おすすめ特集・コラム更年期障害=職場の迷惑、とならないために。企業に求められる適切な対応と理解
公開日:2025.04.25 更新日:2025.04.25
- 健康経営
更年期特有の不調により日常生活に支障が生じる「更年期障害」。女性が閉経を迎える前後の時期は心身ともに不安定になりやすく、仕事のパフォーマンスや職場の人間関係に影響がおよぶケースも少なくありません。
この記事では更年期障害が職場に与える影響とともに、女性特有の健康課題への向き合い方や企業に求められる対応について詳しく解説します。
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更年期障害とは
更年期とは閉経の前後10年間を指し、この時期に現れる心身の不調によって日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」といいます。まずは更年期障害の主な症状や原因について見ていきましょう。
更年期障害の主な症状
更年期障害の症状は多岐にわたり、以下のような身体的・精神的症状が現れます。
<更年期に起こりやすい「身体的症状」>
•肩こり
•腰痛
•手足の痛み
•関節痛
•動悸・息切れ
•ほてり・のぼせ
•むくみ
•めまい
•頭痛
•疲れやすさ
•発汗
•月経異常
<更年期に起こりやすい「精神的症状」>
•イライラ感
•不安感
•憂うつになる
•寝つきが悪い
参考サイト:更年期 | 女性特有の健康課題 | 働く女性の心とからだの応援サイト | 厚生労働省
更年期障害の原因
更年期障害の主な原因は「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンの減少です。ホルモンバランスの乱れによって心身にさまざまな不調が現れ、卵巣機能が衰える閉経前後の女性(40代から50代)を中心に発症します。
また、本人の気質や体質、生活環境も更年期障害の現れ方に影響します。責任感が強く繊細な性格や、ライフスタイル・人間関係の変化による精神的負担も更年期に起きる不調の要因となり、これらが重なると症状がより強く現れる傾向にあります。
なお、更年期の症状は女性に限らず、男性ホルモンが減少する中高年男性にも上述のような症状が現れることもあります。
「更年期ロス」や「更年期症状による経済損失」に注目が集まっている
更年期ロスとは、更年期にともなう身体的・精神的症状が原因で、仕事にマイナスの影響が生じている状態のことです。経済産業省が2024(令和6)年2月に発表した「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性」という資料によると、「更年期症状による経済損失額は1.9兆円に達する」という試算があります。この発表により、更年期ロスが企業にもたらす影響の大きさが、社会的に注目されるようになりました。
その一方で、女性特有の健康課題は企業側が把握しづらいため、当事者へのサポートをためらう企業が多いのが現状です。
参考資料:女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について|経済産業省
更年期障害が社員や職場環境に与える影響
更年期障害は日常生活に支障をきたすもので、仕事においても例外ではありません。
ここでは更年期障害が社員や職場に与える影響をご紹介します。
集中力が低下する
更年期障害になると睡眠の質が低下し、なかなか寝付けなくなったり眠りが浅くなったりすることがあります。質の良い睡眠がとれず、体に疲れが残ったまま出社すると、仕事中に集中力を保つことが困難になるでしょう。集中力が低下すると適切な判断ができなくなり、ヒューマンエラーが起きやすくなります。
感情のコントロールが難しくなる
すぐにイライラしたり怒りっぽくなったりするのも更年期によくある症状の一つです。精神的に不安定になると感情のコントロールが難しくなり、些細なことでも攻撃的な言動をとりやすくなります。その結果、周囲の人たちとの関係がギクシャクしてしまい、職場の人間関係が悪化することもあります。
仕事への意欲が維持できない
更年期障害の影響で気力が低下すると、仕事に対するモチベーションを維持できなくなります。集中力が続かず、疲労を感じやすくなるため、これまでのように仕事ができなくなるケースも少なくありません。しかし、こうした症状は周囲から理解されにくく「やる気がない」「怠けている」と誤解されることもあります。
関連記事:女性特有の健康課題とは?企業として取り組むべき理由と支援策を解説
企業が更年期障害に悩む社員をサポートすべき理由とは
経済損失が大きく、本人にも職場にもさまざまな影響をもたらす更年期障害。企業が更年期障害に悩む社員を支援すべき理由として以下の点が挙げられます。
更年期の女性の約9割は就労している
先述の経済産業省資料によると、40〜59歳の女性就労者数は約1,200万人(正規・非正規の合計)とされています。そのうち更年期症状があっても「就労を続ける」割合は約9割、「出勤する」割合は約8割であることがわかりました。このデータから、更年期にある女性の多くが心身の不調を抱えながら仕事を継続していることが読み取れます。
参考資料:女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について|経済産業省
更年期障害を理由に離職する人も多い
更年期障害の症状は周囲に理解されにくく、当事者は一人で悩みを抱えていることもあります。不調を抱えながらも就労を続ける女性が多い一方で、更年期障害を理由に離職する女性も少なくありません。
このような状況は、企業にとって大きな損失といえます。なぜなら、豊富な経験やノウハウを持つ40代から50代の女性は貴重な人材だからです。彼女たちの離職を防ぐためには、企業によるサポートが不可欠です。
「迷惑がかかるから」という理由で退職を選ぶケースもある
更年期障害に起因する離職理由の一つに「職場への影響」があります。本人に働く意思があっても「職場に迷惑がかかるから」「職場に居づらくなったから」という理由で自ら退職を選ぶケースが見られます。企業には、当事者への支援とともに、更年期障害に対する職場の理解を深めることが求められるでしょう。
更年期障害が生産性や昇進にも影響を及ぼす
更年期障害の症状が現れると、本人の労働生産性やキャリア形成にも影響が及びます。更年期障害などの健康課題が仕事に影響することを多くの女性が認識しており、パフォーマンスの低下を感じて昇進を辞退する人も少なくありません。企業の損失を最小限に抑えるためにも、更年期障害に悩む社員をサポートする体制が必要です。
「働く女性の健康推進に取り組むべき理由」
女性活躍推進法が施行され、女性の活躍が推進される中、女性特有の健康問題への対応が必要となっています。 本資料では女性の健康推進への取り組みの必要性、効果をご紹介します。
女性特有の健康課題に企業はどう向き合うべきか
先述の経済産業省資料によれば、更年期障害をはじめとする女性特有の健康課題による社会全体の労働損失は、約3.4兆円と推計されています。この状況に対し、企業はどのように向き合うべきなのでしょうか。職場における支援の現状とあわせて解説します。
参考資料:女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について|経済産業省
職場の健康支援が少ないと感じる女性は7割
先述の資料では、企業による健康や体に対するサポートについて、約7割の女性が十分な支援が行われていないと感じています。性別や年齢にとらわれず、多様な人材の活用によって組織力を強化する「ダイバーシティマネジメント」を実現するためにも、女性の健康支援は企業にとって必要不可欠な取り組みです。
関連記事:女性活躍推進をはじめとしたダイバーシティマネジメントの重要性とパソナの施策事例
更年期障害に対する職場の理解を求める女性が多数
更年期障害に悩む女性は、上司や周囲の社員への理解だけでなく、休暇制度や時短勤務などの支援、適切な人員配置も望んでいます。企業には、女性の健康課題に対する職場内の理解を促すとともに、心身の不調を抱える女性が安心して働き続けられるよう、健康課題と仕事との両立を図るための体制づくりが求められています。
企業側の約3割は「何をすればいいか分からない」
女性に対する健康サポートの必要性を感じていても、約3割の企業が「何をすればいいか分からない」状態にあります。特に更年期の症状は個人差が大きく、企業としてどこまで踏み込むべきか判断が難しいという事情もあるでしょう。しかし、更年期障害が理由の離職を防止し、全員が活躍できる社会をつくるためには、女性側の支援ニーズに応えていく必要があります。
更年期障害に対して求められる職場の対応・対策
健康課題への支援を求める女性が多い一方で、何をすべきか分からないという企業も少なくありません。具体的にどのようなサポートが必要となるのか、ここでは更年期障害に対して求められる職場の対応・対策についてご紹介します。
更年期障害に対するリテラシーの向上
更年期障害に対する職場の理解が不足していると感じる女性は多く、職場内での居心地の悪さが原因で離職に至るケースもあります。まずは更年期障害を含む女性特有の体調の変化について理解を深め、会社全体でリテラシーを向上させることが重要です。
関連記事:ヘルスリテラシーとは?女性活躍・健康経営との関連性や企業事例を紹介
研修の実施やプロジェクトチームの設置
更年期障害に関するリテラシー向上のための具体策としては、女性の健康課題に関する研修を全社的に実施することや、女性の健康づくりを推進するプロジェクトチームを設置することなどが考えられます。特に重要なのは、経営層や管理職の理解を促すことであり、研修などの取り組みを通じて、更年期障害に悩む社員への適切な対応を学んでもらうことが大切です。
相談窓口の設置・専門家によるカウンセリングの提供
更年期障害による仕事への影響を相談できる窓口を設置することで、不調を抱える社員の精神的な不安を軽減し、一人ひとりに合った適切な対応につなげることができます。外部窓口の設置や、産業医によるカウンセリングの提供など、専門知識のある第三者に気軽に相談できる体制を構築しましょう。
関連記事:産業医面談とは?従業員が「意味がない」と感じる理由や実施する目的・メリットを紹介
医療機関の受診の推進
更年期特有の不調を感じながらも、医療機関を受診していない人は少なくありません。症状の悪化を防ぐためには、早めの受診を後押しする職場のサポートが必要です。たとえば、受診費用の一部を補助したり、受診・通院しやすいように業務の調整を行ったりと、会社の制度として早期受診を推進する取り組みが求められます。
体調に合わせて働ける環境の整備や特別休暇の導入
更年期障害を含む健康課題と仕事を無理なく両立してもらうためには、一人ひとりの体調に合わせて柔軟に働ける環境整備が欠かせません。テレワークやフレックスタイム、時短勤務などの制度に加え、法定休暇である生理休暇以外にも、女性特有の体調不良に対応した法定外の特別休暇の導入も検討しましょう。また、適切な室温調整や休憩スペースの確保など、職場環境の見直し・改善も必要です。
参考サイト:労働基準法 | e-Gov 法令検索(第六十八条 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
まとめ
多くの女性が更年期障害を含む女性特有の健康課題を抱えながら働いており、更年期ロスによる経済損失や周りの社員・職場への影響が懸念されています。人材流出やパフォーマンスの低下を最小限に抑えるためには、職場の理解促進や相談体制の整備、柔軟に働ける制度の構築といった手厚いサポートが求められます。
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