おすすめ特集・コラムポジティブ・アクションとは?メリットや具体例をわかりやすく解説
公開日:2024.08.26 更新日:2024.08.26
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社会的・構造的な差別による不利益を是正する取り組みを指す「ポジティブ・アクション」。日本では内閣府男女共同参画局が中心となり、企業による主体的な女性活躍推進の取り組みとしてポジティブ・アクションの実施を促しています。
この記事では、ポジティブ・アクションとはどういうものなのか、推進される背景やメリット、取り組みの具体例とともにわかりやすく解説します。
女性活躍に必要な取り組みをデータから読み解く
労働人口の減少により、女性の社会進出が後押しされるようになった昨今。女性活躍推進に取り組むことで企業の経営面や人事面において以下のようなメリットが期待できます。
- ビジネスチャンスの拡大
- 人材確保
- 社会的信用の向上
- 生産性の向上
では具体的にどのような取り組みが必要なでしょうか。データを交えてご紹介しています。
ポジティブ・アクションとは?
ポジティブ・アクション(Positive Action)とは一般的に、社会的・構造的な差別により不利益を被っている者に対し、定められた範囲で格差是正につなげられる機会を提供する取り組みをいいます。特別な機会の提供により差別を解消し、実質的な機会均等と多様性を確保することを目的としています。
同義の言葉である「アファーマティブ・アクション(Affirmative Action)」は、性別や人種などで歴史的に差別を受けてきたマイノリティ(少数者/少数派)を救済する取り組みのことで、どちらも社会的弱者に対する格差是正を指す言葉です。社会的弱者には女性や障がい者、有色人種、少数民族などが挙げられ、本来の意味としては女性のみならず、弱者全般への救済措置を指します。
しかし、近年の日本におけるポジティブ・アクションやアファーマティブ・アクションは、「男女労働者の間に生じている格差解消のために企業がおこなう自主的かつ積極的な取り組み」を指す言葉として用いられることが多くなっています。男女共同参画社会の実現に向け、内閣府男女共同参画局が効果的な施策としてポジティブ・アクションを推進していることから、さまざまな企業が男女の職務内容や待遇、雇用比率などの格差是正に取り組んでいます。
関連サイト:内閣府男女共同参画局『ポジティブ・アクション』
ポジティブ・アクションが推進される背景
1979年に「女子差別撤廃条約」が国連総会で採択され、日本ではこれに批准するための国内法整備として、雇用における機会の男女格差をなくすよう定めた「男女雇用機会均等法」を1986年に施行しました。
その後も数回の改正を経て、募集・採用から昇進や配置、退職・解雇までのさまざまな差別の禁止、「女性差別禁止」から男女問わず「性別」を理由とする差別禁止への変更、セクシャル・ハラスメントに対する配慮義務、マタニティ・ハラスメントの防止措置義務の設置などがおこなわれ、雇用における男女平等の実現を進めてきました。
しかしながら、日本における女性の社会進出はいまだ低い水準となっているのが現状です。世界経済フォーラムが2022年7月に発表した男女格差を測るジェンダーギャップ指数では、日本の順位は146か国中116位と先進諸国の中では最低レベルでした。「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のうち、教育は1位、健康は63位と良好な順位である一方、経済は121位、政治は139位となっており、社会における男女の格差が根強く残っていることがわかります(内閣府男女共同参画局『「共同参画」2022年8月号』より)。
企業の社内制度に男女差別的な取り扱いはなくても、固定概念や過去の経験から性別による役割分担意識が残り、特定の部署に女性がいなかったり管理職の大半を男性が占めていたりする企業はいまだ多いでしょう。これらの依然として残る男女格差を解消し、個人の能力や努力が評価される社会、多様性の確保による組織の活性化や競争力の強化を実現するために、男女共同参画局を中心とした政府機関がポジティブ・アクションを推進しています。
関連記事:男女賃金格差の開示義務とは?女性活躍推進法改正により企業が対応すべきこと
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ポジティブ・アクションに取り組むメリット
企業がポジティブ・アクションに取り組むメリットには以下が挙げられます。
- 女性社員の長期就労とキャリア意識の向上
- 誰もが働きやすく活躍できる職場の実現
- 優秀な人材の確保と労働力不足の解消
- 多様性の確保による組織活性化
- 対外的な企業イメージの向上
このようにさまざまなメリットを享受できる一方で、ポジティブ・アクションの取り組みとして女性を優遇することに男性社員が不満を感じるのではないかと懸念する企業もあるかもしれません。しかし、個人の能力や努力が正当に評価される環境と、個々の事情やライフイベントに影響されず長期的に就業できる仕組みを整えることは、女性だけでなく男性の働きやすさにもつながるものです。
ポジティブ・アクションの本来の意味に立ち返り、女性の救済だけでなく弱者全般に対する格差の是正を広く考えながら、誰もが働きやすい環境・仕組みづくりに取り組んでいく必要があるでしょう。
関連記事:ジェンダーギャップ指数とは?日本の現状と改善にむけた取り組みをご紹介ポジティブ・アクションの具体例と企業の取り組み
男女間の格差是正に向けて、さまざまな企業が取り組んでいるポジティブ・アクション。ここでは、ポジティブ・アクションの具体例と企業の取り組みについてご紹介します。
指導的地位に占める女性の割合を増やす
日本のジェンダーギャップ指数を押し下げている要因の一つに、指導的地位に占める女性の割合の少なさが挙げられます。指導的地位とは議会議員のほか、法人や団体における課長相当職以上の者などを指します。
これを是正するために、男女共同参画推進本部は「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度まで上昇させる」という目標を2003年に設定しました。2020年7月には進捗の遅れから達成時期を「2020年代の可能な限り早期」に先送りすることを決定したものの、現在も政府や企業による取り組みは続いています。
○大成建設の事例
成熟期を迎えた建設業界で自社が生き残るための施策として、2006年から女性活躍推進に取り組んでいる大成建設。女性の職域を広げたり、資格や能力のある一般職の女性を基幹職に職種変換したりと、総合職や専任職に就く女性社員を増やす取り組みをおこないました。その結果、2020年には女性の一般職の45%が基幹職社員となり、技術職の女性社員も2006年の10数人から約190人まで増加。「男性の職場」という認識が根強い建設業界において、同社では女性管理職も30人から約250人に増やしており、2025年までに400人以上にすることを目標としています。
関連記事:女性管理職の比率は?増やすための施策・育成方法を紹介
男女間の職種役割の区別をなくす
日本は男性と女性の役割を明確に分担させてきた歴史があり、この性別役割分担意識が根付いたままだと、特定の部署に女性が配属されなかったり、女性管理職の登用を阻んだりする原因となります。格差のない男女共同参画社会を実現するためには、性別を問わず個人の能力によって役割の分担を決めていくことが望ましいでしょう。
○野村證券の事例
従来は総合職と一般職を区別し、男女で職種役割が分かれていた野村證券。社員一人ひとりに自身の能力を最大限発揮してもらうことを目的に、男女の面接官を設置し性別に関係のない採用選考を実施しました。男女間の職種役割をなくし、キャリアのある女性や専門家による講演会・セミナーの開催など女性のキャリア推進に積極的に取り組んだ結果、2015年は236人だった女性管理職が2021年には515人まで増加。現在は社員の半数近くを女性社員が占めており、個人の能力や適性に合わせて自分らしく働ける環境が整えられています。
安定して働ける環境を整える
女性の社会進出を推進するためには、女性が希望する限り安心して就業を継続できる環境が整っていることが不可欠です。出産や育児により退職の必要に迫られない環境、また一定期間休業した後も復職しやすい環境を整える必要があります。
○北海道銀行の事例
ライフスタイルに応じた多様な選択肢を職員に提示し、継続的なキャリア形成を支援している北海道銀行。配属者の勤務地にあわせて同居可能な通勤圏内の勤務地に異動できる「夫婦同一地勤務制度」や、一度退職した職員が退職前と同じ条件で復職できる「再雇用制度」などを導入しています。また、産前産後・育児休業後の復帰を支援する復職サポートセミナーや、休業中も自宅で行内の情報を得られる学習ツールを取り入れるなど、復職に向けた準備をスムーズに進められる仕組みも整えています。
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セミナー:ポジティブアクション採用の具体的な取り組み事例
女性幹部比率が極めて低かった企業の採用担当者はいかにして採用活動を進めたのか。社内制度や選考フェーズでの視点についてお伝えしています。
まとめ
ポジティブ・アクションとは社会的弱者に対する格差是正の取り組みのことで、近年の日本においては男女労働者の格差を解消するために企業がおこなう取り組みを指すのが一般的です。個人の能力や努力が正しく評価され、ライフイベントに影響されず安心して働き続けられる職場を目指すことは、女性のみならず男性社員の働きやすさにもつながります。
雇用における男女格差をなくすためには、指導的地位に占める女性の割合を増やす、男女間の職種役割の区別をなくすなどの取り組みが必要です。性別を問わずどの社員にとっても働きやすい職場を実現し、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につなげるために、自社でできる施策を考えてみてはいかがでしょうか。
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