おすすめ特集・コラム【2025年】女性役員比率19%を目指す|政府方針の概要と現状
公開日:2024.08.26 更新日:2024.08.26
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女性活躍の重要性が叫ばれ続ける昨今、政府は2023年12月に「2025年までに女性役員の比率19%」という目標を発表しました。これは、同年の6月に策定した女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)における「2030年までに30%」という目標の中間目標という位置づけです。
これに伴い、上場企業を中心に女性の社外取締役を登用する動きが出ています。
本記事では、政府方針の概要と日本企業の現状について解説します。
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女性役員比率に関わる政府による数値目標
2025年までに「女性役員の比率19%」という目標はなぜ設定されたのでしょうか?これまで、政府が示してきた女性役員比率の数値目標の変遷を見てみましょう。
政府は2003年に「2020年までに30%」という目標を掲げ、2020年になると「2020年代のできるだけ早期に30%」と再設定しました。以下、詳しく解説します。
【2003年】結果的に、まったく達成できなかった目標
まず、2003年に内閣府男女共同参画推進本部において以下の目標が掲げられました。
- 社会のあらゆる分野において2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する。
30%という数値は世界的な基準と同程度です。当時の女性活用の状況の実態から考えるとかなり挑戦的な目標でした。結果は2020年時点での管理的職業従事者に占める女性の割合は13.3%と目標は達成できず、諸外国と比べても低い水準となりました。また、労働者100人以上を雇用する企業で役職者に占める女性の割合は以下のとおりでした。
- 係長級21.3%
- 課長級11.5
- 部長級8.5%
上位の役職ほど数値が低く、上場企業の役員の女性比率も6.2%にすぎません。
【2020年】再設定された目標、より明確になったビジョン
2020年までに目標が達成されなかったことを踏まえて、政府は同年の「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」で以下の目標を掲げます。
- 2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す。
- そのための通過点として、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取り組みを進める。
このように、数値目標の30%は「2020年代の可能な限り早期まで」に先送りされました。ただ、今回は上記のようにビジョンが明確になりました。さらに、2025年までの施策の基本的な方向と、具体的な取り組みが設定されています。
【2023年】明確にされた各企業の重点的に取り組むべき事項
2023年6月に発表された「女性版骨太の方針2023」では、企業が重点的に取り組むべき事項が定められました。その中に「プライム市場上場企業を対象とした女性役員比率に係る数値目標の設定等」があります。
そして、2023年10月には、東京証券取引所がプライム市場上場企業に対し以下の数値目標を設定しました。
- 2025年を目途に女性役員を1名以上選任するよう努めること
- 2030年までに女性役員の比率30%以上を目指すこと
いずれも罰則のない努力目標です。政府はこの取り組みについて「象徴的な第一歩」と表現しています。影響力の大きい東証プライム市場の上場企業女性役員を増やすことで、国内企業の女性登用を加速させる狙いがうかがえます。
女性役員比率の現状
30%という高い目標を掲げて達成できなかった日本ですが、世界と比べるとどうでしょうか?以下は男女共同参画局が公表した2022年時点の比較データです。
女性役員比率平均
- G7(日本を除く) →38.8%
- OECD加盟国 →29.6%
- 日本のプライム上場企業 →11.4%
なお、日本は役員だけでなく女性管理職比率も海外各国より低い数値です。
関連記事:女性管理職の比率は?増やすための施策・育成方法を紹介
世界と比較して低い日本の女性役員比率
さらに、世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数においても、日本は欧米やアジア諸国と比較して低位で、2023年度は146カ国中125位です。要因の一つに企業の女性管理職の少なさが指摘されています。
関連記事:ジェンダーギャップ指数とは?日本の現状と改善にむけた取り組みをご紹介
日本の女性役員が少ない理由
就業者に占める女性の割合は、2020年時点で44%と諸外国に近い水準になっています。日本企業の場合、女性役員が少ない理由には、女性が長く働く環境が整っていない点や職場でも男女の役割分担意識が根強く残っている点があげられるでしょう。
また、イギリスの経済紙「エコノミスト」がOECD加盟国主要28カ国について、男女の労働参加率や給与の差など10の指標にもとづいたランキングを発表しており、2024年3月の発表で日本は29カ国中27位という結果になりました。女性が働きやすい環境ではないということがこの結果からもわかります。
関連記事:女性管理職が少ない理由とは?企業の増やす取り組みとメリットを解説
クオータ制など、ペナルティを課す諸外国
女性役員の比率が高い諸外国も、最初から高い数値だったわけではありません。
クオータ制(取締役会におけるクオータ制とは個々の企業に対し取締役会の構成メンバーに占める男女双方が一定の割合以上になることを求める制度)をはじめ、制度から変えることで結果を出しています。また、目標だけでなくペナルティを設定しているところが特徴です。
例えば、フランスは2011年に取締役クオータ法を制定し、2017年には目標の女性比率40%を達成しました。この制度には、達成しない場合は取締役または監査役への報酬の一部の支払いが停止されるというペナルティがありました。
ノルウェーも2003年にクオータ制を導入し、2007年に目標である対象の国営企業の女性役員比率が40%以上になるという結果を出しました。やはり、達成しない場合は会社解散も含む罰則が科せられるペナルティがあります。
女性の社外取締役の登用
政府の動きの影響もあり、日本ではプライム市場上場企業を中心に、女性の社外取締役を登用するケースが増えています。
2023年5月に株式会社日本総合研究所がおこなった、上場企業ジェンダーバランス実態についての調査によると、役員の女性比率は10%でした。社内役員に占める女性役員比率は1年間で2.3%から2.5%に増加、社外役員は16.1%から19.1%に増加しています。
2社以上の兼務者の割合が男性役員6.9%で、女性役員が25%という差もあることから、女性役員のニーズが高まっていることがうかがえます。
外部から登用することで教育コストがかからない
自社で役員を育成するには、それなりの時間や教育コストがかかります。また、もともと部長級や課長級にしめる女性の数が少ない状況の企業では社内から登用することが不可能なケースもあるでしょう。そのため、外部から登用するケースが増えていると考えられます。
役員には専門能力だけでなく経営陣としての視座やスキルも必要です。外部から能力的にも信頼がおける役員経験者を登用することは、手堅い方法だといえるでしょう。無理に社内で昇格させるより社内の軋轢も生まれず、社内女性のロールモデルとして適しています。
注意点は、女性の登用という手段の目的化
ただし、女性社外取締役の登用という手段が目的化することには注意が必要です。とにかく目標先行となってしまい、社外取締役を知名度だけで選んだりすると、お飾り的に登用した印象を社内外から持たれかねません。次項でふれるジェンダーウォッシュとみなされる可能性もあります。
能力と実績のある人材を登用して、自社に不足している知見や経験を生かしてもらう、コーポレートガバナンスを強化して経営の透明性を高めるといった意識が大事です。女性役員比率30%という目標の本質を踏まえて、人材を登用し有効活用しましょう。
問題視されるジェンダーウォッシュ
ジェンダーウォッシュとは、ジェンダー平等や女性の権利に配慮しているようにアピールする一方で、実際の取り組みが伴っていない企業の行動を指します。マーケティング、女性の採用・登用などの場面で多く見られがちです。
例えば、女性を管理職や役員に積極的に登用しているジェンダー平等な企業とアピールしながら、実際はフェアな賃金体制、機会の提供、仕事の裁量権などがない場合が相当します。
いわゆる象徴的な登用で社会的な問題に対する取り組みを公にアピールし、プラスのイメージを築こうとする手法です。
管理職?マネージャー?定義はあいまい
役員の定義は会社法で定められていますが、管理職の定義は法律でも比較的あいまいです。そのため、社外に女性活躍を推進していることをアピールするため、管理職の定義を拡大解釈して人数を公表するケースも見受けられます。
例えば「マネージャー」「リーダー」などの肩書で、実際に管理業務についていないのであればジェンダーウォッシュにあたります。部下のいない課長職の肩書も同様です。
もちろん、男女問わず部下のいない課長職を管理職とみなす企業も存在しますが、それは社内の定義であり、一般社会の解釈や厚生労働省の管理監督者の定義とも異なります。
金融庁による地銀のジェンダーウォッシュ調査
2023年4月、金融庁は一部の地方銀行がジェンダーウォッシュをおこなっているという疑念を示しました。これは、2023年3月期決算以降に「人的資本情報」を有価証券報告書に開示することを求められることに先立ち、金融庁が地銀100行にアンケートを実施した際に、その結果について述べたものです。
調査結果は、銀行ごとに管理職の定義が異なり「支店長代理」「幹部」「課長代理」などの肩書が含まれるケースも多いことから、管理職に該当しない役職が含まれている可能性を指摘し、ジェンダーウォッシュがおこなわれていないか各行に確認を促しました。
まとめ
政府が2023年12月に発表した「2025年までに女性役員の比率19%」という目標の概要と、これまでの政府目標の変遷について解説しました。また、世界と比較した日本企業の女性役員比率の低さや現在の状況についても触れてきました。
2025年までに19%という目標はかなり高めの目標です。ただし、近年は社内外に役員にふさわしい能力・人間性を持つ女性の人材が豊富になってきたことも事実です。形だけの女性社外取締役の登用やジェンダーウォッシュのような行為をせず、本質を見失わず優秀な役員を登用していきましょう。
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