おすすめ特集・コラム【最新動向】第5回健康経営推進検討会に参加して見えてきた 企業が向き合うべき「ライフデザイン経営」という新たな視点

更新日:2026.04.15
- 健康経営
2026年3月17日、第5回健康経営推進検討会が開催されました。今回も弊社パソナの健康経営コンサルタントが一般傍聴に参加し、議論の動向を確認してまいりました。
健康経営推進検討会(以降、検討会という)は、経済産業省が中心となり、健康経営の今後の方向性を検討する重要な会議体です。ここで議論された内容は、翌年度以降の健康経営度調査票の設問や評価基準に反映されるため、健康経営を推進する企業にとっては、いわば「次の一手」を読み解くための指針となります。
今回の検討会では、令和7年度の認定状況の報告のほか、企業価値の向上につながる健康経営の評価のあり方や、次年度調査の設問の方向性、さらに昨年度にスタートした「女性の健康施策の効果検証プロジェクト」の結果などが議論されました。本稿ではその中でも、主に大規模法人が健康経営を進めていく上で、押さえておくべき重要な論点を整理し、今後の方向性を読み解きます。特に注目すべきは以下の3点です。
- ライフデザイン経営という新たな概念の登場
- 女性の健康支援のさらなる強化
- プレコンセプションケアの評価項目化の可能性
以上の論点をもとに、今後企業がどのように健康経営を進めていくべきか解説いたします。
健康経営は「エンゲージメント」を包含する段階へ
まず、今回の検討会を通じて、健康経営が本来の目的へと立ち返る動きが明確になってきました。
そもそも健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する取り組みです。組織の活性化や生産性向上を通じ、結果として企業価値の向上へとつなげます。ここで重要なことは、当然ながら「従業員の健康管理」と「企業価値の向上」を手段と目的と捉えるのではなく、両者のつながり方そのものをどう設計するかという視点です。
本来は、従業員の健康と企業価値は相互に高め合う関係にあります。
しかし実務では、健康診断の受診率向上やメンタルヘルス対策といった取り組みが進む中で、健康維持・増進に焦点が当たるあまり、企業価値とのつながりが充分に意識されず進められてきた傾向もあります。
もちろんこういった取り組みは決して間違いではなく、一方で、「従業員の健康」と「企業価値の向上」の両輪が有機的に接続されなければ、組織の持続的な成長や健康成果にはつながりにくいと言えます。
このような状況を踏まえ、今回の議論では、改めて「従業員エンゲージメントの向上」が重要なテーマに掲げられました。これは新たな要素というよりも、従業員の健康と企業価値の関係を見直す過程で、必然的に導き出された概念と捉えることができます。
実際に、健康経営度調査のデータを用いた分析では、従業員エンゲージメントが高い企業ほど、収益性や営業利益が高い傾向が示されています。
なお、ここでいうエンゲージメントとは、仕事への「活力」や組織への「愛着」「貢献意欲」など、個人の心理的な結びつきを指します。
そして、エンゲージメントの中でも、これまで健康経営度調査で問われてきたのが「ワーク・エンゲージメント」です。ワーク・エンゲージメントが「仕事との関係性」を指すのに対し、従業員エンゲージメントは「組織との関係性」を示す概念です。
以上を踏まえると、健康経営とは従業員の健康維持・増進にとどまらず、個々のコンディションやエンゲージメントを企業の成果へと結びつける設計であり、その原点が改めて強調されつつあると言えます。
「ライフデザイン経営」という新たな視点
こうした流れの中で、エンゲージメントをより広い視点で捉える概念として、新たに提示されたのが「ライフデザイン経営」です。
ライフデザイン経営とは、従業員の健康だけでなく、キャリアやライフイベント、価値観といった「人生全体」に寄り添い、その充実を支援する考え方です。
これまでの健康経営は、企業価値の向上を見据えた取り組みである一方で、実務においては不調の予防や健康増進に重心が置かれがちでした。
これに対し、ライフデザイン経営は、「より良く働き、生きる状態をつくること」と「企業として持続的に価値を生み出すこと」を、より高い次元で接続しようとする試みだと言えます。
例えば、
- キャリアとライフイベントの両立支援
- 多様な働き方の整備
- ライフステージに応じた健康支援
といった取り組みが該当します。
そして健康経営担当者として留意したいことは、今年度の健康経営度調査で、ライフデザイン経営に関するアンケート項目の新設が提案された点です。
つまり今後は、健康施策の実施とその成果に加え、従業員の人生にどう関わり、その結果どんな状態を生み出しているか問われる可能性が高いと言えるでしょう。
女性の健康支援は引き続き重要なテーマ
次に、女性の健康支援です。女性の健康に関する取り組みはこれまでも継続的に取り上げられてきたテーマです。今回の検討会では、昨年から1年間にわたって実施された「女性の健康効果検証プロジェクト」の結果が報告されるなど、引き続き重要な論点であることがうかがえました。
背景には、女性の健康課題が企業のパフォーマンスに影響するという認識の広がりがあります。
弊社パソナが有するリサーチデータでは、女性社員の約75%が何らかの不調を抱えており、そのうち約半数が仕事に影響を感じているという結果が出ています。また、これらの不調は昇進機会にも影響していることが明らかになっています。
女性の健康支援が経営課題であるという認識は、すでに多くの企業で共有されています。その上で今求められることは、「取り組んでいるかどうか」ではなく、「どのような成果につながっているか」という視点です。
では、その成果はどのように生まれるのでしょうか。
多くの企業では、研修や情報提供といった取り組みは進む一方で、「現場の行動が変わらない」という課題があります。背景には、知識提供にとどまり、実際の行動を支える仕組みが整っていない点があげられます。
例えば、
- 相談できる環境が整っていない
- 管理職や男性社員の理解が不足している
- 制度はあるが利用されていない
といった状況です。
今後、成果が問われる中で、「何を伝えたか」ではなく「どう行動が変わったか」が重要になります。そのためには、リテラシー教育だけでなく、行動を後押しする環境設計まで含めた取り組みが必要不可欠です。
プレコンセプションケアが次の評価軸に
最後に、プレコンセプションケアについて触れておきます。プレコンセプションケアとは、将来の妊娠・出産を見据えて、男女双方の健康管理を行う取り組みを指します。
令和7年度の健康経営度調査では、すでに関連するアンケート項目が盛り込まれていました。
今回の議論を踏まえると、令和8年度以降はプレコンセプションケアに関する設問が、評価項目として扱われる可能性があります。これは単に新設問の追加というよりも、健康経営の対象領域が「現在」だけでなく「将来」へと広がりつつある動きと言えます。
プレコンセプションケアは、個人の健康意識の向上という側面にとどまらず、働き方や将来設計とも関わるテーマです。検討会の事務局資料でも示されているように、将来のキャリア形成や出産・育児との両立に対して、不安や葛藤を抱える若手社員も見られます。こうしたテーマは、本人だけでなく、上司や職場との対話の中で扱われるべき領域です。
管理職と若手社員の間でライフイベントに関する理解が進むことで、従業員は自身のライフデザインを描きやすくなります。このような環境は、結果的にエンゲージメントにも一定の影響を与えると考えられます。
また、人的資本の観点からも、こうした取り組みと企業価値の関係には注目が集まっています。将来への不安が軽減され、納得感を持って働ける状態は、離職の抑制や生産性の維持・向上につながります。プレコンセプションケアは、個人の選択を支えるだけでなく、組織の持続性にも関わるテーマと言えます。
このように見ていくと、プレコンセプションケアは従来の健康施策の延長線上にありながら、「ライフデザイン経営」を具体化する要素の一つとして捉えることができます。今後は、制度や情報提供にとどまらず、キャリアとライフイベントを統合的に支援する仕組みを、組織にどう実装していくか問われることが予想されます。
従業員一人ひとりの人生に寄り添う健康経営を
以上、第5回健康経営推進検討会での議論をもとに、今後の健康経営の方向性について整理してきました。
今回の議論から見えてくるのは、健康経営が従業員の健康管理にとどまらず、その人らしい働き方や生き方を支える取り組みへと広がりつつある点です。
ライフデザイン経営、女性の健康支援、プレコンセプションケアといったテーマはいずれも、従業員一人ひとりの人生にどう向き合うかという問いと密接に関わっています。
従業員の健康を守るだけでなく、その人らしい働き方や生き方にどう寄り添っていくか。そうした取り組みが結果としてエンゲージメントを高め、企業の価値向上や持続的な成長につながっていく──そのような方向性が、いま改めて示されていると言えるでしょう。
女性の健康支援、プレコンセプションケア対策に
弊社パソナでは女性の健康支援プログラム「Kira+sup(キラサポ)」を提供しております。本プログラムは、女性特有の健康課題に対する理解を深める「リテラシー教育」と、実際の行動変容を支える「環境整備」を組み合わせたトータル支援サービスです。産婦人科医による研修動画を通じて、月経や更年期、不妊治療、プレコンセプションケアなど幅広いテーマを体系的に学べるほか、視聴後アンケートにより従業員の健康課題やニーズの把握も可能です。また、産婦人科医・小児科医・助産師によるオンライン相談窓口を設け、従業員やその家族が気軽に専門家へ相談できる環境を提供しております。ご興味をお持ちの方はどうぞ以下より今すぐお問合せください。
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