おすすめ特集・コラムセルフキャリアドックとは?注目される背景や導入手順、メリットを解説
公開日:2024.07.25 更新日:2025.01.29
- キャリア自律支援
近年、人事領域では「セルフキャリアドック」という考え方が注目を集めています。セルフキャリアドックは、キャリア形成は会社主導でおこなわれるものという常識を一新する概念であるため、まだ導入事例は少ないものの今後多くの企業に取り入れられることが見込まれています。
この記事では、セルフキャリアドックとは何か?なぜ注目されているのか?企業の導入メリットや導入手順を紹介します。
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セルフキャリアドッグとは?
セルフキャリアドックとは、企業が従業員に対してキャリアコンサルティングと多様なキャリア研修を組み合わせて、継続的に自律的なキャリア形成ができるようにサポートする仕組みや取り組みを指します。
(参考記事:『セルフ・キャリアドック』導入の方針と展開・資料)
セルフキャリアドックは、従来の会社主導のキャリア開発とは対照的に、従業員が主体的にキャリア開発を実践し、会社はあくまで支援する役割であるところに特徴があります。
関連記事:キャリアオーナーシップとは?企業が取り組むメリットや方法を紹介
セルフキャリアドックに注目が集まる背景
セルフキャリアドックが注目されてきた背景を解説します。
生産年齢人口の減少
日本では少子高齢化の進行に伴い生産年齢人口が急激に減少しています。女性や外国人、高齢者の採用でそれを補いつつあるものの、年々外部からの人材採用が難しくなっていくことは疑いありません。そのため、企業は外部からの調達ではなく、社内人材の育成を今まで以上に重視するようになり、セルフキャリアドックが注目され始めました。
VUCAの時代
現在はVUCAの時代(変化が激しく、予測が難しく、複雑で、あいまいな時代)と呼ばれるように、将来予測が困難でビジネスの勝ち筋が描きにくい時代です。
世界で起きる紛争や政治体制の変化は、企業の販路やコストに大きく影響します。場合によっては従業員の命を脅かす事態が起きることもありえるでしょう。最近登場したChatGPTのような先端テクノロジーは、仕事の仕方に革命を起こすだけでなく業界の枠組みを変化させる力を持っています。
セルフキャリアドックを実施することにより、このような変化が激しい時代にあっても、自ら考えて動き、いち早くチャンスを見出したり脅威に対処したりできる自律的な人材を社内に増やすことができるでしょう。
改正職業能力開発促進法の施行
2016年に「改正職業能力開発促進法」が施行され、各企業には「従業員のキャリアコンサルティングの実施や能力開発の支援」が求められるようになりました。同時に従業員に対しても「主体的にキャリア設計をおこない、自発的に職業能力の開発や向上につとめること」が求められるようになりました。
そのため、セルフキャリアドックも具体的な人事施策の一つとして注目されています。
セルフキャリアドックを実施することによるメリット
企業と従業員各々に以下のメリットがあります。
企業にとってのメリット
企業のメリットは、人材の定着と生産性向上の2点です。セルフキャリアドックを実施することで、従業員にとって会社は「キャリア形成を支援してくれる存在」となります。このため、結果的に会社への帰属意識が強まり、人材の定着につながることが想定できます。
従業員が自律的にキャリアアップに取り組むようになり、しかも企業に対して信頼感をもって働くことで生産性が向上することが期待できます。
昭和~平成初期までは、終身雇用と引き換えに従業員が猛烈に働く「ご恩と奉公モデル」がありました。雇用の安定の約束が難しい現代においては、従業員のキャリア開発を支援する(自力で生きていけるように応援する)ことこそが、企業と従業員の信頼関係を強化することにつながるかもしれません。
従業員にとってのメリット
従業員にとってのメリットは、自己成長とモチベーション向上の2点です。企業からの継続的な支援で自分のキャリア形成が促進されるため、一人でキャリアを磨くよりもモチベーションが保ちやすいというメリットがあります。能力アップに比例し業務に対する満足感が向上するため、現在の仕事へのモチベーションも向上するでしょう。
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セルフ・キャリアドックの実現に必要な人材の育成を支援
職業選択や職業生活設計、職業能力の開発や向上などに関する労働者からの相談に応じ、適切な助言や指導をおこなう「キャリアコンサルティング」の専門家、キャリアコンサルタントの養成を支援しています。
セルフキャリアドックの導入手順
セルフキャリアドックを導入するステップを解説します。
ステップ①:人材育成ビジョンの明確化
セルフキャリアドックの導入にあたって、まずおこなうべきは人材育成ビジョンの策定です。
人材育成ビジョンとは「経営理念を実現するために必要な人材像と、その育成方針を明文化したもの」です。ここで定義した人材像は、新規採用や人事評価でも活用することができます。
関連記事:リフレクションとは?意味や人材育成における内省の重要性を解説
ステップ②:実施計画の策定と事前準備
人材育成ビジョンに基づいて実施計画を策定します。一般的な施策は、キャリア研修とキャリアカウンセリングです。
まず実施対象や時期を決めましょう。本来なら全従業員を対象に継続的に実施することが理想ですが、試験的に一部からスタートしても問題ありません。
例えば、入社年数(入社5年目、10年目)や一定年齢到達時(30歳到達時、40歳到達時)で設定します。あるいは20代後半~30代前半の中堅社員、40代~50代のミドルシニア社員といったグループに分けて実行してもよいでしょう。
事前準備として「面談シート」「報告書」「アンケート」の用意、責任者の決定、キャリアコンサルタントの確保が必須となります。キャリアコンサルタントは社内に適任者がいれば問題ありませんが、それなりの経験値、中立性が必要なので外部の専門家に委託してもよいでしょう。
関連記事:企業内のキャリアコンサルタントとは?役割と期待できる効果を紹介
ステップ③:セルフキャリアドックの実施
まず、キャリア研修を実施してキャリアの棚卸しや、アクションプランとキャリアビジョンの作成をおこないます。その後、キャリアカウンセリングを実施します。面談では、過去のキャリアを確認して現時点での課題を明確化します。また、業務上の悩みや組織に対する不満、提言なども具体的にヒヤリングします。
関連記事:キャリア研修とは?年代別の目的やプログラム・実施するメリットについて解説
ステップ④:フォローアップの実施
キャリアカウンセリングの結果を分析して、課題や問題点を明らかにします。大きな問題を抱える従業員に対してはフォローアップを実施します。具体的には追加面談の実施や産業医による対応です。
キャリアカウンセリングを通じて、会社の経営課題やそれに対するヒントや解決策が得られることもあるでしょう。検討課題が明らかになった場合は、関係部署と連携して対応していきます。
関連記事:企業内のキャリアコンサルタントとは?役割と期待できる効果を紹介
企業事例
ここでは、企業事例を3社紹介します。
日清紡テキスタイル株式会社
繊維メーカーの日清紡テキスタイル株式会社では、セルフキャリアドックの初めての取り組みとして総合職の若手社員を対象に、人生設計を含めたキャリア形成をテーマに、キャリア研修とキャリアコンサルティングを実施しました。
成果:
- 参加者からは「自分を振り返って整理することができた」「現状の課題が明確化できた」「今後やるべきことに挑戦したくなった」などの声があがりました。
- 若手社員の視点から、経営課題が明らかになるメリットがありました。
株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン
不動産事業者向けBPOサービスを展開する株式会社エスクロー・エージェント・ジャパンは、従業員の自己肯定感の向上を目的にセルフキャリアドックを導入しました。まずはスモールスタートとして、中途採用社員のフォロー研修の一環でセルフキャリドックのガイダンスとキャリアカウンセリングを実施しました。
成果:
アンケートでは対象者全員が満足と回答しています。「話していてとても楽な気持ちになった 」「的確に意見やアドバイスをしてもらえた」などの好意的な意見が多くあがりました。
今後は若手社員にも対象を広げていく予定です。
株式会社インテージ
情報サービス業の株式会社インテージは、従業員の中長期キャリアプランを踏まえたモチベーション向上を目的にセルフキャリアドックを導入しました。希望者15名にキャリアコンサルティングを実施しました。
成果:
- アンケートでは「満足度」「有効性」「今後の利用意向」のすべてが 100% という高評価が得られました。
- 上司からも「部下が悩んでいるようなのでキャリアコンサルティング面談をお願いしたい」という声があがるなど、実施目的や効果の理解が進みました。
(参考資料:セルフ・キャリアドック 普及拡大加速化事業 好事例集参照)
まとめ
キャリア開発の主体が会社から個人へ移る流れはいわば近年の潮流であり、今後ますます強まっていくことが予想されます。このため、セルフキャリアドックを導入する企業も段階的に増えていくでしょう。
しかし、セルフキャリアドックを実施するにあたって、社内のリソースですべて対応するのは難しいケースが少なくありません。そのような場合、外部サービスの活用が有効な選択肢となります。
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