おすすめ特集・コラム派遣指揮命令者とは?役割や人選の要件とポイントについて解説
公開日:2025.02.20 更新日:2025.02.20
- 人材派遣
派遣社員を受け入る際、適切な体制を整えることが重要です。その中でも、派遣社員に日々の業務指示を的確に行う「指揮命令者」の選任は、派遣サービスを円滑に活用する鍵となります。適切な人選は、派遣業務のトラブルを減らし、円滑な業務遂行につながります。
本記事では、派遣における指揮命令者の役割や、人選の要件、ポイントを解説します。人事の担当者だけでなく、派遣社員を受け入れる部署の方も、ぜひご参考にしてください。
労働者派遣法で抑えておくべきポイントを解説!
人材派遣をご活用される担当者の方や派遣先責任者の方に向けて、労働者派遣法のポイントを解説します。
- 3年ルール(派遣期間制限)
- クーリング期間
- 意見聴取
上記のような企業が遵守しなければならない大切なルールがいくつもあります。人材派遣に関する知識を正しく理解し、適切な人材配置につなげるための参考資料としてご活用ください。
派遣における指揮命令者とは?
派遣指揮命令者は、派遣社員への業務指示、監督、教育などを担います。派遣社員にとっては実質的な上司にあたる存在と言えますが、雇用関係に関わる人事権(採用、解雇、昇給など)はありません。
後述する「派遣先責任者」と異なり、派遣指揮命令者には法的な選任義務はなく、資格も不要です。しかし、派遣社員が派遣先企業の指揮命令下でスムーズに業務を行うには、指揮命令者の存在が欠かせません。
派遣契約書や就業条件通知書には、指揮命令者の情報を記載する欄が設けられており、派遣社員を受け入れる際には、事前に指揮命令者を選任しておく必要があります。
派遣指揮命令者の役割
派遣における指揮命令者は、派遣社員の就業全般に責任を持ち、業務指示、勤怠管理、環境整備の3つの役割を担います。これらの役割を適切に果たすことで、派遣社員が働きやすい環境を作り出すことができます。ここでは3つの役割について解説します。
派遣社員への業務指示・指導
派遣指揮命令者は、派遣社員の業務遂行を支援するうえで、業務指示と教育指導を行います。受け入れ時の初期教育を担当し、業務に必要な知識やスキルを習得できるように指導します。業務開始後も、疑問点や不明点への対応、相談対応、パフォーマンス改善に向けた教育指導などを通して、派遣社員の成長をサポートします。
なお派遣社員は、派遣契約書に記載されていない業務には対応できません。指揮命令者は当該派遣社員との契約内容をしっかり把握し、契約範囲内での業務指示や指導を行いましょう。
派遣社員の勤怠管理
派遣指揮命令者の2つ目の役割は、派遣社員の勤怠管理です。派遣会社と連携し、就業時間内に業務を終えられているか、休日・休暇を適切に取得できているかを把握します。
過度な残業や遅刻・欠勤が多いなど、勤怠上の問題が見られた場合は、その原因を究明し、業務量の調整や指導、体調面のケアなど、必要な対処を行います。
安全衛生等の確保
派遣指揮命令者の3つ目の役割は、派遣社員の安全衛生の確保と働く環境の整備です。
就業開始前は、作業スペースの確保や備品の手配を行い、派遣社員の業務環境を整えます。就業開始後は労働安全衛生法に基づき、照明や音、温度等の作業環境を整え、業務上の事故や怪我の予防に務めます。
また、各種ハラスメントの防止や、施設利用などに関して、自社社員と派遣社員の間に不当な格差が生じないように配慮します。
派遣指揮命令者は、以上のような取り組みを通じて、派遣社員が能力を最大限に発揮し、安心して業務に取り組めるようにサポートします。
他の役割との違い
派遣契約書や就業条件明示書では、派遣指揮命令者のほかに、「派遣先責任者」と「派遣先苦情処理等の申出先担当者」を明記する必要があります。この2つは派遣法で選任が義務付けられており、それぞれ重要な役割を担っています。そこで、それぞれがどのような役割なのか、指揮命令者と比較しながら解説します。
派遣先責任者との違い
派遣先責任者は、派遣会社との調整や派遣契約の適切な運用に責任を持つ役割です。受け入れ派遣労働者100人につき1人以上の専任が義務づけられていますが、派遣労働者の数と派遣先が雇用する労働者の数の合計が5人以下の場合は選任する必要はありません。なお、派遣先責任者と指揮命令者の兼任は可能です。
厚生労働省の「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では、労働関係法令や人事・労務管理等に関する知識や相当期間の経験と、派遣労働者の就業に関する一定の権限を持つことが選任基準とされています。知識面の条件は、派遣先責任者講習を受講することで満たすことができます。
派遣先責任者の詳細については下記を参考にしてください。
派遣先苦情処理等の申出先担当者との違い
派遣先苦情処理等の申出先担当者とは、派遣社員から派遣先に対する苦情を受け付け、派遣元企業と連携しながら、派遣社員の権利を守るために問題解決を図るなどの役割を担います。苦情の内容は多岐にわたり、勤務条件や就業環境、ハラスメントなどが挙げられます。
派遣先苦情処理等の申出先担当者は、派遣先責任者が務めても問題ありませんが、派遣指揮命令者との兼任は望ましくないとされています。
派遣先苦情処理等の申出先担当者には、中立的な立場であることが求められており、派遣社員と近い関係にある指揮命令者が苦情対象になることもあるためです。
指揮命令者を選ぶ基準
指揮命令者を選任するための基準を解説します。
同一部署に所属していること
派遣指揮命令者として適切な人材を選ぶための基準の一つに、派遣社員と同一の部署に所属していることが挙げられます。
派遣指揮命令者は日々の業務指示や労務管理を行うため、部署内や派遣社員の業務状況をリアルタイムで把握し、迅速に指示を出すことがしばしば求められます。同一部署にいれば、迅速に状況把握ができるため、的確な指示やサポートが可能になるでしょう。また、不明点の質問もしやすいため、業務の停滞も防げます。
業務内容を理解していること
派遣指揮命令者は、派遣社員が担当する業務を熟知していることが求められます。なぜなら、派遣社員に業務の手順や業務品質改善の指導を行うには、業務のコツやトラブル対応の方法を含めた業務への深い理解が必要だからです。そのため、当該業務の経験者や指導経験のある人を選ぶのがもっとも望ましいでしょう。
派遣先が雇用している社員であること
派遣指揮命令者は必ずしも正社員である必要はありませんが、派遣先企業が直接雇用している正社員・契約社員・嘱託社員などである必要があります。先輩の派遣社員などを指揮命令者にしてしまうと、二重派遣とみなされてしまう可能性があるからです。
二重派遣とは違法派遣の一種であり、派遣社員が派遣契約を結んでいる派遣先企業とは別の企業から業務指示を受けて業務を遂行することです。派遣指揮命令者を先輩派遣社員にしてしまうと、派遣社員は派遣先企業とは異なる企業に属する社員から指揮命令を受けることになってしまい、この二重派遣に抵触する可能性があります。
■参考:二重派遣とは
リモート勤務による対応・不在時の代理人対応もOK
派遣指揮命令者は派遣社員と密なコミュニケーションを取るため、オフィスに常駐していなければいけないと思われがちです。しかし、リモートワークが進んでいる現在、業務に関する確認や指示出しなどのコミュニケーションを適切に取れる環境であれば、派遣指揮命令者と派遣社員が異なる場所で業務に従事していても問題ありません。近年では、一般社員だけでなく派遣社員も自宅やサテライトオフィスなどで働くケースが増えています。
また、派遣指揮命令者が出張などで不在となる時は、事前に業務指示をまとめておいたり、代理人を立てて対応したり、などの対策が望まれます。なお、二重派遣に抵触しないよう、代理人も直接雇用している社員の中から選びましょう。
派遣指揮命令者の変更方法
派遣指揮命令者は途中変更も可能です。変更する際は、派遣社員や受け入れ部署、派遣会社、派遣先責任者などの関係者へ速やかに周知し、必要書類の変更なども同時に行います。
特に派遣社員へは速やかに変更の旨を伝え、業務上の相談相手を早期に明確にして、業務遂行上の混乱を最小限に抑えましょう。同様に、受け入れ部署内や派遣先責任者に対しても、指揮命令系統を明確にしておきます。さらに派遣会社にも必ず通達し、就業条件明示書や派遣契約書に記載されている指揮命令者の記載も変更します。
変更にあたっては、新旧の指揮命令者間で業務内容や進捗状況、注意点などをしっかり引き継ぎ、関係者の混乱を防ぐことが重要です。
派遣指揮命令者が注意すべきポイント
派遣指揮命令者は派遣社員が安心して業務に取り組めるよう、適切な業務指導と就業環境づくりを行う必要があります。そのためには、派遣法への理解と、関係者との丁寧なコミュニケーションが重要です。
ここでは、派遣指揮命令者が最低限押さえておきたいポイントを4つ紹介します。
受け入れ体制を整備する
派遣指揮命令者は、派遣契約の内容に基づき、派遣社員の担当業務を明確化する必要があります。業務量が多すぎても少なすぎても、派遣社員にとっては離職要因となるため、適切な業務量を設定しましょう。
また、周囲のフォロー体制を整えておくことも重要です。部署として温かく迎え入れ、派遣指揮命令者以外の社員とも信頼関係を作れる環境づくりを心がけましょう。
派遣指揮命令者を周知する
派遣社員は派遣指揮命令者を通じて業務を行うため、派遣指揮命令者が誰なのかを部署内や関係者に周知しておくことが重要です。
派遣社員が派遣指揮命令者以外から業務指示を受けたり、契約外業務の依頼を受けたり、などのリスクを防ぐことができます。
契約外の業務を指示しない
派遣契約書に記載の無い業務を派遣社員にさせることは、違法行為になります。派遣指揮命令者は、担当する派遣社員に関する派遣契約書の内容を十分に理解した上で、業務指示を出しましょう。
契約外の業務を依頼したい時は、派遣会社へ打診を行い、派遣元から派遣社員の意向を確認し、関係者全員の合意を得られたら、派遣契約内容の変更手続きを行います。
派遣契約の話を直接しない
派遣社員の雇用や派遣期間の継続を決める権限は、派遣会社にあります。そのため、派遣先企業の指揮命令者が契約更新の有無や時給といった契約条件を派遣社員に伝えることは派遣法で禁止されています。
派遣社員の仕事内容などを褒める際は質的な評価にとどめ、昇給や派遣期間などの勤務条件に関わる内容は直接伝えないようにしましょう。
派遣の手引き
人材派遣サービスをご利用いただく上での、 コンプライアンス上の留意点等をわかりやすくQ&A方式で解説しております 。 巻末の「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』に関する 疑義応答集」等も、あわせてご参照ください。
まとめ
派遣指揮命令者は、派遣社員の上司のような存在として、日々コミュニケーションを取り、教育指導や労務管理などを行います。派遣指揮命令者が適切に役割を果たすことは、派遣社員のパフォーマンス向上や定着率向上につながります。
派遣社員と指揮命令者の良好な関係構築は、業務の成功、ひいては組織全体の活性化にも必要不可欠です。
パソナでは、豊富な派遣実績に基づき、指揮命令者の人選を含め、派遣導入に向けたアドバイスを行っています。
労働者派遣法を解説したガイドブックもありますので、ぜひご活用ください。
労働者派遣法を正しく理解して派遣サービスを活用!人材派遣ガイドブック
労働者派遣法は、労働者の保護や労働市場の健全な運営を目的とした法律です。人材派遣に関する知識を正しく理解し、適切な人材配置につなげるための参考資料としてご活用ください。
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