おすすめ特集・コラム派遣社員も出張対応は可能!依頼時の注意点や経費の考え方について解説
公開日:2025.03.24 更新日:2025.03.24
- 人材派遣
営業職や技術職で派遣社員を受け入れる際、客先や自社工場などへの出張を依頼できるのか、出張を依頼する場合の経費精算はどうするのかなど、疑問に思う人事や指揮命令者は多いのではないでしょうか。
本コラムでは、派遣社員に出張を依頼できる条件と注意点、経費の考え方について解説します。派遣社員に依頼できることや依頼時の注意点を知ることで、効果的な派遣サービスの活用ができるようになります。派遣サービスを検討される方はぜひご確認ください。
関連記事:派遣指揮命令者とは?役割や人選の要件とポイントについて解説
労働者派遣法で抑えておくべきポイントを解説!
人材派遣をご活用される担当者の方や派遣先責任者の方に向けて、労働者派遣法のポイントを解説します。
- 3年ルール(派遣期間制限)
- クーリング期間
- 意見聴取
上記のような企業が遵守しなければならない大切なルールがいくつもあります。人材派遣に関する知識を正しく理解し、適切な人材配置につなげるための参考資料としてご活用ください。
派遣社員の出張は可能
派遣社員の出張は法律上禁じられておらず、出張業務を依頼することは可能です。ただし、派遣契約書において業務内容に出張業務が含まれていることと、派遣社員本人と派遣元企業からの同意を得る必要があります。
特に派遣契約書では、派遣社員の業務範囲を明確に定めることが義務付けられており、契約書外の業務を命じることは違法派遣にあたります。適切な業務指示ができるよう、契約書に記載されている業務内容をよく確認しましょう。
出張とは?
出張とは、指揮命令権が所属事業所に残されたまま、一時的に就業場所が変更される業務を指します。例えば、所属は東京営業所のまま、1週間だけ顧客の本社がある福岡で業務を行う場合などが当てはまります。派遣社員の出張においても同様に、就業場所が一時的に変わりますが、派遣先の部署や指揮命令関係は変わりません。
派遣社員に出張指示ができる条件
派遣社員に出張を依頼する際は、派遣社員や派遣会社の合意を得て、書面で契約を交わす必要があります。必要な書類や内容について1つずつ解説します。
派遣契約書の業務内容に含まれている
繰り返しになりますが、派遣社員に業務を依頼するためには、派遣契約書に予め記載しておく必要があります。契約書に記載されていない業務を命じると、出張に限らず違法派遣になり、罰せられることがあるからです。
派遣社員への出張依頼を予定している場合は、就業開始前に派遣社員と派遣会社の合意を得て、出張業務や出張先での業務について、派遣契約書の業務内容に明記しましょう。
就業条件明示書に出張先が記載されている
就業条件明示書には、想定される出張先を記載する必要があります。スポット的な短期出張であっても、事業所以外の就業先がある場合は、就業条件明示書の備考欄に住所などを記載します。なお、派遣契約書に出張業務を記載しても、就業条件明示書にない出張先への出張命令(例えば就業条件明示書では福岡営業所のみの記載だったが、札幌営業所への出張指示があった場合など)は、契約外の業務としてトラブルに発展する可能性があります。想定される出張先は慎重に吟味しておきましょう。
派遣契約の変更または覚書の締結をする
派遣契約締結後に派遣社員の出張が必要になってしまった場合は、早期に派遣社員と派遣会社の双方から合意を得て、契約内容を変更しましょう。派遣契約書の業務内容に出張業務を追加することがベストですが、契約書を変更できない場合は新たに覚書を締結します。書面で契約を交わし、派遣会社、派遣社員との合意形成をすることで、出張の指示が可能になります。
関連記事:労働者派遣法の目的とは?改正の歴史や違反した際の処分についても解説
派遣社員の出張経費の考え方
派遣社員の出張経費は、支払い方法や支給対象を事前に取り決め、契約書などで明文化しておくことが重要です。ここでは、派遣社員の出張に伴う経費の考え方と注意点について解説します。
日当や出張手当の支払いは当事者間の取り決めによる
派遣社員に対する出張手当等の有無は、派遣会社と派遣社員との間で交わされる雇用契約によって定められます。雇い入れの際に、出張手当に関する取り決めがなかった場合は、派遣会社の就業規則に従います。
一方、出張が発生した際に派遣料金の割り増しが必要になるかどうかは、派遣先企業と派遣会社との間で決定されます。そのため、派遣先の直接雇用の社員と派遣社員は、雇用主や契約条件の違いから、出張手当に関する待遇差が発生する可能性があることに注意しましょう。
交通費や宿泊費は派遣先企業が支給する
一般的に、派遣社員が出張する時の交通費や宿泊費は派遣先企業が負担します。厚生労働省が定める「派遣元企業が講ずべき措置」では、派遣会社に対し、派遣先企業に雇用されている通常の労働者と同等の通勤手当および出張旅費を派遣社員に支給するよう求めています。
派遣社員にこれらの手当を支払う際は、派遣会社が立て替えて派遣先企業に請求することが一般的です。しかし、3者が合意し契約書に記載があれば、派遣先企業が派遣社員に直接経費を支払うことも可能です。
移動時間は勤務時間に含めないことが多い
一般的に、出張時の移動時間は通勤時間と同じく勤務時間に含まれません。これは過去の判例や行政解釈でも示されています。勤務時間は「指揮命令下にある時間」を指すため、派遣社員が時間の使い方を決められる通勤や出張の移動時間は、勤務時間に該当しません。
ただし、移動中に上司と打ち合わせをする場合や、配送業のように社員の移動に物品の移動や管理が伴う場合は、移動時間が勤務時間として認められることがあります。
派遣社員は海外勤務できる?
派遣社員が海外で働く場合は、海外出張と海外派遣の2種類があります。両者の違いについて理解し、適切な手続きを踏んで海外勤務を行いましょう。
海外出張は指揮命令権が日本にある
派遣社員が海外出張をする時は、就業場所が一時的に海外に移るだけで、指揮命令権は日本の事業所のままです。日本の派遣会社から日本の事業所に派遣されることが多く、所属や指揮命令権が日本にあるため、日本の労働法や労災保険が適用されます。
海外出張の具体例としては、商談や現地視察、製品導入後のアフターサービスなどが挙げられます。派遣社員が海外出張を行う際は、国内出張と同様に事前の同意と契約内容の確認が必要です。
海外派遣は指揮命令権が現地にある
海外派遣は日本の派遣会社から海外の事業所に派遣することで、所属事業所や指揮命令権は海外にあります。この場合、適用される労働法は現地のものとなり、日本の労災保険を利用するためには特別加入が必要です。
また、派遣会社は事前に管轄の労働局を通じて、厚生労働省へ海外派遣届出書、労働者派遣契約書の写し、「派遣先が講ずべき措置等」を定めた書面の写しを提出することが義務付けられています。海外派遣の具体例には、現地の関連会社や支社への出向、海外で建設工事や据付工事などの有期プロジェクトに従事するケースが挙げられます。
派遣契約書に記載があれば海外出張が可能
国内出張と同じく、海外出張を依頼する際も、就業開始前に派遣会社や派遣社員との合意が必要です。派遣契約書には海外出張を業務内容として記載し、就業条件明示書にも出張業務や出張先の住所等を明記します。書面に合意内容が記載されていれば、派遣社員に海外出張を指示することが可能になります。海外派遣の場合は、指揮命令自体が海外にあるため、就業条件明示書や派遣契約書の内容が海外勤務を前提したものとなります。
派遣社員に出張を指示する時の注意点
最後に、派遣社員に出張を依頼する際の注意点を解説します。関係者への丁寧な事前説明と合意形成を通じて、柔軟かつスムーズに派遣社員の出張業務を進めましょう。
派遣元企業との契約内容を確認する
派遣社員に出張を指示する際は、契約内容と経費に関する以下の5点について内容を確認します。
- 派遣契約書の業務内容に出張業務が含まれているか
- 出張先で行う業務は契約範囲内であるか
- 就業条件明示書に出張先の就業場所が記載されているか
- 出張に伴う派遣手数料の増額が必要か
- 出張に関わる費用の精算方法は派遣会社や派遣社員と合意が取れているか
派遣社員に丁寧な説明をする
出張の可能性がある場合は、事前に派遣社員や派遣会社にその旨を説明しておきます。派遣社員の中には、柔軟な働き方を求めて派遣就業を選択している人もいるため、突然の出張命令に拒否反応が出ないよう、就業前に出張の必要性を理解してもらうことが重要です。また、派遣会社にも出張があることを共有し、人選時に出張業務への対応ができる人を条件に入れてもらうことでミスマッチを防ぐことができます。
必要な条件を満たせば単独出張も可能
派遣社員の出張では派遣社員単独での出張依頼も可能です。しかし、派遣社員は派遣先企業の指揮命令下において派遣契約の範囲内の業務を行うため、出張中に予期せぬ事態が発生した時に、独断で柔軟な対応をすることが難しくなります。緊急時であっても派遣社員が契約外の業務を行うと違法派遣になるため、可能な範囲で指揮命令者や派遣先企業の社員が出張に同行することが望まれます。派遣社員が単独出張をする場合には、派遣社員が安心して就業できるフォロー体制を作っておきましょう。
まとめ
派遣社員に出張を依頼する時は、他の業務と同様に、事前の合意と契約書への記載が必要です。派遣社員を受け入れる際は、労働関連法だけでなく派遣法への理解が必要になるため、より専門的な知識が求められます。
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