おすすめ特集・コラムミドルシニア世代の特徴とは?キャリア自律を促すポイントも解説
公開日:2024.07.25 更新日:2024.10.25
- キャリア自律支援
これまで社員のキャリアは「会社から与えられるもの」という考え方が一般的でした。しかし、近年は社員一人ひとりが自身のキャリアについて考え、自らが主体となって確立していく「キャリア自律」が求められています。
総務省統計局の調査によると、2022年における45歳から65歳未満の労働力人口は2,906万人であり、ミドルシニア世代が全労働力人口の42%を占めています(総務省統計局『労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要』より)。産業構造の変化により従来のような年功序列の維持が困難となるなか、ミドルシニアのキャリア自律は企業にとって取り組むべき課題の一つとなっています。
この記事では、日本の労働力人口において人数・コストともに大きな割合を占めるミドルシニアを取り上げて、世代の特徴やキャリア自律を促すポイントについてわかりやすく解説します。
従業員の主体的なキャリア形成を支援する「セルフ・キャリアドック」
セルフ・キャリアドックは、従来の会社主導のキャリア開発とは対照的に、従業員が主体的にキャリア開発を実践し、会社はあくまで支援する役割であるところに特徴があります。セルフ・キャリアドック導入によって以下のような効果が見込まれます。
- 定着率の向上
- 職場の問題解決や活性化
- 自律型人材を育成できる
- 経営の実態把握に役立つ
近年注目を集めている「セルフ・キャリアドック」の導入ステップと導入にあたっての課題・解決策を事例を交えてご紹介します。
ミドルシニアとは?
東京都指定管理事業である東京しごとセンターの定義によると「ヤング」は29歳以下「ミドル」は30歳から54歳「シニア」は55歳以上とされています。ただし、明確な区分が存在するわけではなく、媒体によってばらつきがあります。
「ミドルシニア」とはミドル世代とシニア世代を指し、おおむね40代から60代の中高年層が該当します。
ミドルシニア世代の特徴
40代のミドルシニア世代は、社内におけるキャリアで岐路に立たされる時期です。社内で自分の立ち位置が明確になることで、将来のキャリア形成に不安を感じる者も出てくるでしょう。自分が思い描いていたキャリアと現在の姿にギャップがあると、仕事に対するモチベーションが下がってしまう傾向にあります。
50代以降になると、役職定年を迎えたり、定年後の再雇用により雇用形態の変更が生じたりと、社会人として大きな転機が訪れます。これからどのような働き方をしていきたいのか、自分自身のキャリアを改めて考えるタイミングともいえるでしょう。
ミドルシニアが注目される背景
各企業とも、少子高齢化の影響により若手社員の獲得が困難となっています。求人を出しても、応募を集められません。このような状況下では年齢層を広げて採用活動をおこなう必要があり、豊富な経験や専門的なスキルを有し、即戦力としての活躍が期待できるミドルシニアへの注目が高まっているのです。
キャリア自律とは?
キャリア自律とは、社員本人が自分自身のキャリアを計画し、主体的にキャリア開発を進めることを意味します。1990年代半ばにアメリカで提唱されたのがはじまりで、社員のモチベーション向上と企業の競争力強化を両立させるための手法として考えられました。
キャリア自律が確立されている人材は、自らの価値観を形成し、自分の意思で行動できます。常に変化する外部環境に身を置きながら、キャリア開発を積極的におこない、自ら状況を切り開いていける人材です。そのような社員の育成は企業にとってもメリットが大きく、特にミドルシニア世代のキャリア自律を支援することが求められています。
関連記事:キャリア自律とは?キャリア開発との違いや企業による支援の現状を解説。
パソナのキャリア自律研修プログラム
近年では、自らのキャリアの方向性を明確にし、主体的かつ能動的に考え行動することが求められるようになっています。 パソナのキャリア関連研修の内容についてご紹介します。
キャリア自律が求められる背景
長年の業務経験やスキルを有し、その活躍が期待されているのがミドルシニア世代です。
ミドルシニアにキャリア自律が求められる背景として以下の点が挙げられます。
定年の引き上げ
2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保義務に加え、65歳から70歳までの就業機会の確保が努力義務となりました。60歳までを「我慢の期間」と捉えていたミドルシニアは、就業期間の長期化によってモチベーションの維持が難しくなります。段階的な定年の引き上げに伴い、また仕事に対する自身のモチベーションを保つためにも、社員自らが主体的にキャリアを形成していく必要があります。
関連記事:70歳で定年?企業がミドル・シニア世代へキャリア形成支援をおこなう意味とは
仕事の意欲が低いミドルシニアの増加
ミドルシニア世代になると、管理職として社内での地位を確立する社員と、そうでない社員とで明白な違いが出てきます。これにより、仕事への意欲が低下してしまうミドルシニアも少なくありません。このようなケースでは、自律的なキャリア開発によって社内外でのビジネスチャンスを掴み、モチベーションの向上を図ることが重要となります。
変化のスピードへのキャッチアップの必要性
先行きが不透明なVUCA時代(※1)ともいわれる現代社会において、ビジネス環境の変化のスピードは、今後ますます加速していくでしょう。豊富な経験を持つミドルシニア世代ですが、常に変化する環境下では、これまでに獲得したスキルや経験、資格が通用しなくなる可能性も高いです情報の移り変わりが激しく、未来を予測しにくい時代だからこそ、自ら方向性を見極めて組織に依存しないキャリアアップを目指すべきでしょう。
(※1)「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった言葉。社会が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難な状況を指す。
キャリア自律を促すメリットとは?
自ら主体的にキャリア開発できる人材が増えると、社員本人の意欲向上だけでなく、企業にとっても大きなメリットがあります。
ミドルシニアにキャリア自律を促す具体的なメリットは以下のとおりです。
組織全体の生産性向上
キャリア自律度が高い社員は、パフォーマンスや学習意欲、ワークエンゲージメントも高い傾向にあります。全労働力人口の半数近くを占めるミドルシニア世代をはじめ、社員一人ひとりが自律的に業務に取り組むようになれば、組織全体の生産性向上が期待されます。
若手社員への影響
40代から60代社員の労働への意欲が低いと、組織全体の士気に悪影響が及ぶ可能性があります。この点、ミドルシニアがキャリア自律を確立している場合、自主的なキャリア形成ができるようになり、その姿を見ている若い世代の社員に好影響を与えます。さらに、シニア世代が活躍する職場になれば、若手が転職を希望しなくなるといった好循環も期待できます。
ミドルシニアのキャリア自律を促すポイント
企業がミドルシニアのキャリア自律を促すポイントを以下にまとめました。
人事制度の改革
ミドルシニアのキャリア自律を促進するには「ジョブ型雇用」の導入が有効です。ジョブ型雇用とは、特定の業務内容について職種を明確に定義し、その業務の遂行に十分な経験やスキルを持つスペシャリストを採用する形式をいいます。たとえば、プログラマーとして採用された人はプログラミング関連のセクションのみを担当し、分野の異なる営業や経理に配置転換されることはありません。
ジョブ型雇用の導入により、ミドルシニアにとっては自分に適した業務に専念し、自らの能力に合った評価を受けることができます。仕事に対するモチベーションを保ちやすくなり、特定の業務について研鑽を積むという点でキャリア自律につながっていきます。また、企業にとってもミドルシニアが持つスキルを有効活用できるメリットがあります。
キャリアカウンセリングの実施
キャリア自律のためには継続的な面談が効果的です。1対1で将来のキャリアについて面談を実施し、自律へ向けたサポートをおこなうとよいでしょう。ただし、本業を続けながら副業や兼業をしたい、会社を辞めて起業したいといった内容を社内の人物に相談するのは現実的ではありません。社員が思い描く将来的なキャリア開発について、そのすべてを上司に話すのは難しいのが現実です。
このようなケースで活用できるのが、社員のキャリア相談に適した助言・指導をおこなう社内外のキャリアコンサルタントです。キャリアの専門家に話すのであれば守秘義務がしっかりと守られるため、社員は気兼ねなく幅広い内容を相談できるでしょう。
関連記事:企業内のキャリアコンサルタントとは?役割と期待できる効果を紹介
アンラーニングやリスキリングの実施
キャリア自律の確立には「アンラーニング」や「リスキリング」が必要です。アンラーニングとは過去に習得したスキルや価値観のなかで、現状に適合しないものを取捨選択することです。また、リスキリングとはこれまで培ってきたスキルに加え、新たな分野で活用できるスキルの獲得を目指すことをいいます。
つまり、自律的なキャリア開発をおこなうためには、現在身についているスキルや価値観から有効ではなくなったものを捨て、いま求められている新たな知識やスキルを習得するように促す必要があります。アンラーニングやリスキリングによって現状の環境に適用させ、ミドルシニアのキャリア自律につなげていくことが重要です。
関連記事:アンラーニングの意味とは?リスキリングとの違い、メリットを紹介
ミドルシニアに必要な学び直しとは?
社会環境の変化に伴い、キャリア自律や学び直しが求められています。特にミドル・シニア社員に必要な支援とは何かをテーマとしたセミナーのアーカイブです。
まとめ
これまで日本では終身雇用が一般的であり、一つの会社で会社員としての人生を終えることが理想とされていました。ところが、社会状況が変化する中で、会社員の就労環境も大きく変わり、単一のスキルで人生を乗り切れるケース自体が少なくなっています。さらに「キャリアは会社から与えられる」という時代さえも過去のものになりつつあります。
ミドルシニアは労働力において大きな割合を占めるからこそ、社員本人が自身のキャリアを主体的に構築していく「キャリア自律」が求められています。企業としてもミドルシニアのキャリア自律を後押しする支援をおこなう必要があります。
パソナでは社員の自律的なキャリア開発を支援するプログラム「セーフプレースメント・トータルサービス」を提供しています。ミドルシニア社員に向けたキャリア開発については、社内に知識やノウハウの蓄積が少ないケースも多く、そのようなときに活用していただきたいサービスです。ミドルシニア世代のキャリア自律を促進したい企業担当者様はぜひご参照ください。
パソナのセーフプレースメント・トータルサービス
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