おすすめ特集・コラムEAP(従業員支援プログラム)とは?メリットやサービス内容・導入ステップを解説
公開日:2025.05.09 更新日:2025.05.09
- 健康経営
「従業員のストレスや心の不調が気になる」
「メンタルヘルスの問題で生産性が下がっている」
「離職率がなかなか改善しない」
そんな悩みを抱えていませんか?
従業員の心身の健康を支える仕組みとして、注目されているのがEAP(従業員支援プログラム)です。
この記事では、EAPの導入を検討している人事担当者や経営層に向けて、内部EAPと外部EAPの違い、導入手順について解説します。効果的な社内への周知方法、導入後の効果測定のポイントも含めて、押さえておきたい情報をわかりやすく紹介します。従業員が安心して働ける環境を整え、組織の活性化につなげていきましょう。
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EAP(従業員支援プログラム)とは?
EAP(従業員支援プログラム)がどのような目的をもち、どのような背景から導入されるようになったのかを解説します。
目的は従業員の心身の健康維持
EAPは、「Employee Assistance Program」の略で、日本語では「従業員支援プログラム」とも呼ばれます。働く人一人ひとりの心身の健康を守り、安心して仕事ができる環境を整えるための仕組みです。
仕事やプライベートでの悩みやストレスは、集中力の低下や欠勤、離職につながるケースもあります。
EAPでは、カウンセリングの提供や専門機関への紹介、役立つ情報の共有などを行い、問題を早めに見つけて解決へ向けたサポートを行います。早期のサポートによってメンタル不調による休職や離職を防ぎ、人材の定着にもつながるのです。
EAPは、従業員を支えるだけでなく、会社全体の活性化にもつながる大切な取り組みと言えるでしょう。
導入された背景
EAPは、1960年代にアメリカで始まりました。当初は、アルコール依存に悩む従業員の職場復帰を支援する取り組みでしたが、時代とともに内容は大きく広がっていきます。
今では、メンタルヘルスの悩みはもちろん、人間関係やキャリアの相談、ハラスメント対策、さらには法律やお金、家庭の問題まで幅広くサポートすることが可能です。
特にコロナ禍以降、「従業員の心と体の健康(ウェルビーイング)」が企業の成長に欠かせないという意識が高まり、EAPの注目度も上がっています。
日本でもストレスチェック制度の義務化など、メンタルヘルスへの取り組みが進んでおり、2024年時点でメンタルヘルス対策を行っている企業は約63.4%です。さらに、厚生労働省は2027年までにメンタルヘルス対策をしている企業を80%以上にするという目標を立てていることからも、今後EAPはさらに注目されるでしょう。
参考:厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の現状等」2024年3月
関連記事:ウェルビーイング(Well-being)の意味とは?ビジネスで注目される理由を解説
EAPで提供される主なサービス
EAP(従業員支援プログラム)を通じて企業が従業員に提供できる主なサービスについて紹介します。
ストレス・メンタルヘルスチェック
EAPのストレスチェックは、従業員が自分のストレス状態に気づける取り組みです。ふだん気づきにくい心の疲れを「見える化」することで、セルフケアへの意識が高まります。
企業側も、高ストレスの従業員を早めに把握できれば、適切なサポートができ、職場全体の環境改善にもつながるでしょう。
たとえば、部署ごとの結果を分析すれば、「どこにストレスがたまりやすいか」「何に悩んでいる人が多いか」といったことが見えてきます。
日本では、従業員が50人以上いる職場では、ストレスチェックが年1回義務づけられています。EAPではストレスチェックの実施をサポートしたり、医師との面談や職場の改善提案なども行うことも可能です。
関連記事:ストレスチェックの義務化。従業員50人未満の事業所が対応すべきポイント
カウンセリングや相談窓口の設置
EAPの代表的なサポートのひとつが、専門家によるカウンセリングや相談窓口の提供です。従業員は、以下のような悩みやストレスについて相談できます。
・仕事のストレス
・人間関係の悩み
・キャリアの悩み
・家庭内の問題
・育児・介護の悩み
・経済的な不安
相談内容は厳重に守られ、従業員本人の同意がない限り会社に知られることはないため、安心して利用できます。
基本的には短期的なカウンセリングが中心ですが、必要に応じて医療機関や専門家への紹介も可能です。また、部下のメンタルケアに悩む管理職が対応方法を相談できる窓口が用意されている場合もあります。
このように、EAPはさまざまな方法で従業員の心の健康を支え、より働きやすい職場環境づくりに貢献しています。
職場復帰サポート
EAPでは、メンタルヘルス不調で休職した従業員が安心して職場に復帰し、再び活躍できるように「職場復帰サポート」を行なっています。
復帰する従業員は、体調の波や復帰への不安、職場への再適応などさまざまな悩みを抱えているケースが多く、丁寧なサポートが必要な状態です。
EAPを導入することで、本人・人事や上司・主治医の間で情報共有がスムーズに行えるよう調整し、三者が連携して復帰を支援できます。たとえば、短時間勤務の導入や業務内容の調整など、無理のない復帰計画の立案をサポートし、必要に応じて復職前の面談や復帰後のフォロー面談も行います。
職場復帰サポートにより、再休職のリスクを減らし、従業員が安心して働き続けられる環境づくりにつながるでしょう。
関連記事:復職面談の進め方と注意点は?面談目的や確認事項、円滑な復職に向けたコツも解説!
EAP導入のメリット
EAP(従業員支援プログラム)を導入することによって、企業や従業員が得られる具体的なメリットについて紹介します。
従業員のメンタル不調を早期発見・早期対応できる
EAPを導入するメリットの一つは、従業員のメンタルヘルス不調を早い段階で把握し、深刻化する前に対応できる体制を整えられることです。いつでも匿名で相談できる窓口があることで、本人や周囲が気づきにくいストレスや心身の不調にも早めに対処しやすくなります。
たとえば、ストレスチェックの結果をもとに、産業医やカウンセラーとの面談につなげたり、業務のプレッシャーや人間関係に悩む従業員が外部の相談窓口を利用することで、状況が悪化する前に解決できるケースもあるでしょう。
EAPは、問題が起きた後の対応だけでなく、従業員が安心して働き続けるための予防的な仕組みでもあります。
関連記事:突然辞めたい!退職を防ぐために会社が知っておくべきメンタルヘルスの重要性
従業員の満足度が向上
企業がEAPを導入し、従業員の心身の健康や私生活の悩みに向き合う姿勢を示すことは、従業員満足度の向上につながります。
自分の健康や働きやすさを会社が大切に考えてくれていると感じられることで、安心感や信頼感が生まれ、仕事への意欲や組織への愛着も深まるでしょう。「困ったときに相談できる場所がある」と思えるだけでも、日々のストレスは軽減されやすくなります。
さらに、EAPのカウンセリングなどを通じて、職場内の人間関係やコミュニケーションの課題が改善されれば、職場の雰囲気も良くなり、従業員が前向きに働ける環境づくりにもつながります。
組織全体の生産性が向上する
EAPの導入は、従業員一人ひとりのパフォーマンスを高め、組織全体の生産性向上にもつながります。心身の不調や私生活の悩みを抱えたままでは、集中力が落ちたり、欠勤が増えたりするほか、出勤していても本来の力を発揮できない状態になりがちです。
こうした問題が続くと、業務効率の低下やチーム全体の負担増加につながるでしょう。EAPを通じて早い段階で不調に気づき、適切なサポートをすることで、安心して働ける環境が整い、従業員も前向きに業務へ取り組みやすくなります。
ストレスが軽減されれば、ミスの減少や集中力の向上といった効果も期待できます。
EAPの種類と特徴
EAPの主な提供形態である「内部EAP」と「外部EAP」について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介します。 自社に適したEAPを選ぶためには、両者の違いを理解することが大切です。
内部EAP
内部EAPとは、企業が自社の人事部門や専門スタッフを活用して、社内で従業員支援プログラムを運営する仕組みです。自社の文化や業務内容、従業員が抱えやすい課題を深く理解したうえで、柔軟かつ実情に合ったサポートが行えるのが大きな特長です。
たとえば、特定の部署に合わせた研修を迅速に企画・実施できるといったメリットがあります。また、顔見知りの社内担当者に相談できる安心感が、従業員の利用を後押しすることもあるでしょう。
一方で、専門性や対応範囲は社内の人材や予算に左右されるため、提供できる支援の内容には限られる可能性があります。さらに、「社内評価に影響するのでは」「相談内容が漏れるのでは」といった不安から、従業員がEAPの利用をためらうケースもあります。
内部EAPを選ぶ際は、機密保持のルールを明確にし、安心して利用できる体制を整えることで、社内の信頼を高め、より効果的なEAP運用につなげられるでしょう。
外部EAP
外部EAPとは、企業が専門のEAP事業者と契約し、従業員支援プログラムの運営を委託する形式です。外部の事業者には、臨床心理士やキャリアコンサルタント、弁護士、ファイナンシャルプランナーなど、さまざまな専門家が在籍しており、仕事の悩みから経済・家族の問題まで幅広く対応できます。
外部EAPのメリットは、第三者機関が運営することで機密性が高く、従業員が安心して相談しやすい点です。また、企業が専門スタッフを自社で抱える必要がないため、コスト効率の面でも導入しやすく、特に中小企業に適しています。
一方で、社内事情への理解がやや乏しくなることや、従業員にサービスの存在が浸透していないと活用されにくいという課題もあります。
外部EAPを選ぶのであれば、丁寧な周知や継続的な利用促進を行うことで、EAPの利用率を高め、職場への定着にもつなげられるでしょう。
効果的なEAPの選び方
自社に合ったEAPサービスを選ぶために、どのような点に注目すべきかを解説します。 EAPの効果を最大限に引き出すためには、慎重な選定が大切です。
専門資格をもったスタッフがいるか
EAPを選ぶ際は、相談対応スタッフが専門資格を有しているかを確認することが大切です。従業員が抱える悩みは、メンタルヘルスやキャリア、経済的な問題など幅広いため、それぞれの分野で専門的な知識に基づく支援が必要となります。
たとえば、メンタルヘルス相談には臨床心理士や公認心理師、キャリア相談にはキャリアコンサルタントといったように、相談内容に応じた資格を持つ専門家が在籍していることが望ましいでしょう。
また、EAPの専門資格であるCEAP(認定従業員支援プロフェッショナル)を持つスタッフがいるかも、サービスの質を判断する目安になります。
サポート体制・対応時間・緊急時の対応方法
効果的なEAPを導入するには、従業員が「いつでも・必要なときに・気軽に」相談できる体制が整っているかを確認しましょう。悩みを抱える従業員にとって、相談へのアクセスが難しいと、支援のタイミングを逃す恐れがあります。
電話(フリーダイヤル)、メール、オンライン(Web・アプリ)など複数の相談手段があるか、また夜間や土日にも対応しているかは、利用のしやすさにつながります。特に、緊急時に対応できる24時間365日のホットラインの有無は重要です。
予約の取りやすさや、相談開始までの待機時間も利用しやすさに影響するので、従業員が安心して利用できる体制があるかどうか確認しましょう。
コストと導入のしやすさ
EAPを導入する際は、提供されるサービスの内容と費用が見合っているか、自社の予算内で無理なく運用できるかを見極めることが大切です。EAPは継続的に活用されてこそ効果を発揮するので、短期的な費用だけでなく、長期的な費用対効果にも注目する必要があります。
料金体系には、従業員1人あたりの月額料金、利用回数に応じた従量課金制、一定の年間契約制などがあります。
外部EAPは比較的コストを抑えやすい傾向があります。しかし、サービスの内容によって料金に差が出るため、安さだけで判断せず、生産性の向上や離職率の低下といった効果も含めて、投資対効果を考慮することが重要です。
さらに、契約のしやすさや導入時のサポート体制、既存の人事システムとの連携可否などもあわせて確認しましょう。
個人情報の取り扱いがしっかりしているか
従業員が安心してEAPを利用するためには、相談内容や個人情報が厳格に守られる体制が整っていることが大前提です。「会社に知られてしまうのでは」「評価に影響するのでは」といった不安があると、EAPの利用は進みません。
選定時には、EAPのプライバシーポリシーや個人情報保護への取り組みを確認しましょう。
外部EAPでは、報告内容が個人を特定できないよう配慮されているかが大切です。内部EAPを導入する場合も、相談記録の保管方法や担当者の守秘義務の徹底が必要です。安心して相談できる体制があるからこそ、EAPの効果は最大化されます。
EAPを導入するためのステップ
EAP(従業員支援プログラム)を導入し、社内に定着させるための具体的なステップについて解説します。
現状把握と目標・予算設定
EAPを成功させるには、まず導入前の計画が大切です。
最初に行うべきは、自社の従業員が抱える課題やストレスの実態を把握することです。アンケートやヒアリング、勤怠データ、健康診断結果の分析などを通じて現状を明らかにし、どのような支援が必要かを見極めます。
そのうえで、「欠勤日数を○%削減する」「ウェルビーイングに関する満足度を○点以上にする」など、EAP導入で達成したい目標を具体的に設定しましょう。目標が明確であれば、導入後の効果も測定しやすくなります。
次に、必要なサービス内容や規模をふまえて、現実的な予算を決めましょう。導入の土台となる計画を丁寧に行うことで、EAPをスムーズに導入できます。
選定と準備
計画段階で整理したニーズや目標、予算をもとに、次はEAPの選定と導入準備に進みます。まずは「内部EAP」「外部EAP」のなかから、自社の規模や企業文化に合った提供スタイルを検討しましょう。
外部EAPを導入する場合は、複数のサービスを比較し、内容や対応範囲、スタッフの専門資格、導入実績、費用などを丁寧にチェックすることが大切です。資料請求を行い、必要に応じて他社の導入事例を参考にするのもおすすめです。
また、導入までの具体的な手順やスケジュール、担当者の役割分担をまとめた「導入計画書」も準備し、関係者全体で共有しておくとスムーズな導入につながります。
利用開始
EAPサービスの準備が整ったら、次は実際にプログラムを開始し、従業員に活用してもらいます。従業員向けにEAPの内容や利用方法を丁寧に説明し、「安心して使える」ことを周知しましょう。管理職向け研修なども実施するとより効果的です。
実際にサービスをスタートさせ、定期的に利用状況や満足度、業務指標(離職率・休職率など)を確認します。
そして、必要に応じてサービス内容の見直しや、改善を図ります。
EAPを導入する際のポイント
EAPを導入した後、組織に定着させるために押さえておきたいポイントについて解説します。
従業員へ積極的に周知する
EAPを導入した後は、利用できるサービス内容、利用するメリットを全従業員にしっかり伝えることが大切です。
どれだけ優れた支援体制が整っていても、従業員が「知らない」「どう使えばいいかわからない」と感じていては活用にはつながりません。実際、EAPの利用率が伸びない理由として、認知不足や内容の理解不足がよく挙げられます。
周知には、社内掲示板や社内SNSでの情報発信、ポスターの掲示、メールでの案内、説明会の開催など、複数の手段を組み合わせて継続的に行うこととよいでしょう。
また、「費用はかからない」「相談内容は守られる」といったポイントを繰り返し伝えることで、心理的な抵抗を和らげることも大切です。気軽に利用できる雰囲気を社内に浸透させることが、EAPを活用してもらうための第一歩となります。
まずは経営層や人事部が利用する
EAPの利用を促進するには、まず経営層や管理職、人事担当者がその意義をしっかり理解し、自ら前向きに活用する姿勢を見せることが大切です。
特にリーダー層が「従業員の心と体の健康を大切にしている」というメッセージを発信し、ときには自身の経験を交えてEAPの利用をすすめることで、従業員の心理的なハードルも下がりやすくなります。
たとえば、経営トップが社内メッセージで活用を呼びかけたり、管理職が研修で学んだことをチームに共有したりするのも効果的です。さらに、実際に相談サービスを利用する姿勢を見せることも、職場全体の安心感につながるでしょう。
導入後の効果測定を実施する
EAPは導入して終わりではなく、効果を定期的に測定・評価し、改善を重ねていくことが大切です。
効果測定は、定量・定性の両面から行うのが理想です。定量面では、利用率や相談内容の傾向、欠勤率・休職者数の変化、満足度スコアなどが指標になります。
定性面では、利用者アンケートや職場全体への意識調査、ヒアリングなどが有効です。効果測定で得られた結果をもとに、サービス内容や周知方法、アクセス手段などを見直すことで、EAPの効果を継続的に高めていくことが可能です。
EAP導入にはパソナの健康経営支援サービスがおすすめ
EAPは、従業員の心と体の健康をサポートしながら、職場全体の活性化にもつながる取り組みです。
EAPを効果的に活用するには、導入前の丁寧なニーズ把握と目標設定、信頼できるサービスの選定、そして社内体制の整備が欠かせません。
導入後は、従業員にしっかりと周知し、安心して利用できる環境を整えることが大切です。一つひとつの手順を丁寧に進めていくことで、EAPの目的である従業員のウェルビーイング向上や、満足度・生産性の向上につながるでしょう。
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