健師は、健診やストレスチェックの結果を分析し、「再検査が必要な人のフォロー状況」や「部署ごとのストレス改善策」など具体的なテーマを提案します。
そのうえで産業医の助言をもとに、生活習慣病予防セミナーや労働時間の見直しといったアクションプランを作成し、実行までフォローします。
従業員向け健康教育セミナーの実施
産業保健師は、従業員の健康意識を高めるため、実際の課題に合わせたセミナーを企画します。健診やストレスチェックの改善には従業員自身の行動が欠かせません。そこで産業保健師は、自社のデータをもとにテーマを設定します。
たとえば、生活習慣病リスクが高い職場では、短時間でできる運動や食生活の工夫を紹介します。メンタル面では、ストレス対処法や職場でのコミュニケーション方法を取り入れ、管理職と一般職で内容を変えるなど柔軟に対応可能です。
セミナー後もフォローを行い、知識を実際の行動につなげていきます。
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企業が産業保健師を導入するメリット
企業が産業保健師を導入するメリットは、以下のとおりです。
- 従業員が気軽に相談できる体制の構築
- 産業医との橋渡しが可能
- 人事労務担当者の実務サポートが可能
- 健康経営の推進が可能
それぞれのメリットについて解説します。
従業員が気軽に相談できる体制の構築
産業保健師を導入することで、従業員は小さな不調でも気軽に相談しやすくなります。
産業医は深刻なケースを扱うことが多く、月1回の訪問の場合は相談のハードルが高く感じられることもあるでしょう。産業保健師なら「最近眠れない」「健診結果がよくわからない」といった身近な悩みに日常的に応えることが可能です。
必要に応じてセルフケアの方法をアドバイスしたり、産業医や医療機関への橋渡しをしたりすることで、不調が悪化する前に対応が可能です。身近で話しやすい存在が職場にいることで、従業員が安心して働ける環境を整えられます。
関連記事:突然辞めたい!退職を防ぐために会社が知っておくべきメンタルヘルスの重要性
産業医との橋渡しが可能
企業が産業保健師を導入するメリットの一つが、産業医との橋渡し役に配置できることです。
産業医は月1回程度の訪問など限られた時間で医学的判断を行う立場ですが、日常的に従業員と接しているわけではありません。
そのため、現場で従業員の体調や働き方を細かく把握している産業保健師が、必要な情報を整理して産業医に伝えることで、限られた時間でも的確な診断や指導が行えるようになります。
たとえば、長時間労働者やメンタル不調を抱える従業員について、日常の様子や相談内容を産業医に共有すれば、より適切な就業上の措置や面談につなげられます。
このように、産業保健師は従業員と産業医の間をつなぎ、健康管理をスムーズに進めることが可能です。
人事労務担当者の実務サポートが可能
健康診断の事後フォローやストレスチェックの実施などは、専門知識や細かな手続きが必要なため、人事担当者だけでは負担が大きくなりがちです。
産業保健師が入ることで、そうした業務を専門的に支え、漏れなくスムーズに進められるようになります。
結果として、人事担当者は採用や人材育成といった本来の業務に集中でき、職場全体の効率が高まるでしょう。
健康経営の推進が可能
産業保健師は、従業員の健康状態をデータで整理し、そこから見えてきた課題に応じて改善策を企画・実行します。
たとえば、夜勤者の生活習慣病対策や、特定部署のストレス軽減など、効果が出やすいところに重点を置いて取り組むことが可能です。
また、取り組みを継続的に評価して改善していくことで、欠勤や休職を減らし、生産性や職場の雰囲気向上にもつなげられるでしょう。さらに、健康経営の取り組みを社外に発信すれば、採用や企業イメージの向上にもつながります。
健康経営については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:健康経営とは?意味、メリットや実践方法をわかりやすく解説
関連記事:健康経営優良法人のメリット・デメリットとは?認定基準をわかりやすく解説
また、健康経営の一環として「ホワイト500」の認定を目指す場合に、産業保健師の活用が有効である理由について、以下の記事で解説しているので、合わせてご覧ください。
関連記事:ホワイト500への最短経路。意外と知らない保健師活用のメリット
健康経営のKPIの立て方の教科書
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企業が産業保健師を導入する際の注意点
企業が産業保健師を導入する際の注意点は、以下のとおりです。
- 人件費などのコストが発生する
- 産業医との連携体制の構築が必要になる
- 自社に合う人材を見極める必要がある
それぞれの注意点について解説します。
人件費などのコストが発生する
産業保健師を導入すると、常勤・非常勤・委託などの形に応じて一定の費用がかかります。また、勤務環境を整えるための医務室や相談スペース、備品の準備といった間接的なコストもかかる可能性があります。
特に中小企業では負担が大きく感じられることもあるでしょう。
ただし、従業員の健康維持や休職・離職防止につながれば、長期的には生産性向上や医療費削減の効果が期待できるため、コストとメリットのバランスを見極めることが重要です。
産業医との連携体制の構築が必要になる
産業医と産業保健師の役割は重なる部分もあるため、事前に「どこまでを誰が担当するか」を決めておくことが大切です。
たとえば、健診後の受診勧奨を保健師が行った後に、産業医からも同じ連絡が入ると、従業員が戸惑ってしまいます。また、情報共有が不足すると、産業医が必要な判断を下すための材料が揃わないこともあります。
業務の分担や情報共有のルールをあらかじめ整えておけば、両者がスムーズに連携でき、従業員も安心して相談できる体制を構築できるでしょう。
自社に合う人材を見極める必要がある
企業が産業保健師を導入する際には、自社に合う人材を見極めることも大切なポイントです。
産業保健師といっても得意分野や経験はさまざまで、生活習慣病予防やメンタルヘルス、職場環境改善など、強みが異なります。
たとえば、若い従業員が多い職場では、ストレス対策やメンタルサポートに長けた人材が適しており、製造業など安全管理が重視される現場では労働災害防止や衛生管理に詳しい人材が望ましいでしょう。
また、産業医や人事部と円滑に連携できるコミュニケーション力も欠かせません。
単に資格を持っているだけでなく、自社の業種や課題に合ったスキルや適性を見極めることが大切です。
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パソナが提案する企業が産業保健師を導入する方法
パソナが提案する、企業が産業保健師を導入する方法は以下の3種類です。
- 人材紹介
- 人材派遣
- 紹介予定派遣
それぞれの特徴を紹介します。
人材紹介
人材紹介で採用する方法は、長期的に腰を据えて産業保健活動を進めたい企業に向いています。
正社員として迎えることで、事業内容や社内の人間関係、特有の健康課題を深く理解したうえで主体的に動いてもらえます。
たとえば、健診結果から課題を見つけて研修を企画したり、人事と連携して働き方改善を提案したりするなど、組織全体を見据えた活動が可能です。
また、応募者の対応や面談調整等を人材紹介会社が行うため、人事担当者の採用活動の負荷を軽減できます。さらに、採用が決定するまではコストがかからない成功報酬型が一般的なため、採用の初期コストをおさえられる点も人材紹介を活用するメリットです。
人材派遣
人材派遣は、必要な日数や期間だけ柔軟に受け入れられるため、正社員雇用に比べてコストを抑えやすい点がメリットです。
特に中小企業など常勤配置までは不要な場合でも、専門的な支援を効率的に導入できます。
また、派遣の産業保健師は週1日や繁忙期だけといった働き方ができるため、健診の事後フォローやストレスチェックの実務を無理なく任せられます。
はじめて産業保健師を導入する企業にも取り入れやすい方法です。
人材派遣については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:人材派遣の仕組みとは?企業にとってのメリットと注意点、導入の流れを解説!
紹介予定派遣
紹介予定派遣は「いずれ正社員として採用したいが、ミスマッチは避けたい」という企業におすすめの方法です。一定期間(最長6ヶ月)は人材派遣として契約し、その後直接雇用するかを判断できます。
産業保健師の仕事は知識や経験だけでなく、従業員とのコミュニケーション力や人柄も重要です。
紹介予定派遣なら、企業側も候補者側も実際に働いてみて判断できるため、双方に納得感のある採用につながります。
紹介予定派遣については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:紹介予定派遣とは?一般派遣との違いや注意点、導入方法を解説!
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産業保健師を導入して健康経営を推進しよう
産業保健師は、健康診断後のフォローやメンタルヘルス対策、職場環境の改善などを通じて、従業員を日常的に支える存在です。産業医と協力しながら不調の早期発見や休職防止を実現し、組織全体の生産性向上につなげます。
企業が持続的に成長していくためには、産業保健師の導入を検討し、従業員が安心して働ける環境を整えることが大切です。
産業保健師を導入することで、従業員の健康課題に日常的に対応でき、職場環境改善や予防施策を通じて健康経営の推進が可能となります。
パソナでは、健康経営に欠かせない産業保健師の紹介サービスを行っています。全国で約25,000人の保健師・看護師が登録されており、自社に合った人材のマッチングが可能です。
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