おすすめ特集・コラム変形労働時間制をわかりやすく解説。1ヶ月、1年単位?残業代の考え方やシフト制との違い 

PASONA

  • 人材派遣

変形労働時間制をわかりやすく解説。1ヶ月、1年単位?残業代の考え方やシフト制との違い 

時期によって業務量に波がある職場では、業務が集中する時期に残業が増えやすく、従業員の負担が大きくなります。変形労働時間制はこのような繁閑の差に対応し、全体的な労働時間の短縮を目指すもので、一定期間内で労働時間を柔軟に配分することができます。

この記事では、変形労働時間制の種類や導入するメリット、残業時間の考え方についてわかりやすく解説します。

派遣の手引き

この手引きでは、「労働者派遣法」に基づき人材派遣サービスをご利用いただく上での、コンプライアンス上の留意点等をわかりやすくQ&A方式で解説しております。

  • 「派遣」「請負」・「業務委託」の違いは?
  • 2020年4月施行の改正派遣法による、派遣労働者の待遇確保のための措置とは?
  • 派遣労働者の雇用安定措置とは?
  • 「紹介予定派遣」の仕組は?

人材派遣サービスの有効利用にご参照ください。

資料ダウンロードはこちら

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、労働基準法に基づき繁忙期と閑散期で労働時間を調整し、期間全体で法定労働時間内に収める制度です。繁忙期には労働時間を長く、閑散期には短くすることで、業務量に応じた柔軟な働き方が実現します。これにより繁忙期の残業が抑制され、残業代の削減や生産性の向上につながる効果が期待できます。

変形労働時間制の4つの種類

変形労働時間制には4つの種類があり、それぞれに労働時間の限度が決められています。

1週間単位の変形労働時間制

労働者数30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店において、1週間単位で毎日の労働時間を定めることができる制度です。

1日の労働時間は10時間、1週間の労働時間は40時間を上限とし、当該1週間が始まる前までに各日の労働時間を書面で通知します。この制度を採用する場合は労使協定の締結・届出が必須ですが、就業規則への記載は必要ありません。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月以内の期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間以内となるように調整することで、特定の日や週に1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えた労働が可能となる制度です。

対象事業所の制限はなく、月内で閑散の差がある場合に「忙しい時期は10時間」「落ち着く時期は6時間」といった調整ができます。対象期間中の週平均労働時間は40時間が限度となりますが、1日・1週間の労働時間に制限はありません。手続き面では「就業規則への記載」と「労使協定の締結・届出」のどちらか一方が必要となります。

1年単位の変形労働時間制

1ヶ月を超え1年以内の一定の期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間以内となるように調整することで、特定の日や週に1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えた労働が可能となる制度です。

対象事業所の制限はなく、年間を通じて閑散が起きやすい事業所に適しています。1日10時間以内、1週52時間以内、連続労働日数を最長6日とするなど細かな条件があり、手続き面では「就業規則への記載」と「労使協定の締結・届出」の両方が必要です。

フレックスタイム制

フレックスタイム制も変形労働時間制の一つであり、労働者の裁量で各労働日の始業時刻と終業時刻、労働時間を決めることができる制度です。清算期間における総労働時間が「所定労働時間」となり、清算期間を平均して1週間の労働時間が 40 時間以内になるように定める必要があります。

一般的にはコアタイム(必ず勤務すべき時間帯)とフレキシブルタイム(出退勤を自由に決められる時間帯)を設けることが多いですが、全部の労働時間をフレキシブルタイムとすることも可能です。

関連記事多様な働き方とは?実践企業の取り組み例とメリットを解説

変形労働時間制とシフト制の違い

シフト制とは、時間や曜日ごとに従業員が交代して働く労働時間の割り振り方法のことです。従業員の希望を踏まえながら会社側がシフトパターンを決定し、一定期間のシフト表を作成して労働時間を管理します。労働時間の上限は1日8時間・1週40時間であり、この上限を超える場合には36協定の届出が必要です。

一方、変形労働時間制とは従業員の労働時間を一定期間内で調整する制度です。業務の繁閑に合わせた労働時間の調整が可能で、1日8時間または1週40時間を超える所定労働時間を定めることができます。変形労働時間制とシフト制は混同されがちですが、まったく異なる制度であることに注意が必要です。

変形労働時間制のメリットとデメリット

企業が変形労働時間制を採用するメリット・デメリットを以下にまとめました。

変形労働時間制のメリット

変形労働時間制のメリットとして以下の点が挙げられます。
○労働時間の調整ができる
繁忙期と閑散期がある職場で変形労働時間制を採用すると、忙しい時期は労働時間を長めに、落ち着く時期は労働時間を短めに調整できます。繁閑の業務量に応じた労働時間を設定することで、従業員の過労を防ぎ、心身の健康維持につなげることができます。

関連記事健康経営とは?意味、メリットや実践方法をわかりやすく解説

○残業代を削減できる
変形労働時間制に伴う労働時間の調整により、本来なら残業となる時間も通常の労働時間として扱うことができます。適切に制度が導入されていれば、繁忙期に1日の所定労働時間を10時間とした場合でも、8時間を超えても残業代が発生しません。これにより企業は繁忙期の残業代を削減できるメリットがあります。

●変形労働時間制のデメリット

一方、変形労働時間制には以下のようなデメリットがあります。
○勤怠管理が複雑になる
変形労働時間制を導入すると日や週によって所定労働時間が変わるため、通常の固定勤務制に比べて勤怠管理が複雑になります。特に手作業で管理している場合は担当者の負担が増大し、入力ミスや集計ミスが起こりやすくなるなど、適正な勤怠管理ができなくなるリスクがあります。
○社内スケジュールの調整が難しくなる
変形労働時間制を採用している部署としていない部署がある場合、社内の会議やミーティングなどの時間が合わせづらくなります。これにより部署間の連携やコミュニケーションが取りにくくなり、全体の業務効率や生産性が落ちてしまうおそれがあります。

変形労働時間制の導入方法

変形労働時間制の導入は手順を踏んで進めていく必要があります。ここでは変形労働時間制の導入方法を4つのステップで解説します。

【1】現状調査と対象者、労働時間の決定

まずは従業員の勤務実績と繁閑の状況を調査します。
この現状調査を踏まえて変形労働時間制の採用可否を判断し、制度の対象となる従業員や適用する期間、日・週ごとの所定労働時間を決定します。

【2】就業規則の改正と労使協定の締結

変形労働時間制を導入するには、就業規則の改正と労使協定の締結が必要です。ただし、1ヶ月単位の変形労働時間制は、「就業規則への明記」または「労使協定の締結・届出」のいずれか一方が必要です。1週間単位・1年単位を導入する場合は必ず労使協定を締結する必要があります。

【3】労働基準監督署への届出

所轄の労働基準監督署に改正した就業規則、労使協定の届出を行います。
残業や休日出勤が発生する可能性がある場合は、36協定届(時間外労働・休日労働に関する協定届)も同時に提出しておきましょう。

【4】従業員への周知と運用の開始

制度の内容を従業員に周知し、理解を得たうえで運用を開始します。変形労働時間制は従業員の労働時間や残業代などに影響が出るため、運用を始める前に制度の有用性や就業規則・労使協定の内容を丁寧に説明し、十分な理解を得ることが求められます。

派遣の手引き

この手引きでは、「労働者派遣法」に基づき人材派遣サービスをご利用いただく上での、 コンプライアンス上の留意点等をわかりやすくQ&A方式で解説しております。

資料ダウンロードはこちら

派遣の手引き

変形労働時間制採用時の残業時間の考え方

変形労働時間制を採用する場合も、労使協定や就業規則で定めた労働時間を超える分は「残業時間」となり、割増賃金(残業代)を支払う必要があります。ここでは「1年単位」「1ヶ月単位」「1週間単位」における残業時間の考え方を解説します。

1年単位の変形労働時間制の場合

《1日単位の残業時間》
· 所定労働時間が1日8時間超の日:その所定労働時間を超える時間
· それ以外の日:1日8時間を超える時間
《1週間単位の残業時間》
· 所定労働時間が1週40時間超の週:その所定労働時間を超える時間
· それ以外の週:1週40時間を超える時間
(※1日単位でカウントした残業時間は除外する)

《全期間の残業時間》
対象期間の法定労働時間総枠を超える時間

法定労働時間総枠 =40時間 ×(対象期間の日数 ÷ 7日)
(※1日単位、1週間単位でカウントした残業時間は除外する)

1ヶ月単位の変形労働時間制の場合

《1日単位の残業時間》
· 所定労働時間が1日8時間超の日:その所定労働時間を超える時間
· それ以外の日:1日8時間を超える時間
《1週間単位の残業時間》
· 所定労働時間が1週40時間超の週:その所定労働時間を超える時間
· それ以外の週:1週40時間を超える時間
(※1日単位でカウントした残業時間は除外する)
《全期間の残業時間》
対象期間の法定労働時間総枠を超える時間

法定労働時間総枠 =40時間 ×(対象期間の日数 ÷ 7日)
(※1日単位、1週間単位でカウントした残業時間は除外する)

下のグラフを例にして、残業時間を計算してみましょう。

1日単位の残業時間は、「1日8時間超えかつ当日の所定労働時間超え」にあたる第2週、第3週の1時間ずつ、計2時間が該当します。
1週間単位の残業時間は、「1日8時間以下だが、1週40時間超えかつ1週の所定労働時間超え」にあたる第2週の1時間が該当します。
そのため、時間外労働時間は計3時間となります。
また、法定労働時間は、下図の例では月の暦日数が31日のため、177.1時間になります。
そこで、①~③の計算により残業時間を計算します。
①週単位の実労働時間(181時間)から時間外労働時間(3時間)を引く
  181 ー 3 =178時間
②①で算出した値(178時間)から、月の法定労働時間(177.1時間)をひく
 178 - 177.1 = 0.9時間
③②で算出した値(0.9時間)と時間外労働時間(3時間)を足す
 0.9 + 3 = 3.9時間
下のグラフの場合、残業時間は3.9時間と算出されました。

【出典】厚生労働省静岡労働局 | 労働基準法のあらまし | 1か月単位の変形労働時間制をとる場合の時間外労働の考え方 よりパソナにて作図

1週間単位の変形労働時間制の場合

《1日単位の残業時間》
· 所定労働時間が1日8時間超の日:その所定労働時間を超える時間
· それ以外の日:1日8時間を超える時間
《1週間単位の残業時間》
40時間を超える時間
(※1日単位でカウントした残業時間は除外する)

派遣社員でも変形労働時間制は適用できる?

派遣社員に変形労働時間制を適用する条件は次のとおりです。

· 派遣元と労働者との間で労使協定の締結と労働基準監督署への届出をしていること
· 変形労働時間制に関する規定を派遣元の就業規則に定めていること
· 変形労働時間制を適用する旨を労働者派遣契約に定めていること

変形労働時間制を含む労働時間の枠組みに関して、派遣社員は雇用主である派遣元が定める規定に従う必要があります。派遣先で変形労働時間制を採用していても、派遣元が上記を行っていない場合は派遣社員に適用することはできません。

関連記事人材派遣の仕組みとは?企業にとってのメリットと注意点、導入の流れを解説!

人材派遣の活用ガイドブック

人材派遣をご活用される担当者の方や派遣先責任者の方に向けて、 労働者派遣法で抑えておくべきポイントを抜粋・図解を踏まえて解説しています。

資料ダウンロードはこちら

人材派遣の活用ガイドブック

まとめ

変形労働時間制は、業務の繁閑に応じて柔軟に労働時間を変えられる制度です。従業員の業務負担を軽減し、生産性の向上や残業代の削減に効果がある一方で、固定勤務制と比べると勤怠管理やスケジュール調整が難しくなるデメリットもあります。変形労働時間制を採用する場合は、制度の目的やルール、有用性を明確にし、労使双方にとってメリットのある運用を行うことが重要です。

変形労働時間制による労働時間の調整のほか、繫忙期の人手不足に対応するには人材派遣の活用も有効な手段となります。下記の資料では「労働者派遣法」に基づく人材派遣サービスの留意点をQ&A方式でわかりやすく解説しています。人材派遣の利用を検討されている方はぜひ参考にしてください。

派遣の手引き

この手引きでは、「労働者派遣法」に基づき人材派遣サービスをご利用いただく上での、 コンプライアンス上の留意点等をわかりやすくQ&A方式で解説しております。

資料ダウンロードはこちら

派遣の手引き

この記事を書いた人

パソナ 編集部

パソナ 編集部

パソナ 編集部です。「人を活かす」ための、人事に関わるトピックス(採用・人材育成・健康経営・女性活躍など)をわかりやすくお伝えいたします。

【株式会社パソナとは・・・?】
「社会の問題点を解決する」を企業理念に『人を活かす』こと私たちの仕事とし、サービス提供をしています。人材派遣・人材紹介・BPOの人材サービスに加え、健康経営支援・キャリア自律支援そして、女性活躍支援など“人”が活躍できる機会を創造し続けております。

Webからのお問い合わせはこちら

お問い合わせ

資料ダウンロードはこちら

資料ダウンロード