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ストレスチェックで「高ストレス者」が出たら企業は何をすべき?正しい対応フローやリスクを解説

ストレスチェックとは、職場でのメンタルヘルス不調者を未然に防ぐため、従業員が自身のストレス状態を確認するための検査です。ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された従業員には、医師による面接指導を勧奨し、必要に応じて業務量の調整や配置転換などの措置を講じることが求められます。こうした対応を怠ると、メンタルヘルス悪化による離職の増加や職場全体の生産性低下、さらには法的リスクにつながるおそれがあります。 

この記事では、ストレスチェックで「高ストレス者」が出た場合の企業の対応についてわかりやすく解説します。 

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ストレスチェックとは 

ストレスチェックとは、従業員がストレスに関する質問に回答し、自身の心理的な負担の状態を把握するための簡単な検査です。ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること(一時予防)を主な目的として、従業員50人以上の事業場に実施が義務づけられています。 

また、より一層のメンタルヘルス対策を推進するため、現在は努力義務とされている従業員50人未満の事業場についても、今後義務化されることが決定しています。施行日は未定ですが、2028年中の実施が見込まれており、すべての事業場において対応が求められる見込みです。 

関連記事 ストレスチェックの義務化。従業員50人未満の事業所が対応すべきポイント 

ストレスチェック制度の目的 

ストレスチェック制度の目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことにあります。具体的には、 

・労働者自身がストレスの程度を把握し、自らのストレスに気づくこと 
・ストレスの原因となる職場環境を把握し、組織的な改善を進めること 

の2つを重視しています。 

この制度に注目が集まる背景には、強い不安や悩みからメンタルヘルス不調を抱え、休業・退職に至る労働者が増加していることにあります。実際、精神障害に関する労災認定件数は年々増え続けており、2024年度には過去最多を更新しました。 

ストレスチェック制度は、単に結果を確認するだけでなく、医師による面接指導や職場環境の改善を通じて、労働者の心身の健康を守るための重要な仕組みです。こうした取り組みを継続してこそ、制度本来の目的を果たすことができます。 

関連記事企業が取り組む「健康管理」とは?義務や具体的な施策例、メリットなどを解説 

高ストレス者の増加は職場環境改善のサイン 

ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された場合、企業は本人の申し出に基づき、医師による面接指導を実施し、その結果を踏まえて業務量の調整や配置転換などの措置を講じる義務があります。ストレスチェック制度は、個人へのケアにとどまらず、職場環境の改善につなげることも重要な目的です。したがって、高ストレス者の増加は、組織が抱える課題やリスクを示すサインといえます。 

高ストレスの傾向が見られる場合は、以下のような職場要因を点検・見直すことが効果的です。 

・業務量や仕事の負担の大きさ 
・職場の人間関係やコミュニケーションの質 
・作業環境(騒音、温度、設備など) 

企業はストレスチェックの結果を個人の問題として片づけず、組織的な改善と職場づくりのきっかけとして活用することが求められます。 

関連記事部下のうつ病サインを見逃さない!上司が知っておくべきポイントと対応策 

高ストレス者の定義と判定基準 

高ストレス者とは、ストレスチェックの評価結果に基づき、一定の基準を超える心理的負担が認められた労働者を指します。ここでは、その定義と判定の基準をご紹介します。 

調査票と評価項目 

ストレスチェックの調査票として、厚生労働省が推奨しているのは「職業性ストレス簡易調査票(57項目/23項目)」です。 

調査票は以下の3領域で構成されています。 

・仕事のストレス要因(仕事の量や質・裁量の程度など) 
・心身のストレス反応(疲労感、イライラ、身体的な不調など) 
・周囲のサポート(上司・同僚・家族からの支援) 

これらの回答をもとに算定されたスコアにより、労働者のストレス状態が総合的に評価されます。なお、企業が独自に作成した調査票を使用する場合でも、これら3領域をすべて含めることが求められ、設問内容には厚生労働省が定める一定の科学的妥当性が必要とされています。 

参考ページ「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト 

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高ストレス者を選定する基準 

高ストレス者の選定基準は全国で一律に定められているわけではなく、事業場ごとに衛生委員会などで協議し、実情に応じて設定する必要があります。厚生労働省が公開している「ストレスチェック制度実施マニュアル」では、高ストレス者を選定するための基本的な考え方を以下のように示しています。 

【高ストレス者の選定基準の考え方】 

  1. 「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計が高い者 
  2. 「心身のストレス反応」の評価点が一定以上であり、かつ「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」に関する評価点の合計が著しく高い者  

これらの基準に該当する労働者の割合は、おおむね全体の10%程度を目安としていますが、事業場の規模や業種、職場環境に応じて調整することが可能です。 

なお、単一の指標だけで判断すると、自覚症状のないメンタル不調リスクを見逃すおそれがあります。そのため、心身のストレス反応や仕事の負担、周囲の支援状況などを総合的に評価する視点が欠かせません。 

引用・参考労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省 

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高ストレス者が出た場合の企業の対応フロー 

ストレスチェックで高ストレス者が出た場合、企業には労働安全衛生法や関連指針に基づく適切な対応が求められます。以下で基本的な対応フローをご紹介します。 

1. 結果通知 

ストレスチェックの結果は、原則として労働者本人へ直接通知されます。 

 

ストレスチェックの実施者(医師や保健師など)は、すべての受検者の結果を確認し、医師による面接指導が必要と判断した場合は、その旨を労働者本人に通知します。 

なお、検査結果は要配慮個人情報にあたり、企業は本人の明確な同意がない限り、その結果を取得・閲覧することはできません。 

2. 医師面接指導の勧奨と実施 

高ストレス者から申し出があった場合、企業には医師による面接指導を実施する義務があります。ただし、面接指導を申し出るかどうかは労働者本人の意思に委ねられており、実際に医師の面接を受けている人は全体の約1割程度にとどまります。 

企業としては、対象者が自身の健康状態を正しく理解し、必要な支援につなげられるようサポートすることが重要です。そのためには次のような取り組みが求められます。 

・高ストレス者に対して、面接指導を受けるように勧奨する(※) 
・面接指導の意義や必要性について社内で周知・啓発する 
・労働者が安心して申出できるよう、相談しやすい環境を整備する 
 (※)原則として実施者または実施事務従事者が対応しますが、本人の同意を得たうえで事業者が勧奨を行うことも可能 

また、面接指導は申出があってから1か月以内に実施する必要があります。面接を行う医師は、当該事業場の産業医または産業保健活動に従事する医師が推奨され、外部に委託する場合も、産業医資格を持つ医を選任することが推奨されています。 

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3. 面接指導結果に基づく措置 

医師による面接指導の結果を踏まえ、企業は必要に応じて就業上の措置を応じる義務があります。 

就業上の措置の一例 
・業場所の変更 
・作業内容の転換 
・労働時間の短縮 
・深夜業の回数調整 

こうした配慮を実施した後は、本人や上司、面接担当者の間で対応状況を確認し、産業保健スタッフが継続的にフォローアップを行うことが重要です。 

また、ストレスチェックの集計結果は、実施者が分析を行い、職場環境の改善や組織的なメンタルヘルス対策に活用されることが望まれます。 

高ストレス者を放置した場合に想定されるリスク 

ストレスチェックで高ストレス者と判定されたにも関わらず、適切な対応を行わずに放置した場合には、企業と労働者双方にさまざまなリスクが生じるおそれがあります。 

精神疾患の発症リスク 

高ストレス状態が続くと、メンタルヘルス不調が進行し、うつ病や不安障害など精神疾患を発症するリスクが高まります。症状が悪化すると、集中力や判断力の低下により業務遂行へ支障をきたすほか、人との交流や趣味への意欲が失われるなど、日常生活全般にも影響を及ぼすことがあります。 

安全配慮義務違反 

労働契約法第5条に基づき、企業には労働者の安全と健康を確保するための安全配慮義務が課されています。ストレスチェック制度を通じて高ストレス者の存在を把握しながら、必要な対応を取らず放置した場合、労働者に損害が発生すれば、民法第415条に基づく債務不履行責任として損害賠償を請求される可能性があります。 

さらに、労働基準法や労働安全衛生法に違反すると判断された場合には、拘禁刑や罰金といった刑事罰が科されるおそれもあります。高ストレス者への適切な対応は、労務管理上のリスク回避のみならず、企業のコンプライアンス確保の観点からも極めて重要です。 

職場のパフォーマンス悪化や離職リスク 

メンタルヘルス不調は個人だけの問題ではなく、仕事への意欲や集中力の低下から、結果として職場のパフォーマンス悪化につながります。生産性が落ちるだけでなく、チーム全体の士気にも影響を及ぼします。 

不調が改善されない場合には、遅刻や欠勤の増加、さらには休職・離職に発展するケースも少なくありません。こうした離職リスクの高まりは、周囲の従業員への負担増や不満の蓄積、チームワークの低下を引き起こし、職場全体の悪循環につながるおそれがあります。 

 

高ストレス者に対する企業の対応 

高ストレス状態の放置は、社員の健康と職場の生産性の両方に深刻な影響を及ぼしかねません。ストレスチェックの結果をどう活用すればよいのか、高ストレス者に対して企業が取るべき対応について解説します。 

高ストレス者が多い部署を特定 

ストレスチェックの結果をもとに集団分析を行うことで、高ストレス者が多い部署や職場の傾向を把握できます。集団分析とは、ストレスチェックの個人結果を職場や部署ごとに集計し、ストレスの状態を組織レベルで可視化する手法です。厚生労働省のマニュアルでも、集団分析結果を活用した職場環境の改善が推奨されています。 

高ストレス者が多い部署では、業務負担の偏りや上司・同僚からの支援不足、コミュニケーション不全などの課題を抱えている可能性があります。こうした環境を放置すると、さらなるストレスの蓄積が招くおそれがあるため、集団分析の結果を踏まえた改善策の検討と実行が重要です。 

環境改善施策の実施 

ストレスチェックや集団分析の結果に加え、管理監督者による日常的な観察、社員からの意見、産業保健スタッフの助言などを総合的に活用し、職場環境の改善計画を立案します。 

具体的な施策としては、以下のような取り組みが挙げられます。 

・業務量や業務分担の見直し 
・相談窓口やメンタルヘルス相談体制の整備 
・作業スペース・休憩室など物理的環境の改善 
・産業保健師やカウンセラーの配置 

ストレスの問題を個人の責任として片づけず、組織全体で改善に取り組む体制づくりが重要です。職場改善施策の継続的な実施が、働きやすく健康的な職場づくりつながります。 

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まとめ 

ストレスチェックで「高ストレス者」が判定された場合、企業には面接指導の勧奨や職場環境の改善など、対象者一人ひとりに対する適切な対応が求められます。加えて、ストレスチェック結果に基づく集団分析は、高ストレス者が多い部署やストレス要因の傾向を明確にし、組織全体の課題を把握するうえで重要な手法です。これらの取り組みを通じて、メンタルヘルス不調の未然防止とともに、すべての社員が安心して働ける職場環境づくりを進めることが、企業にとっての大きな責務といえます。 

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