
INTERVIEW
事例インタビュー三井不動産商業マネジメント株式会社様
法改正対応を契機に進めた「キャリア自律×両立支援」
全管理職を巻き込んだ現場主導の組織変革とは
三井不動産商業マネジメント株式会社 人事部 人事課 課長代理 室井 広章氏(写真左) 人事部 人事課 シニアエキスパート 伊藤 あかり 氏(写真右)
三井不動産商業マネジメント株式会社は、三井不動産グループの商業施設運営・管理会社として、「三井ショッピングパーク ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」など、全国のリージョナル型ショッピングセンターやアウトレットモール、都心型商業施設などの運営・管理を担っています。地域社会の活性化と持続的な価値創造を目指し、商業・スポーツ・エンターテインメントの融合や、リアルとデジタルを掛け合わせたオムニチャネル戦略も推進しています。
同社の人事戦略の根底にあるのは、「多様な人材が長期的に活躍できる組織づくり」です。特に、女性社員が約半数を占め、男性の育児休業取得率もほぼ100%という特徴を持つ同社では、ライフイベントとキャリアの両立支援が重要なテーマとなっています。
2025年の育児・介護休業法改正を契機に、同社は従来の制度運用にとどまらず、「キャリア自律」という観点から両立支援を再定義しました。今回は、同社が取り組んでいる施策と、パソナとともに企画・推進した研修について、人事部のご担当であるお二人にお話を伺いました。
※2026年3月時点でのインタビューです。
事業成長を支える「人材戦略」とは――キャリア自律と両立支援の再定義に至る背景
− 貴社の事業について教えてください。また最近のトピックスがあればお聞かせください。


当社の商業施設運営・管理事業は1981年に開業した「ららぽーと船橋ショッピングセンター(現三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY)」から始まりました。2026年4月現在、多種多様な業態に対応し80を超える施設を受託しており、受託施設以外にも海外の商業施設の運営において支援をおこなっております。
現在はスポーツ・エンターテインメント事業にも一層力を入れ、商業、スポーツ、エンターテインメントの持つ楽しさや魅力を掛け合わせた、多種多様な体験価値の提供に取り組んでいます。そしてお客さまにとって心豊かになる、楽しい時間を過ごすことのできる魅力ある施設であるとともに、地域交流の場、地域のみなさまにとっての「サードプレイス」になることを目指しています。
また、リアルモールを起点として、公式通販サイト「Mitsui Shopping Park &mall」、「三井アウトレットパーク オンライン」を融合させ、デジタル技術を活用し、お客さま・ご出店者さま双方にとってご満足いただけるオムニチャネル化の取り組みも推進しています。
− 描いている事業を構築していく上で、貴社では「どのような人材に活躍してほしい」とお考えでしょうか。また、その実現に向けて取り組まれている人事施策があれば教えてください。
地域に根差した商業施設運営というビジネスにおいては、従業員一人ひとりの判断力や対人対応力が企業価値に直結します。そのため当社では、人材を最も重要な資産と位置づけ、社員が長期的に活躍できる環境づくりに力を入れています。
特に当社は、女性社員が約半数を占め、男性の育児休業取得率も高いという特徴もあるため、年齢・性別・ライフイベントの有無にかかわらず、社員一人ひとりが主体的にキャリアを描きながら成長し、長期的に組織に価値を提供できる人材の育成を目指しています。
そのため、当社としては、制度の整備だけでなく、「制度を前向きに活用できる組織文化の醸成」を重視しています。仕事を軸に利用制度を選択する、家庭事情、子の成長に合わせて働き方を見直す、など、制度の意図を正しく理解し、利用することが重要であり、それには、対象社員に一番身近な管理職の役割が重要で、正しくマネジメントできるリテラシーと対応力が必要だと感じています。
具体的には、キャリア形成支援の強化や女性活躍推進の取り組み、管理職のマネジメント力向上に向けた研修などを進めています。
また、育児休業からの復職者や育児短時間制度利用社員・シニア社員へのフォローアップ施策なども実施し、ライフイベントを迎えてもキャリアを継続的に発展させていける環境づくりに取り組んでいます。
− 2025年10月の育児・介護休業法改正に向けて、貴社ではどのような検討や取り組みを進められましたか。また、その中で課題に感じていた点があれば教えてください。
今回の法改正では、社員に対する個別周知や意向確認の強化が求められることになりました。当社でも検討を進める中で、いくつかの課題が見えてきました。
一つは、制度の周知や意向確認が形式的な対応に留まり、本来あるべき社員の成長や働きがい・キャリア形成という視点が弱くなってしまうという課題意識がありました。
また、管理職によって制度理解や面談経験に差があり、現場対応にばらつきがある点も課題でした。
そこで当社では、制度利用そのものをゴールとするのではなく、ライフイベントを迎えてもキャリア成長を継続できる環境づくりが必要だと考えました。
そのため、人事部だけではなく、日頃より対象社員と接し、働き方やキャリア志向を認識している現場の管理職が主体的に社員一人ひとりの状況に合わせた両立支援を行える体制づくりを進めることを検討しました。
− 施策を検討される前は、現場にてどのような課題がありましたか。
例えば、管理職の対応や制度運用の面で感じていたことがあれば教えてください。
主に3つの課題がありました。
1つ目は、管理職の両立支援リテラシーのばらつきです。制度自体は整備されていても、現場での理解や運用には差がありました。
2つ目は、個別周知や意向確認のプロセスの標準化です。従来、人事部を中心として個別周知や意向確認を進めており、制度理解や対応経験の蓄積があったため、一定の質を担保することができていましたが、管理職が主体的に両立支援をおこなうとなると、面談の進め方や説明内容にばらつきが出ることが想定されたため、対応を均質化する必要がありました。
3つ目は、キャリアを動機づけしながら行うマネジメントスキル(ライフイベントを組織の成長機会として捉える意識の醸成)です。
単なる制度の拡充だけではなく、組織文化やマネジメントの在り方を変えていく必要があると感じていました。制度を利用する本人は制度の趣旨を正しく理解してもらう、その一方で、管理職も本人の成長や働きがい・キャリアを念頭に置いたマネジメント・制度活用を促すという両軸を大切にし、そのうえで双方ですり合わせができるようにしたいと考えました。
現場で機能する仕組みへ――全管理職を巻き込んだ研修とツール整備
− 施策を検討する中で、どのような点を重視してパートナー企業を選定されましたか。その中でパソナをお選びいただいた理由について教えてください。


今回の施策では、知識のインプットにとどまらず、当社の組織文化・現場実態を踏まえ、実務に落とし込める仕組みづくりが重要なポイントでした。実際の面談シーンを想定し、部下のキャリアや組織運営の視点から面談を実施するスキルを習得できる研修プログラムの作成を伴走していただけるパートナーを探しており、具体的には以下の点を重視しました。
・法改正を踏まえた実務知見
・管理職が現場で活用できる面談マニュアル等のツール制作
・当社の組織文化・現場実態を理解した提案
複数社からご提案を受けた中で、パソナには、当社の課題や背景まで網羅的に汲み取っていただいたうえで柔軟かつ、現場での運用イメージができるご提案をいただきました。また、研修とツール整備を一体で支援いただける点が、選定の決め手となりました。
− 具体的にパソナとともに進めた取り組みについて教えてください。
主に以下の3つの取り組みをパソナと進めました。
1つ目は、管理職を対象とした両立支援研修の実施です。
全管理職を対象に、対面とオンラインを組み合わせて実施しました。制度理解だけでなく、個別面談の進め方やロールプレイなど、実践的な内容を取り入れました。
全員を1回の研修で納めることがむずかしかったため、複数回に開催を分けて小規模での研修体制としました。
2つ目は、面談シート・マニュアルの整備です。
産前産後休暇前や育児休業前、復職後など、育児・介護における面談をサポートするツールとして設計し、管理職と社員がシートを確認しながら面談できる仕組みを整えました。
3つ目は、育児短時間制度利用社員向け研修の実施です。
育休から復職した育児短時間制度利用社員に向けて、仕事と育児の両立を図りながら、自分らしいキャリア形成の支援を目的とした研修を実施しました。管理職向けの研修とも連動しつつ、同じ立場の社員同士の横のつながりの場とすることや、両立支援制度の意義を正しく理解すること、キャリア形成を意識した制度利用を促すことなど実践的な内容を取り入れました。
− 研修やツール導入後、管理職や社員の意識・行動にどのような変化がありましたか。
また、アンケート結果や具体的な反応があれば教えてください。
まず、管理職の制度理解が大きく進んだと感じています。制度の背景や目的を理解することで、単なる法改正対応ではなく、本人のキャリア・組織運営の視点から制度活用を意識して対応する管理職が増えました。
また、面談シートを導入したことで、面談の進め方が整理され、対応の質が均質化されました。シート内には上司が部下に問いかけやすいように質問例を記載しており、面談に慣れていない管理職のフォローアップとなり、対応の質が担保されるように工夫をしました。
研修後のアンケートでも「育児・介護に関する制度について理解が深まったほか、面談の進め方を体系的に学べたことで、面談対応への不安が軽減された」
「ロールプレイングや面談ツールを通じて、育児・介護を担う部下からの相談時における対応や配慮点への理解が深まった」
「本人のキャリアを意識した制度活用の必要性が理解できた」
「Will(やりたいこと)-Can(できること)-Must(役割)」のフレームワーク等、面談の進め方がツールでも整理されており実務ですぐ使える」
といった声が多く寄せられています。
また、約9割の方が研修を通じて理解が進んでおり、今回の法改正をきっかけに、管理職の両立支援に関するリテラシー向上・マネジメントスキル向上に寄与できたと捉えています。
両立支援を“組織成長の機会”へ――企業に求められる次の一手
− 同じような課題を抱える企業に向けて、メッセージがあればお願いします。
人的資本経営の推進を行う中で、企業として労働力を持続的に確保することや、育児や介護などのライフイベントと仕事の両立は、多くの企業が直面するテーマだと思います。制度を整えることも重要ですが、それを現場でどう活用し、社員の働きがいや成長につなげるかがより重要です。
制度利用者とその上司が、キャリアを軸に制度利用のすり合わせができるようになることで、本人の成長や働きがい、ひいては組織全体の成長にもつながると考えます。
そのためには、人事部だけでなく、現場の管理職が主体的に関わる仕組みづくりが不可欠だと感じています。両立支援を単なる制度対応ではなく、組織成長の機会として捉えることが重要だと認識しています。
− 今後、両立支援やキャリア支援の領域でどのような取り組みを進めていきたいとお考えでしょうか。
今後は、まず2025年度から新しくスタートさせた運用・ルールを更に社内浸透させ、継続的に管理職のリテラシー・面談スキルの向上を図ることと、運用を改定した中で出てきた課題に対し、ブラッシュアップを考えています。育児や介護などのライフイベントを社員一人ひとりがキャリアを考える機会として活用し、単に「働き続けられる」だけでなく、「働きがい」を感じながら、その先のキャリアを自律的に描き続けられるような環境づくりに向けた研修や支援をさらに検討していきます。
ただ、制度を利用する当事者だけでなく、それをフォローする周囲のメンバーに対しても、互いを受け入れられるような風土醸成も引き続き推し進めていきます。
また、元々は育児・介護の両立支援の一環として始まったものですが、Will/Can/Mustを活用したキャリアの動機付けについては、そのほかの社員のキャリア形成においても有効だと考えています。育児・介護の有無にかかわらず、全社に波及・浸透させていきたいと思っています。
ライフイベントとキャリアの両立支援サービス
「育児・介護休業法」改正をきっかけに、ライフイベントによるキャリアの分断を起こさせないための取組みが各企業で本格化しています。企業の持続的成長に必要な施策とパソナの支援内容をご紹介します。
フルカスタマイズ設計!女性活躍推進研修
ライフとワークの調和が取れた理想的な組織へ導く『女性活躍研修プログラム』を、カスタマイズ設計してご提供しています。風土醸成のためのアンコンシャスバイアス研修をはじめ、多様なテーマに対応可能です。
企業プロフィール

- 会社名
- 三井不動産商業マネジメント株式会社
- 所在地
- 本社/〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町2-31-1(浜町センタービル)
- 設立
- 1970年1月13日
- 代表者
- 代表取締役社長 大林 修
- 社員数
- 1,435名(2026年4月時点)
※記事の内容については掲載時点のものとなりますので予めご了承ください。
キャリア自律支援
(セーフプレースメント・トータルサービス)
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お電話でのお問い合わせ:0120-308580
(受付時間:平日9:00~17:30)
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パソナからのコメント
本間 聖子
2025年10月の法改正は、多くの企業にとって前例のない対応が求められるものでした。そのような中で同社は、法改正の趣旨を表面的に捉えるのではなく、本質的に理解した上で、現場社員や管理職が実務に落とし込みやすい形で研修や情報提供を行っていた点が非常に印象的でした。
そして、制度対応にとどまらず、「現場でどう機能させるか」まで徹底的に、踏み込んで設計されている点に、同社の取り組みの特徴があります。背景には、仲間を大切にし、チームワークを重んじる企業風土があり、その価値観が具体的な施策として体現されていると感じています。
こうした姿勢は、人材を単なるリソースとしてではなく、「共に価値を創る存在」として捉えているからこそ実現できるものであり、多くの企業においても参考となる取り組みになるでしょう。
ライフキャリアクリエイトチーム
組織人事コンサルタント
出射 詩予
今回の取り組みの核となったのは、法改正対応を単なる制度整備に終わらせず、「キャリア自律」という視点へと転換した点です。育児・介護といったライフイベントはキャリアの制約ではなく、意味づけを更新する転機です。本研修ではWill・Can・Mustのフレームを用い、制度活用を本人の成長と組織への貢献につなげる対話を設計しました。三井不動産商業マネジメント様とは、何度もお打ち合わせと検討を重ね、人事部主導から現場主導への転換を重視し、面談シートやロールプレイを通じて管理職の関わり方を標準化する取り組みを行いました。その結果、ライフイベントは制約ではなく成長のレバーとなり、個人の活躍と組織の活性化を同時に駆動しうることが見えてきました。制度対応にとどまるのか、それともキャリアを動かす仕組みに転換するのか。その選択が、これからの組織の差を生むのではないでしょうか。