おすすめ特集・コラム女性活躍推進法とは?概要と改正ポイントを紹介
公開日:2024.09.25 更新日:2024.11.12
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2016年4月、10年間の時限立法として施行された「女性活躍推進法」。働く場面で女性が活躍できる社会をつくるために定められた法律であり、企業に対して女性の活躍推進に向けた行動計画の策定と、女性の活躍に関する情報の公表を義務付けています。
この記事では「女性活躍推進法」を取り上げ、その概要や法改正のポイント、企業に求められる取り組みについて詳しく解説します。
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働く女性が活躍しやすい環境づくり 何からはじめる?
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女性活躍推進法とは?
女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)とは、女性が自らの能力を十分に発揮できる社会の実現を目指して制定された法律です。2025年度末までの時限立法として2015年8月に成立、2016年4月から全面施行され、その後も数回にわたって法改正がおこなわれています。
3つの基本原則
女性活躍推進法には3つの基本原則があります。
- 女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
- 職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
- 女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと
引用:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要|厚生労働省
なぜ女性活躍推進法はつくられたのか
女性活躍推進法がつくられた背景には、働く場面において女性の個性や能力が十分に発揮できておらず、労働環境を改善し、女性が本来持っている力を発揮できる社会をつくるために、女性活躍推進法が制定されました。
日本で働く女性の現状として以下の4点が挙げられます。
○就業を希望しながらも働いていない女性が多い
生産年齢人口(15〜64歳)における女性の就業率は上昇しているものの、就業する意思はあっても現状として働いていないケースも多く、女性の就業希望者数は約161万人[美北1] にのぼります。
○出産後の就業継続が叶わないケースがある
第1子出産後も就業を継続する女性の割合は約7割と、近年は出産や育児を理由とした離職は減りつつあります。しかし、女性が就業継続を望んでいるにもかかわらず、離職を余儀なくされるケースも少なからず存在しています。
○出産・育児後に非正規雇用労働者として再就職するケースが多い
出産・育児後の再就職ではパートタイム労働者になることが多く、女性雇用者における非正規雇用労働者の割合は53.4%となっています。
○管理的立場にある女性が少ない
課長級以上の管理的立場にある女性の割合は約12.1%と、日本における女性管理職の割合は緩やかに上昇しています。しかし、国際的に見ると依然として低水準であり、日本では管理的立場にある女性がまだ少ないのが現状です。
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参考:女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!|厚生労働省
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M字カーブ/L字カーブとは?
女性活躍推進に取り組むうえで知っておきたいのが「M字カーブ」と「L字カーブ」です。
それぞれ何を意味するのか解説します。
M字カーブ
女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)を年齢層別にグラフにすると、アルファベットの「M」のような線を描きます。多くの女性が20代前半から社会人として働きますが、30代前半で結婚や妊娠・出産を機に退職する人が増えることで労働力率が低下します。そして、育児が落ち着いた30代後半から仕事復帰する人が現れ、労働力率は再び上昇します。この全体の流れをグラフにするとM字に見えることから「M字カーブ」と名付けられました。近年はM字傾向から底の値があがり台形に近づいてきていますが、女性を取り巻く労働環境の課題が解決されたとはいえません。
L字カーブ
女性の正規雇用比率を年齢層別にグラフにすると、アルファベットの「L」のような線を描きます。25~29歳にむけて女性の正規雇用比率は急激に上昇しますが、25〜29歳をピークに、30代から右肩下がりとなります。これをグラフに表すと「L」を倒したような形に見えることから「L字カーブ」と名付けられました。M字カーブと同時に使われることが多く、L字カーブからは妊娠・出産後に正規雇用として復職する女性が少ないことが読み取れます。
女性活躍推進法で、企業に求められる取り組み
女性活躍推進法では常時101人以上の労働者を雇用する事業主に対して「一般事業主行動計画の策定・届出」と「女性の活用に関する情報の公表」の2点を義務化しています。
行動計画
一般事業主行動計画とは、自社の女性活躍に関する取り組みをまとめたものです。
行動計画の策定ステップは以下のとおりです。
○ステップ1:自社の現状把握
自社の女性活躍における現状について、必ず把握すべき項目は以下の4点です。
- 女性の採用比率
- 男女の平均継続勤務年数の差異
- 労働時間の状況
- 女性管理職の比率
2022年7月施行の改正女性活躍推進法により、常時雇用の従業員数が301人以上の企業は「男女の賃金の差異」の把握も必須となりました。
○ステップ2:行動計画の策定
女性活躍推進法に基づく行動計画には以下の4点を盛り込む必要があります。
- 計画期間
- 数値目標
- 取り組み内容
- 取り組みの実施時期
○ステップ3:社内外への周知
作成した行動計画は非正社員を含めたすべての従業員への周知と、外部への公表が必要になります。
《従業員への周知》
社内の掲示や紙資料の配布、電子メールでの送付、イントラネットへの掲載などで対応します。
《一般への周知》
厚生労働省が運営するウェブサイト「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページ、県の広報誌・日刊紙などへ掲載します。
情報公表
企業は女性の活躍に関して情報公表する義務があります。
企業規模ごとの公表項目について以下にまとめました。
常時雇用の従業員数が301人以上の企業 -①の区分から「男女の賃金の差異」を含めた2項目以上、
-②の区分から1項目以上を選択して公表する 常時雇用の従業員数が300人以下の企業 -①と②の全項目から1項目以上を選択して公表する
出典:女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!|厚生労働省
これらの情報はおおむね年1回以上の更新が望ましいとされています。厚生労働省が運営するウェブサイト「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページなどに掲載し、求職者がいつでも閲覧できる状態にします。
女性活躍推進法で、政府が取り組んでいること
政府による女性活躍推進の取り組みを紹介します。
えるぼし認定制度
えるぼし認定とは、行動計画の策定・届出をおこなった企業のうち、女性活躍の取り組みが優良な企業を厚生労働省が認定する制度です。2020年6月には、さらに高い水準を求める「プラチナえるぼし」も登場しました。
関連記事:【女性活躍推進法】プラチナえるぼしの認定基準と行動計画の立て方
「女性の活躍推進企業データベース」の運営
厚生労働省が運営するウェブサイト「女性の活躍推進企業データベース」には、女性活躍推進法に基づく行動計画を策定・公表した企業の取り組み内容が掲載されています。データベースへの掲載を通じて自社の活動をアピールするとともに、他社の取り組みやその成果を参考にすることもできます。
関連サイト:女性の活躍推進企業データベース|厚生労働省
ここまでの法改正のポイント
女性活躍推進法は段階的に法改正がおこなわれています。
ここでは2020年以降に実施された法改正のポイントを紹介します。
【2020年4月/6月】行動計画の策定と情報公表の方法の変更
常時雇用の従業員数301人以上の企業を対象に、2020年4月施行の改正法では行動計画の策定方法、2020年6月施行の改正法では情報公表の方法がそれぞれ変わりました。対象の企業は行動計画の策定と情報公表において「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の区分からそれぞれ1項目以上選択する必要があります。
【2020年6月】プラチナえるぼしの創設
2020年6月施行の改正法では、えるぼし認定を受けた企業のなかから女性活躍の取り組みが特に優良な企業を認定する「プラチナえるぼし」が創設されました。プラチナえるぼし認定を受けるには「女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準」の5項目(採用/継続就業/労働時間等の働き方/管理職比率/多様なキャリアコース)をすべて満たす必要があります。
【2022年4月】対象事業主の拡大
2022年4月施行の改正法では、女性活躍推進法に基づく「行動計画の策定・届出」と「女性の活躍に関する情報公表」が義務付けられる対象事業主が拡大しました。2022年4月1日以降は常時雇用の従業員数101人以上の企業が対象となり、それまで努力義務とされていた従業員数101人以上300人以下の企業にも行動計画の策定と情報公表が義務付けられました。
【2022年7月】情報公表の項目追加
2022年7月施行の改正法では、常時雇用の従業員数301人以上の企業を対象に、女性の活躍に関する情報公表項目が追加されました。従来の項目に加え「男女の賃金の差異」(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)も公表する必要があります。これにより、合計3項目以上の情報公表が必須となりました。
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まとめ
女性活躍推進法は、働く意思のある女性が自身の能力を十分に発揮し、安心して働き続けられる職場環境をつくるための法律です。日本は他の先進国と比べ男女共同参画が遅れている状況にあり、働く場面における女性の活躍推進が急務となっています。
女性活躍推進法は段階的に改正がおこなわれているため、企業としては改正内容をしっかりと確認したうえで、自社に必要な取り組みを講じていく必要があります。将来的に労働力不足が懸念されるなか、女性の活躍推進は企業にとってますます重要なテーマとなるでしょう。形だけとならないよう、本質的な取り組みがなされることが期待されています。
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