おすすめ特集・コラム男女賃金格差の開示義務とは?女性活躍推進法改正により企業が対応すべきこと

PASONA

  • 人材紹介(中途採用支援)
  • キャリア自律支援
  • 女性活躍

男女賃金格差の開示義務とは?女性活躍推進法改正により企業が対応すべきこと

女性活躍推進法の省令改正に伴い、2026年4月1日から「男女賃金格差の開示義務化」が従業員数101人以上の企業を対象に義務化されます。 

対象となる企業は、改正以降の初年度から自社の男女の賃金実態を正確に把握し、翌年度に数値を公表しなければなりません。さらに、今後は性別問わず平等な労働環境を構築するなど、より格差是正に向けて舵を切る必要に迫られていくでしょう。 

本記事では、男女賃金格差の開示義務とは具体的にどのような内容か、法律の概要や義務化の背景、今回の女性活躍推進法改正により企業が対応すべきことを解説します。 

【女性が活躍できる仕組みづくりでお悩みの担当者へ】 
キャリア・健康・両立支援などの多方面からアプローチできるパソナの女性活躍推進支援サービスはこちら 

関連記事:【女性活躍推進法】プラチナえるぼしの認定基準と行動計画の立て方 

女性が活躍する職場づくり3つのポイント

パソナの女性活躍推進担当者から見る推進のポイントと、実際の社内での実践例をご紹介します。

  • パソナの女性活躍推進関連データ
  • 女性活躍推進担当者から見る推進のポイント3つ
  • 具体的な女性活躍推進施策と企業向け提供サービス

パソナグループの女性活躍推進への取り組みはえるぼし最高位認定をはじめ、多方面から評価を受けています。女性活躍推進の支援としてご活用ください。

資料のダウンロードはこちら

男女賃金格差の開示義務とは? 

他の先進国と比較して、依然として大きい日本の男女間賃金格差の縮小を図るため、女性活躍推進法では「男女賃金の差異」情報の開示が義務づけられています。 

男女賃金格差の開示は、2022年7月8日から常時雇用労働者301人以上の企業を対象に義務付けられ、その後2025年の法改正により、2026年4月1日からは常時雇用労働者101人以上の企業へと公開義務が拡大されることが決定しました。 

「男女賃金の差異」公表は、施行後の事業年度の実績を次年度開始後おおむね3カ月以内までに「厚生労働省 女性の活躍推進企業データベース」や「自社のホームページ」でおこなう必要があります。例えば、本事業年度が2023年3月末終了の場合、2023年6月末までに公表しなければなりません。 

関連サイト:雇用・労働女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定) 
関連記事:人的資本開示の義務化を解説!対象企業や開示項目についても紹介

女性活躍推進法とは? 

女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)とは、2016年4月1日に施行された「すべての女性が職業生活を営む上で、希望に応じて自身の能力を十分に発揮し、活躍できる社会を実現するため」に制定された法律です。2025年度末までの時限立法として制定されましたが、2036年度末までの延長が決定しました。 

具体的には、企業に「女性の活躍状況の把握と課題の分析」やそれらを踏まえた「数値目標と取り組み内容を表した行動計画の策定・社内通知」「都道府県労働局への届け出」「女性の活躍に関する情報の外部公表」等を義務付けた法律です。 

関連記事:【2026年最新】女性活躍推進法とは?導入の背景や企業が2026年に取り組むべきことを解説!

2022年4月に、従業員数101人以上の企業まで対象が拡大されました。(出典1) 

出典1:女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について(解説資料)

その後、2022年7月8日から常時雇用の従業員数301人以上の企業に「男女の賃金の差異」の項目が追加され、公表が義務付けられました。(出典2) 

出典2:女性の活躍に関する「情報公表」が変わります(周知リーフレット)/男女の賃金格差、従業員が301人以上の企業で開示義務 厚生労働省が改正 

そして2026年4月1日からは、常時雇用の従業員数101人以上の企業に公開義務が拡大され、「男女間賃金差異」に加え「女性管理職比率」の開示も義務となります。(出典3) 

出典3:【改正】労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法~特設ページ~ 

男女賃金格差について虚偽の公表をおこなったり、公表しなかったりした場合には、労働局は事業主に報告を求め、助言・指導・勧告をすることができます。また、事業主が従わなかった場合、労働局はその旨を公表することもできます。 

情報公表をおこなわないことへの罰則は現在設けられていませんが、虚偽の報告または報告をしなかった事業主は、20万円以下の過料に処せられますので注意しましょう。 

男女賃金格差の開示が義務化された背景 

男女賃金格差の開示が義務化された背景には、国際的に見て日本の男女賃金格差が大きい状況を改善する狙いがあるといわれています。 

2020年時点の経済協力開発機構(OECD)の調査では、先進国でフルタイム勤務の男性の賃金の中央値を100とした場合、フルタイム勤務の女性の賃金は88.4。このように男女賃金格差は万国共通の解決すべき課題ではあるのですが、日本は77.5と平均をさらに大きく下回ります。 

近年、日本でも女性活躍の取り組みが進んでいるものの、他の先進国に比べると賃金面等は依然として不十分です。いわば男女賃金格差が当たり前のように起こり、かつ受け止められてきた日本社会の意識改革をおこなうべく、企業の男女の賃金差を明らかにすることで是正を促し、格差縮小を図る取り組みが進められるようになりました。 

そもそも、労働基準法でも同じ労働条件の場合、性別を理由に賃金に差をつけることは禁じられています。使用者は賃金について差別的取り扱いをしてはなりません。男女間賃金格差の開示を契機に、性別問わず多様な人材が対等に評価され、活躍できる組織へ変化することが企業に求められているといえるでしょう。 

出典4:男女間賃金格差の国際比較 

関連記事:ジェンダーギャップ指数とは?日本の現状と改善にむけた取り組みをご紹介 

男女賃金格差の要因は? 

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2021年)」で男女別の賃金カーブを見ると、男性は年齢が高いほど賃金も高くピークが55〜59歳です。女性は賃金水準が低く、多少のピークが50〜54歳にきているものの限りなく平行に近いカーブで、20~70歳まで大きな賃金差が見られません。 

出典5:令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況 性別/【2022年7月施行】女性活躍推進法に基づく男女の賃金格差開示義務化とは? 

これには構造的な理由があります。いわゆる日本型雇用と呼ばれるメンバーシップ型雇用では、男性は入社してから長期間正社員として働くため、55〜59歳の年代で上級管理職や役員に登用される割合が多くなります。 

一方、年功序列で人材流動性が低いメンバーシップ型組織では、女性が出産・子育てなどのライフイベントによって管理職になる前に離職したり、育児と両立しやすい非正規職を選択したり、正社員としてのキャリアを中断せざるを得ない状況がありました。 

「そもそも管理職候補の層に女性が少ない」「管理的立場(管理職)・役員に女性登用が少ない」「働く女性の半数以上が非正規社員、パートタイム」という状況となっており、平均賃金も伸びない結果となっています。 

日本の就業者に占める女性の割合は 2023年時点で45.2% と、諸外国と大きな差はありません。それにも関わらず、管理職に占める女性割合を見ると状況は大きく異なります。多くの国が 30%以上 を確保しているのに対し、日本は 14.6%(2023年) にとどまり、国際的に見て非常に低い水準となっています。 

出典6:1-15図 諸外国の就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合 | 内閣府男女共同参画局 

日本の人口の減少スピードは急速に進んでいます。また、近年は女性が活躍する企業のほうが、生産性が高いという海外の調査結果も出ています。 

企業は、役員や管理職の女性が増えることが多様な視点やアイデア創出、柔軟な意思決定につながること、社会課題であるジェンダー格差の解決につながることなどを踏まえて、男女賃金格差の是正に取り組むことが必要です。 

関連記事:ジェンダー不平等(男女格差)とは?男女格差を克服するために企業が取り組むべき施策も紹介 

女性活躍推進法改正により企業が対応すべきこと 

女性活躍推進法に則って、企業が対応すべきことは「情報公表への準備」と「ポジティブ・アクションの取り組み」の推進です。 

情報公表への準備 

常時雇用の従業員数101人以上の企業は、公表する「男女の賃金の差異」及び「女性管理職比率」とそれ以外の項目の準備が必要です。 

男女の賃金の差異 

ここでは、「男女の賃金の差異」算出の手順を詳しく解説します。 

「男女の賃金の差異」算出の手順 

1.労働者を男性・女性、また、正規・非正規で4種類に分類  

2.4種類の労働者それぞれについて、一つの事業年度の総賃金と人員数を算出 

出典7:女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について|厚生労働省 

3. 4種類の労働者それぞれについて、平均年間賃金を算出 

4. 正規・非正規の総賃金・人員数を利用して、全ての労働者の年間平均賃金を男女別に算出

出典8:女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について|厚生労働省 

5.正規、非正規、全ての労働者の区分ごとに、(女性の平均年間賃金)÷(男性の平均年間賃金)により、割合(パーセント)算出

出典9:女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について|厚生労働省 

「男女の賃金の差異」は、男性賃金の平均に対する女性賃金の平均を%で示します。「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」「全ての労働者」の3つの区分で算出する必要があります(派遣労働者は派遣元事業主が算出)。小数点第2位を四捨五入、小数点第1位まで表示します。加えて、計算の前提とした重要事項も付記し、公表することが必要です。 

女性管理職比率 

「男女の賃金の差異」に加え、今後は「女性管理職比率」の算出も不可欠です。ここでの管理職は、課長級と課長級より上位の役職(役員を除く)を指します。課長級とは、以下のいずれかに該当する者です。 

  • 事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、2係以上の組織からなり、 若しくは、その構成員が 10 人以上(課長含む)の長 
  • 同一事業所において、課長の他に、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容 及び責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと) 

引用:女性活躍推進法に基づく行動計画の策定方法等について 

管理職の総人数に占める女性管理職の人数の割合の計算方法は以下の通りです。

出典10:女性活躍推進法に基づく行動計画の策定方法等について 

それ以外に公表する項目 

また必須の「男女の賃金の差異」及び「女性管理職比率」に加えて、「⼥性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境整備の実績」に分けられた項目の中から、企業規模に応じた項目数の公表が必要です。 

出典11:女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!|厚生労働省

▶︎常時雇用の従業員数が301人以上の企業 

  • 「男女の賃金の差異」及び「女性管理職比率」 
  • ①から1項目以上 
  • ②から1項目以上 

合計4項目以上を公表 

▶︎常時雇用の従業員数が101人〜300人の企業 

  • 「男女の賃金の差異」及び「女性管理職比率」 
  • ①と②の全項目から1項目以上 

合計3項目以上を公表する必要があります。 

なお、常時雇用する労働者が100名以下の企業における情報公開は努力義務です。 

関連記事:ダイバーシティとインクルージョンの違いと企業が推進するポイントや事例を紹介 
関連記事:女性管理職が少ない理由とは?企業の増やす取り組みとメリットを解説 

ポジティブ・アクションの取り組み 

男女間の賃金格差を是正するには、性別問わず誰もが活躍できる場を広げるための取り組み「ポジティブ・アクション」を推進し、労働者が構造的差別で不利益を被らないようにすることが必要です。 

関連記事:ポジティブ・アクションとは?メリットや具体例をわかりやすく解説

具体的には、性別にかかわらず能力を発揮できる体制・制度づくりが進んでいるか、女性社員や女性管理職の割合は少なくないか、育休後の復帰はスムーズかなど、自社の女性活躍推進の状況や課題を把握して対策を立てます。例えば、人事評価の公正性や透明性を確保し、女性のキャリア形成上、出産・育児がハンデにならない制度を検討することもポイントとなります。 

現在、不合理な性差別・男女賃金格差を放置する企業は、企業価値の向上や事業の継続そのものが期待できないと評価される時代になっています。投資家やステークホルダーからの信頼・信用を失えば、ブランドイメージや競争力は低下し、採用活動・最適な人材の獲得も困難になるでしょう。 

逆にいえば、性別に関係なく誰もが平等な立場で活躍している企業は社会的評価が高くなります。男女賃金格差を是正するポジティブ・アクションの取り組みを積極的に推進していきましょう。 

女性管理職採用のご提案

多岐に渡るサービスを持ち、トータルソリューションが実現できるパソナの中で、女性管理職に関連する施策のご紹介をいたします。

資料ダウンロードはこちら

女性管理職採用のご提案

まとめ 

女性活躍推進法の改正に基づき、2026年4月1日から常時雇用労働者101人以上の事業主を対象に、男女間賃金格差の開示が義務付けられます。今回の改正によって企業が対応すべきことは「情報公表への準備」と「ポジティブ・アクションの取り組み」の推進です。 

近年、不合理な性差別や男女賃金格差を放置する企業はさまざまなステークホルダーから信頼・信用を失いやすく、逆に女性活躍を推進する企業が社会から高い評価を得られる時代に変化しています。 

企業は今一度、女性活躍推進法と取り組むべき対応について知識を深め「すべての労働者が活躍できる体制になっているか」「男女が対等に評価されているか」など、自社の状況把握と課題の改善を早急におこなっていきましょう。 

女性活躍支援 資料ダウンロード

女性の活躍を促進する支援策やポイントをまとめた資料です。組織の多様性推進にお役立てください。

資料ダウンロードはこちら

女性活躍支援 資料ダウンロード

パソナの女性活躍推進のためのサポートサービス

採用、定着率向上、育成と女性社員を取り巻く課題は各社さまざま。パソナではそれぞれのシーンに合わせたソリューションをご用意しています。

資料ダウンロードはこちら

パソナの女性活躍推進のためのサポートサービス

この記事を書いた人

パソナ 編集部

パソナ 編集部

パソナ 編集部です。「人を活かす」ための、人事に関わるトピックス(採用・人材育成・健康経営・女性活躍など)をわかりやすくお伝えいたします。

【株式会社パソナとは・・・?】
「社会の問題点を解決する」を企業理念に『人を活かす』こと私たちの仕事とし、サービス提供をしています。人材派遣・人材紹介・BPOの人材サービスに加え、健康経営支援・キャリア自律支援そして、女性活躍支援など“人”が活躍できる機会を創造し続けております。

Webからのお問い合わせはこちら

お問い合わせ

資料ダウンロードはこちら

資料ダウンロード