おすすめ特集・コラム派遣や契約社員の「5年ルール」とは?概要や適用条件、留意点を解説!
公開日:2025.02.19 更新日:2025.02.19
- 人材派遣
「5年ルール」とは、有期労働契約で働く労働者が無期雇用契約への転換を申し込める制度で、2013年4月に導入されました。しかし、認知度はまだ低く、5年の考え方や適用条件など複雑なルールもあります。
そこで本記事では、5年ルールの概要と5年のカウント方法、制度上の留意点を解説します。有期労働契約者に広く適用される制度ですので、人事担当者はしっかり確認しておきましょう。
派遣の手引き
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いわゆる5年ルール(無期転換ルール)とは
5年ルールとは、契約期間が通算5年以上の有期契約労働者から申し込みがあった場合、企業はその労働者を無期雇用に転換しないといけない、というルールです。2013年4月に施行された改正労働契約法18条で定められ、制度内容の特徴から、「無期転換ルール」とも呼ばれています。
5年ルールは、一定の条件を満たしていれば派遣社員、契約社員、アルバイトなど全ての有期契約労働者が対象となります。また、雇用形態は、無期雇用であれば正社員である必要はなく、期間の定めがない契約社員や正社員一般職(地域限定職)でも可能です。
5年ルール(無期転換ルール)の導入背景
有期労働契約では、契約期間終了後の更新の有無は企業に決定権がありました。そのため、(1)労働者の雇止めに対する不安の解消、(2)処遇の改善、(3)正規雇用を回避するための有期労働契約の濫用、の3つが課題でした。そこで、2012年8月に労働契約法が改正されて5年ルールが導入され、翌年4月に施行されました。
派遣の5年ルールと3年ルールの違い
派遣労働者には、5年ルールだけでなく3年ルールも存在します。いずれも期間の上限を示すルールですが、適用対象が異なります。
3年ルールの対象は、派遣社員の受け入れ期間です。「事業所単位」と「個人単位」の2種類があり、それぞれ同一の事業所における派遣社員の受け入れ期間と、同一の組織で同じ労働者を受け入れられる期間の上限を定めています。一方5年ルールは、派遣社員に限らず、契約期間が通算5年を超えた有期労働契約者を広く対象としています。
関連記事:【人事担当者必見】派遣法の3年ルールとは?概要や例外、期間延長の方法を解説!
無期転換ルールの適用条件と5年のカウント方法
ここからは、無期転換ルールを適用できる労働者の条件や、「5年」という数え方について解説します。特に年数の数え方は、契約回数や契約期間、年数には含まれないクーリング期間の条件もあり、注意が必要です。労働者からの問い合わせに対応できるよう、よく確認しておきましょう。
有期労働契約を締結している
繰り返しになりますが、無期転換ルールの対象者は、雇用形態に関わらず有期労働契約を締結している労働者です。有期労働契約者であれば、派遣社員、契約社員、アルバイトなどの雇用形態は問いません。
2013年以降の有期労働契約期間が通算5年を超えている
無機転換ルールの5年は、改正法が施行された2013年4月1日以降に開始された労働契約期間で算出します。以下のように勤続年数が5年未満でも雇用契約期間が5年を超えれば、労働者の無期転換申込権が発生します。対象期間を考える際は、後述するクーリング期間にも注意が必要です。
● 契約期間が1年ごとの場合→5回目の契約更新時(6年目)以降
● 契約期間が3年ごとの場合→初回の契約更新時(4〜6年目)以降
出典:有期契約労働者の無期転換ポータルサイト | 無期転換ルールの概要の図をもとにパソナにて作図
有期労働契約の更新が1回以上ある
無期転換ルールでは、同じ企業と労働者の間で有期労働契約が更新され、2回以上締結する必要があります。そのため、1回で5年以上の有期雇用契約を結んだり、派遣社員が派遣契約の満了後に派遣先企業と直接有期雇用契約を結んだりしても、雇用主である企業との契約は1回目になるため、この時点では労働者の無期転換申込権が発生しません。
労働者からの申し込みがある
労働契約の種別、期間、更新回数の条件が揃うと、労働者に無期転換申込権が発生します。この権利を行使するかどうかは労働者が決めます。企業から労働者に無期雇用転換を促す義務はありませんが、無期転換申込権に対し拒否することはできません。
クーリング期間について
クーリング期間とは、「通算5年の契約期間」に含まれない期間のことです。無期転換ルールでは、以下の場合、以前の契約期間がカウントされません。
● 企業と労働者の間に労働契約のない期間が6ヶ月以上ある
● 無契約期間の前の就業期間が9ヶ月以下で、無契約期間が就業月数の半分以上である
例えば、有期労働契約で3年間勤務した後に退職し、同じ企業で再び有期労働契約を締結した社員がいたとします。この時、無契約期間が6ヶ月未満なら退職前の3年間が5年の中に含まれますが、無契約期間が6ヶ月以上であれば、退職前の契約期間は5年に含まれません。
厚生労働省のページでは、クーリング期間について図表を用いてケース別に細かく解説しています。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet04.pdf
無期転換ルールの例外
企業が労働局から雇用管理措置に関する計画の認定を受けることで、無期転換ルールが適用されなくなるケースが2つあります。
1つは、定年を迎えた後も定年前と同じ企業またはグループ会社に雇用されている、継続雇用の高齢者です。
もう1つは、年収が1,075万円以上で、博士の学位取得者や、医師、士業、システムコンサルタントなどに従事する高度専門職です。こうした高い専門知識を必要とする業務に従事している労働者には、10年を上限に無期転換申込権が発生しません。
参考:厚生労働省「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する 無期転換ルールの特例について」
5年ルール(無期転換ルール)のメリット
5年ルールは労働者のための制度ですが、上手に活用すれば企業にもメリットがあります。ここでは企業にとっての5年ルールのメリットを2つ紹介します。
長期的な人材戦略を立てやすい
有期雇用契約では契約更新時に労働者が更新を辞退する可能性がありますが、無期雇用に転換することで長期就業が見込めます。そのため、当該労働者の長期的な育成計画や、自社や組織内の採用計画を立てやすくなります。労働者にとっても、契約更新の有無を気にせず安定的に働ける環境を得ることができます。
予算を抑えた採用ができる
無期転換ルールを活用すると、予算を抑え、マッチ度の高い採用を目指せます。有期労働契約期間中に実務スキルを高め、社内に適応した人材を無期雇用社員として採用できるため、入社後のミスマッチが起こりにくくなります。また、求人広告や応募者獲得に関わる採用コストや、雇入れ時の教育のコストを削減でき、即戦力になる人材を採用できます。労働者にとっても業務や職場環境を理解した上で無期雇用契約を結べるため、安心感を得られます。
5年ルール(無期転換ルール)の留意点
ここからは5年ルールの留意点について解説します。トラブルや違法行為に繋がらないよう、しっかり確認しておきましょう。
無期雇用の申し込みは拒否できない
無期転換申込権は労働者の権利であるため、労働者から無期転換の申し込みがあった場合、企業は断ることができません。労働者からの申し込みがあった時点で、契約期間終了日の翌日から、雇用者と労働者の間で無期雇用契約が開始されます。
無期転換の申し込みは口頭でも可能ですが、トラブル防止のために書面を交わしておきましょう。厚生労働省のホームページには、無期労働契約転換申込書・受理通知書の様式見本が公開されています。
参考:厚生労働省「参考様式 無期労働契約転換申込書・受理通知書の例」
社員間の待遇差が出ないように配慮する
無期雇用へ転換する際は、同一労働同一賃金を踏まえて、既存の社員との待遇差がないよう配慮します。原則、無期転換後の待遇は、直前の有期労働契約と同等以上とします。しかし、同じ業務内容を担う既存の無期雇用社員と比較して、待遇や活躍の場に差があると、無期転換した社員のモチベーション低下や離職に繋がる可能性があります。必要に応じて、無期雇用転換に関する就業規則の整備にも取り組みましょう。
雇止めにならないよう契約終了の判断は慎重に行う
厚生労働省は企業に対し、無期転換の申し込みを避けるために契約期間が5年を迎える直前で労働契約を解約しないよう警告しています。2013年の労働契約法改正では雇止め法理が条文化され、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」時には雇止めが無効となり、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されます。労働者に不当な雇止めであると捉えられないよう、契約終了の判断は慎重に行いましょう。
法改正に注意:2024年から労働条件明示ルールが変更
2024年4月の法改正で労働条件の明示ルールが変更され、有期労働契約の締結または更新時に、無期転換ルールに関する内容を労働者へ明示することが義務付けられました。
有期労働契約の締結時と更新時には、有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限の有無とその内容を明示します。有期労働契約者に無期転換申込権が発生した後は、契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換の申込機会の明示)と、無期転換後の労働条件を明示します。
関連記事:【最新2024年】知っておくべき労働者派遣法の改正ポイントや違反行為を解説
まとめ
本記事では5年ルールの概要と留意点を解説しました。労働関連法や派遣法は社会の変化に合わせて頻繁に改正されています。人事担当者や経営者は、最新情報を収集し、制度への十分な理解をもとに、人事制度の改訂や運用といった対応を求められています。
パソナでは最新の法令をもとに、コンプライアンスを遵守した人材活用に関する情報を提供しています。以下では法改正の頻度が高い派遣法に関する留意点を解説していますので、ぜひご覧ください。
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