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PASONA HR UPDATE MeetUp~女性が活躍する組織の条件を考える~ 

人事部門の責任者同士が、人的資本経営の最前線と具体的実践方法を学び合う「PASONA HR UPDATE MeetUp」。第4回となる今回は、法政大学の武石教授をお招きし「女性が活躍する組織」をテーマに開催いたしました。あわせて選択テーマ別にグループに分かれ、自社の課題や実施事例を共有し合う勉強会を実施いたしました。以下、当日の活気あふれる模様をお届けします。

第1部:講演「女性が活躍する組織の条件を考える」 法政大学 キャリアデザイン学部 教授 武石 恵美子 氏

女性活躍との関わりを含めたD&I+Eの取り組みについて

ダイバーシティはマイノリティの支援であると矮小化して考えがちですが、本来は一人ひとりがみな違うということであり、各人のユニークな個性を活かした経営への寄与が期待されています。

個々人の違いに注目するという点から見れば、女性やシニアといった特定のグルーピングは、ダイバーシティを推進する上でマイナスではないかという声もあります。しかし、女性はライフイベントを意識して働かねばならなかったり、シニアは固定的な年齢規範によって成果が出しにくかったりと、それぞれの集団が共通の課題を抱え、個性を発揮する以前に能力の発揮が難しい状態にあります。そのため「集団」をターゲットにした施策を講じる必要があるのです。

ダイバーシティ推進の流れを概観すると、多様な人材が存在していること(D:ダイバーシティ)への注目から、その多様性を受容する姿勢・行動・風土の醸成(D&I、I:インクルージョン)、さらに多様な人材が活躍するための条件整備(DEI、E:エクイティ)、そしてすべての人材が「ここに居場所がある」と感じられるか(DEIB、B:ビロンギング)へと変化しています。

次にI(インクルージョン)とE(エクイティ)についてまとめたいと思います。

まず、インクルージョン(I)についてです。よくダイバーシティの成果として「女性ならではの特徴を活かして」「女性の能力が発揮できるところで頑張ってもらった」といった報告を目にすることがあります。しかし「女性ならでは」とうたっている時点で、男性とは違うグループとみなしていることに気づくべきでしょう(差異化)。また、女性が男性と同じ行動を取らないと仲間と認めてもらえないケースもあります。(同化)

差異化や同化と違い、組織に求められるインクルージョンとは、すべての個人を組織の一員として受容しながら、職場内での独自性を尊重することです。その実現によって「マイノリティグループがマジョリティに同化することを求められない」「多様性が生むコンフリクト(対立)を低減・解消し、互いに違いから学ぶことができる」「マイノリティが自分の意見を安心して表明でき、多様性の価値を発揮できる」環境が整っていくものと考えられます。

次に「公平」を意味するエクイティ(E:Equity)についてです。すべての人に同じ条件を提供するEqulity/イコーリティ(平等)に対し、個人差を考慮し、一人ひとりに見合ったリソースの配分や支援の実践が求められています。エクイティによって、障害者への合理的配慮などの特定のグループの問題に気付くことができます。そして、問題の原因は、個人ではなく、“環境”にあるため、環境を変えれば、個人の能力が発揮できるという考え方に繋がっていきます。エクイティという概念は、目の悪い人がメガネをかけることと一緒です。眼鏡をかけなければ問題文が読めない、問題文が読めなければ、そもそもスタートラインに立てない、だから問題文を読める状況にした上で、その結果を同じ基準で評価しようということになります。つまり、同じスタートラインに立つため条件を整えようということで、一律に点数を底上げする(下駄を履かせる)のではありません。その実現によって、女性や障害者が抱えている問題に気づくことができ、すべての人にとって障壁のない環境づくりを考える契機にもなるでしょう。

女性の活躍推進の流れ

雇用分野においては、男女雇用機会均等法(1986年施行)や女性活躍推進法(2016年施行)の「働きがいに関する政策」と、育児・介護休業法(1992年施行)や次世代育成支援対策推進法(2005年施行)などの「働きやすさに関する政策」が展開されてきました。女性の就業に関して、この2つの政策が車の両輪のようにバランスをとって進めることが重要なのですが、働きやすさに関する政策整備を先んじて進められた企業様も多いのではないかと思われます。そうすると、働きやすく、女性も就業継続しやすくなったものの、もう一方の働きがいに関する政策はややおざなりになって、能力面で男性と格差ができてしまうということがあります。そのため、両輪で回すということが重要であるということです。

1999年の男女雇用機会均等法の改正の際に、ポジティブアクションが法律に盛り込まれまして、これが女性活躍推進法で具体化しました。女性に下駄を履かせるのではなく、条件を男女で揃えた上で、能力を発揮してもらうということを進めているところです。マジョリティにとっては“自動ドア”、つまりドアがすっと開くのですが、マイノリティにとっては自分でドアを開けないと前に進めない、というような社会背景があったということです。

育児・介護休業法は、最近では2021年と2024年に改正され、それぞれ2022年と2025年に施行されています。ここでは、女性が育児のために一定期間休みを取得することなどにより生じうるキャリアロスという課題の解決を目指しました。2022年施行の法においては、男性の育児休業促進に重心を置いています。2025年施行については、就学前の子の養育にあたり、短時間勤務取得期間を延長するのではなく、フルタイムでも柔軟に働ける仕組みを整えるべく、テレワークや時差勤務など柔軟な働き方を可能にするための措置拡充がポイントになっています。

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女性のキャリア支援のポイント

女性のキャリアを支援することに関して、4つのポイントをお伝えしたいと思います。

まず1つ目は、「女性比率3割」に関してです。

内閣府は男女共同参画基本計画(2003年)において「2020年までに指導的地位における女性の割合を3割にする」目標を掲げていましたが、管理職層以上の女性はいまだ少数派です。女性の割合が15%程度よりも低いと、「トークン(象徴)」として特異な状況に置かれることになるとされています。つまり、その少なさゆえに周りから注目され、他人と比較され、男性と同化するよう求められる立場になるわけです。3割という割合は、マイノリティに所属する人が注目されなくなる数値といえます。女性比率は、採用から管理職比率まで、同じ比率が維持されるべきです。想定する管理職の女性比率に到達するには、組織が「働きがい」と「働きやすさ」の両方をマネジメントしていく必要があります。採用時の女性比率よりも管理職昇進時の女性比率が大きく落ち込んでいたとしたら、その間に大きな問題があると考えるべきでしょう。

関連記事【2025年】女性役員比率19%を目指す|政府方針の概要と現状

2つ目は、「両立支援策」のジレンマです。

「働きやすさ」の充実によって就業継続する女性は増えましたが、同時に育児関連制度の利用が増加して人員不足におちいり仕事が回らないという新たな問題が顕在化しました。また、仕事と育児の両立支援というと子育ての部分に目を向けて、大変だから支援してあげようとなりがちですが、長期的なキャリア形成を見据えた制度設計としなければ女性たちのモチベーションが持続せず、いわゆる「マミートラック※化」を招く原因にもなり得ます。
育児期は働き方の変化にともない仕事の内容も変わります。しかしそれは長期的に見ると、さまざまな経験の機会を奪っていると言えるのかもしれません。以前ある管理職の方が「仕事をしていると、試行錯誤や不条理な問題解決など、一見遠回りで無駄に思えることが多いが、実はそうした経験がスキル形成につながっている。短時間勤務では、そうした仕事の本質に触れる経験が少なくなってしまう」と話されていました。子育て後のキャリアを見据えて、育児期にどのような仕事を任せるかも、非常に重要な課題だと思います。
※マミートラック :女性社員が産休や育休から復帰した際に、担当業務や部署、勤務時間が変更され、その後のキャリア形成が阻害されること

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3つ目は、管理職への登用の課題です。

女性が管理職に昇進するためには、現在もなおさまざまな壁があります。現状は、男性に比べて機会が圧倒的に少なく、また忙しすぎる管理職の働き方への懸念もあるでしょう。さらに管理職には能動的・活動的といった男性的なイメージがあり、女性が優位とされる協調性や融和性のリーダーシップは軽視されがちでもあります。ではどうすればよいか。管理職の働き方改革や意識改革はもちろん、これまでの管理職に求められる要件を見直し、多様な管理職像を提示することも必要となります。そして、女性の管理職登用を意識した育成を行うこと。女性管理職候補の人材プールを設け、候補者が仕事の経験を付与されているかなどを定期的にチェックしていく、といった取り組みも有効かと思います。

最後に、女性の初期キャリアの重要性についてお話しします。

「仕事や職場への考え」を男女社員に調査したところ、入社後3年時点の男女の回答の差はほとんど認められませんでしたが、さらに数年経った25‐29歳では、「上司からの期待」「技術や能力の伸長」「将来の展望」の項目で女性の数値が大きく下がっていきます。日本の長期的な雇用システムにおいて、初期キャリアの重要性は高く、男女同等の機会提供とともに、キャリア形成における男女の「違い」を意識することもポイントとなります。例えば、男性と女性とでは「20代の時間軸」は大きく異なります。結婚や出産などのライフイベントを見据えている女性の多くは、30歳までに将来の見通しを立てたいと考えており、彼女たちにとって20代の時間がいかに大切であるかを理解すべきです。また、キャリアへの意欲は人によって異なり、かつ流動的です。そこが定まっていない人に対しては、長期的な展望を持たせた上で対応する必要があるでしょう。出産などのライフイベントの前に仕事の経験を積み、社内ネットワークを構築することによって、ライフイベント以降もモチベーションが低下することなくキャリアを継続できるという意味で、初期キャリアはとても重要です。

第2部:人的資本経営テーマ別勉強会

第2部では武石教授の講演内容を踏まえ、参加者の皆様がテーマごとに4〜5名のチームに分かれてディスカッションを実施しました。テーマは①女性管理職・管理職候補の育成方法②ライフステージの変化に合わせた制度・風土作り③働きやすさと働きがいを両立する環境作り――の3つ。パソナ社員がファシリテーターを務め、武石教授にもアドバイスをいただきながら、さまざまな企業の人事部門責任者・リーダーたちによる活発な意見交換や情報共有が行われました。
その後、各チームのディスカッション内容をまとめ、代表者の方に発表していただきました。

①女性管理職・管理職候補の育成方法

ディスカッションでは3つの課題が提起された。1つ目は育成の前段階である採用時点で苦戦していること。入口である新卒採用の段階で男女比率が均等ではなく、業界によっては新卒女性が集まりづらい話があった。また、男女均等に採用できても、結果的に女性管理職候補の母数が少ないという発言もあった。2つ目は、女性活躍推進が必要な理由が全社的に周知されていない点。女性だけの研修を実施するも、参加者が特別扱いされたくないと嫌悪感を示してしまったケースがあった。3つ目は、経営層のコミットメントが非常に重要ということ。事業部門長などを含め自分ごと化してもらうには、経営計画にもしっかり盛り込んだ上で経営層が発信していく必要があるのではないか。

②ライフステージの変化に合わせた制度・風土作り

実際に育児を経験したメンバーから「子どもが小さい頃は余裕がなく、働きがいを求められないが、手が離れてくると自分の気持ちも変わってくる」という声があった。一方、短時間勤務が自分に合っているという人もいる。働きがいを求める人もそうでない人もいることをきちんと認識して認めてあげることが、D&Iにもつながっていくのではないか。職場のコミュニケーションを深める事例として、Teamsでママコミュニティを展開していたり、男性の「たばこタイム」と対比して、ざっくばらんに話せる場として「お菓子タイム」を設けたりしているという情報を共有した。

③働きやすさと働きがいを両立する環境作り

働きやすさに関しては、コロナ禍を経てリモートワークやフレックス勤務が浸透し、現在は時短勤務の制度を使わずとも多様な働き方が実現している。制度に関しても性別を問わず支援の幅が広がっているので、働きやすさにつながっている実感はある。
働きがいについては、そもそも企業が社員に提供するべきものなのかという問題提起をした。働きがいは内発的、自発的であるべきで、人によっても異なる。人事としてできるのは、自分の働きがいに気づいていない人の内発的な部分を掘り出し、企業が求める人材や、目指すパーパスとつながっている部分を引き出すことではないかと話し合った。

関連記事内発的動機付けとは?企業が注目する理由や従業員の意欲を高める方法を紹介

第3部:人事部門責任者・リーダー交流会

武石先生にもご参加いただき、ご参加者のみなさまでご交流の場を設けました。

まとめ

今回で第4回を迎えたPASONA HRUPDATE MeetUpですが、複数回参加して下さるリピーターの方や、1社複数名で参加してくださる企業様も増え、人事部門のみなさまの学びの場として定着してきたことを嬉しく思っております。
今後もより、良い場となりますよう努めて参ります。

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