おすすめ特集・コラムジェンダーギャップ指数とは?日本の現状と改善にむけた取り組みをご紹介
公開日:2024.06.21 更新日:2024.09.26
- 女性活躍
目指すべき社会のあり方として、男女平等というテーマはよく掲げられます。しかし、男女間の格差は可視化されない部分も多く、実態を捉えにくいのが現実です。そこで、各国の男女格差の可視化を目指したのが「ジェンダーギャップ指数」です。
日本のジェンダーギャップ指数が低いことをご存知の方も多いでしょう。GDP世界第3位の先進国であり、女性がさまざまな領域で活躍しているように見えるのになぜだろう? と思うかもしれません。
この記事では、ジェンダーギャップ指数とは何か?日本が低い理由、現状の改善にむけた取り組みを紹介します。
女性活躍に必要な取り組みをデータから読み解く
労働人口の減少により、女性の社会進出が後押しされるようになった昨今。女性活躍推進に取り組むことで企業の経営面や人事面において以下のようなメリットが期待できます。
- ビジネスチャンスの拡大
- 人材確保
- 社会的信用の向上
- 生産性の向上
では具体的にどのような取り組みが必要なでしょうか。データを交えてご紹介しています。
ジェンダーギャップ指数とは?
ジェンダーギャップ指数とは、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が、2006年から毎年公表している各国の男女間の格差を表す指数です。0~1の範囲で表され、1に近いほど男女平等指数が高く、0に近いほど低くなります。
この指数は経済レベルとは関係ありません。あくまでその国の男女間格差(ギャップ)をあらわす指数であり、計算のベースになっているのも男女比です。
そのため、途上国であっても男女間格差が少なければ総合順位は高くなり、先進国でも格差が大きければ順位は下がります。2023年のジェンダーギャップ指数を見ると、ニカラグア、ナミビアなどの開発途上国が10位以内に入る一方、日本や韓国、中国が100位以下という結果が出ています。
ジェンダーギャップ指数の対象分野
ジェンダーギャップ指数は、以下の4つの分野別に算出されます。
①教育分野(識字率・就学率の男女比)
②経済分野(労働参加率・収入格差・女性管理職や専門職の男女比)
③政治分野(政治への参加率・議員や閣僚の男女比)
④保健分野(出生時性比 ・平均寿命の男女比)
日本のジェンダーギャップ指数の現状
2023年の日本のジェンダーギャップ指数は、総合スコアが0.647で146ヶ国中125位でした(参考資料:「Global Gender Gap Report」(世界男女格差報告書)2023年版)。
2022年の116位から9ランクダウンです。分野別にみると、教育分野と健康分野は1に近い数値で世界トップレベルですが、政治分野、経済分野のスコアがかなり低い数値となっています。
l 教育:0.997
l 健康:0.973
l 政治:0.057
l 経済:0.561
日本のジェンダーギャップ指数が低位であることの原因
日本のジェンダーギャップ指数が低い大きな要因は以下の2点です。
女性管理職比率の低さ
2022年の厚生労働省の調査によると、管理職等に占める女性の割合は係長相当職で18.7%、課長相当職で11.6%、部長相当職で8.0%でしかありません。(参考資料:令和4年度雇用均等基本調査)
女性活躍は進んでも、多くの女性は指導的立場ではなくオペレーション業務に従事していることがわかります。今後、企業には人的資本情報の開示が求められるため、女性管理職の増加は急務の課題でしょう。
女性の政治参加率の低さ
日本の女性国会議員の割合は9.9%で、女性閣僚の割合も10%程度に過ぎません。地方議員も同様であり、全都道府県のうち女性議員の割合が20%以上なのは4都道府県だけです。政治領域がジェンダーギャップ指数を押し下げる最大要因であることも、知識として押さえておきましょう。
ジェンダー平等の実現に向けた政府の取り組み
昨今、政府がさまざまなジェンダー平等に向けた取り組みを進めています。
ポジティブ・アクション
構造的な差別によって不利益を受けている人に対して、実質的な平等を図るための措置がポジティブ・アクションです。特にジェンダーギャップ指数の足を引っ張っている指導的地位にある女性の割合を増やすことが求められており、政府は2020年代に指導的地位に占める女性の割合を30%程度まで引き上げることを目標に掲げています。
女性活躍推進法の制定
2016年に女性活躍推進法が施行されました。この法律の目的は女性が働く上での環境改善です。企業には、女性活躍推進に向けた行動計画の策定や数値目標の公表、情報公開が義務付けられました。女性管理職比率などによって「えるぼし認定」が得られると、公共調達で優遇を受けられるなどのメリットがあります。
関連記事:女性活躍推進法とは?わかりやすく解説 2022年改正のポイントは?
イクメンプロジェクト
男性社員の育児休業取得率は17.13%であり、低い水準です。日本で女性管理職が少ない理由の一つに、出産を機に多くの女性が離職してしまうことがあります。このような背景からイクメンプロジェクトでは、男性の育休取得を促し、育児への参加を推進しています。女性の継続勤務を間接的に支援する施策です。
(参考資料:令和4年度雇用均等基本調査)
女性管理職を採用するときのアピールポイントは?
女性幹部比率が極めて低かった企業の採用担当者はいかにして採用活動を進めたのか。社内制度や選考フェーズでの視点についてお伝えしています。
男性育児休業の現状と パソナの取り組み事例
男性育休には企業側・取得する従業員側の双方にメリットがあります。 全国平均と比較して高い実績をあげているパソナの取り組みを基に、男性育休の取得推進に必要なアクションをご紹介します。
企業にとって男女格差を克服することの必要性
男女格差を克服することは、企業にもメリットがあります。働きやすい職場環境づくりは、女性社員はもちろん男性社員からも歓迎され、従業員エンゲージメントが向上する可能性が高くなるからです。また、ジェンダー平等の実現に向けて積極的に取り組む企業は、社会的にも高い評価を受けるでしょう。採用ブランディングにもプラスになります。
ジェンダー平等の実現に向けて企業に求められる取り組み
企業に求められる具体的な取り組みをご紹介します。
労働条件や待遇の是正
男女雇用機会均等法の施行によって、性別を理由にした差別的な取り扱いは禁止されました。
この法律の施行以降、男女間の賃金格差、女性に対する年齢差別など女性にとって不利な取り扱いは減り、女性の勤続年数は順調に伸びていきました。
しかし、現在でも、多くの女性が育児を機に離職したり非正規雇用を選んだりする傾向はあります。その結果、正社員として力を発揮してきた女性たちが、非正規社員として低い給与に甘んじながら高いパフォーマンスを発揮しているケースが珍しくなくなりました。
厚生労働省の2021年国民生活基礎調査の概要によると、就業者の正規・非正規社員比率は、男性が21.4%、女性は53.2%であり非正規社員の多くは女性です。近年さかんに問題視される正規労働者と非正規労働者の格差は、ジェンダー平等の問題とも捉えられています。
2020年に施行されたパートタイム・ 有期雇用労働法によって不合理な待遇差は違法となりました。早急に正規労働者と非正規労働者の格差是正に取り組む必要があるでしょう。
ハラスメント対策
2020年にパワハラ防止法が施行され、企業にはハラスメント対策の実施が義務付けられています。パワハラだけでなく、セクハラ防止のための対策もとる必要があります。具体的にはパワハラ防止指針の策定、相談体制の整備、就業規則での明文化などの施策が求められます。
パワハラ、セクハラは弱い立場の人におこなわれやすいため、女性や非正規社員、男性なら若手社員が受けやすい傾向があります。このような問題に対策を講じると男性社員の働きやすさにもつながるでしょう。
女性管理職の登用
日本企業では女性管理職の割合が低い点が課題です。女性管理職を増やすことは多様性のある組織作りにつながります。以下の記事では、女性管理職の育て方、増やすための施策について紹介していますので、是非ご参照ください。
関連記事:女性管理職の比率は?増やすための施策・育成方法を紹介
女性の健康推進
女性の健康課題が、労働損失や生産性等へ影響するという研究結果が注目されています。
女性特有の健康問題について、社内のリテラシー向上施策や相談窓口を設置するなどの対策を実施することで、女性のモチベ―ションだけでなくパフォーマンスが上がる可能性があります。
この問題はまだ認知度が低いのですが、企業が積極的に対応していくことで働きやすくなる女性は多いでしょう。
多様な働き方を支援する就労体制の整備
家庭生活の負担はどうしても女性に偏りがちです。出産や育児によって女性のキャリアが停滞することのないように、多様な働き方を支援する就労体制の整備が求められます。例えば、リモートワークや時短勤務、フレックスタイム制の導入、託児所の整備などの施策です。
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働く女性の健康推進に取り組むべき理由
女性活躍推進法が施行され、女性の活躍が推進される中、女性特有の健康問題への対応が必要となっています。 本資料では女性の健康推進への取り組みの必要性、効果をご紹介します。
まとめ
日本のジェンダーギャップ指数は総合スコアこそ低いものの、教育分野と健康分野はハイスコアです。政治と経済の2分野だけ低スコアというのは、ポテンシャルの高い女性の能力を社会が生かし切れていないといえるかもしれません。
現在はこの状態を改善するために、国と企業が一体となって取り組んでいる状況といえるでしょう。文化的背景、終身雇用を前提として構築していたメンバーシップ型人事制度、バブル崩壊後の非正規シフトなど複数の要因が絡むため、一挙に解決することは難しいかもしれません。しかし、今一度フラットに職務に応じた報酬、能力に応じたポジションにつく機会の提供ができるように対策を検討し、段階的に推進していきましょう。
少子高齢化が進展していく日本においては、女性に力を発揮してもらうことが不可欠です。また、女性が働きやすい職場は、結果的に男性社員が働きやすい職場の実現にもつながります。
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