おすすめ特集・コラムヘルスリテラシーとは?女性活躍・健康経営との関連性や企業事例を紹介
公開日:2024.07.25 更新日:2024.09.26
- 健康経営
- 女性活躍
誰にとっても自分の健康は気になるものです。ちょっと不調になると病気ではないかと心配して健康情報を調べる人も多いでしょう。
現代は健康に関する情報がインターネット上にあふれており、医師や東洋医学の先生、インフルエンサー、あるいは自力で難病を克服したというような人たちが惜しみなく情報を公開しているので、有益な情報にアクセスすることも容易です。
しかし、情報過多だからこそ適切に正しい情報を取捨選択できる人とそうでない人との健康格差が広がる面もあります。今の時代は、個人も企業もヘルスリテラシーを持つことが非常に重要です。
企業にとっては、ヘルスリテラシーは健康経営や女性活躍とも関連しているテーマです。例えば、女性特有の健康問題は多くの女性の仕事のパフォーマンスに影響を与えており、企業の生産性を左右することもあります。
この記事ではヘルスリテラシーとは何か?女性活躍との関連性や実際にヘルスリテラシーを向上させることに成功した企業事例を紹介します。
働く女性の健康推進に取り組むべき理由とは?
経済産業省の調査では、
- 女性従業員の約5割が女性特有の健康課題により「勤務先で困った経験がある」
- 約4割が女性特有の健康課題などにより「職場で何かをあきらめなくてはならないと感じた経験がある」
と回答しています。 女性活躍推進法が施行され、女性の活躍が推進される中、女性特有の健康問題への対応が必要となっています。 本資料では女性の健康推進への取り組みの必要性、効果をご紹介します。
ヘルスリテラシーとは?
ヘルスリテラシー(Health literacy)とは、健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力のことです。
近年は、女性に関するヘルスリテラシーへの注目が特に高まっており、さまざまな調査がおこなわれています。
例えば、日本医療政策機構が2000人に実施した「働く女性の健康増進調査」では、ヘルスリテラシーが高い女性ほど病気を予防できて健康寿命が長く、ヘルスリテラシーが低い女性ほど、健康を害しやすく生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす傾向があるという事が明らかになりました。
ヘルスリテラシーと健康経営との関連性
健康経営とは、従業員の健康管理を経営課題の一環と捉えて戦略的に取り組む経営手法です。
健康経営では、従業員の健康管理は重要なテーマであり、最も基礎的な目標に「従業員一人ひとりのヘルスリテラシーを高めること」が位置づけられています。具体的には、従業員が健康や医療に関する知識を身につけ自己管理できるようになることです。
健康経営において、近年特に「女性に関連する健康問題」が注目されています。平成30年に経済産業省が公開した資料では、健康経営を積極的に推進する企業において最も関心の高いものが「女性特有の健康問題対策(56%)」でした。
参考資料:健康経営についての取組 ~健康経営銘柄~ – 経済産業省
ヘルスリテラシーと女性活躍との関連性
前述の日本医療機構が実施した「働く女性の健康増進調査」では、ヘルスリテラシーが仕事へのパフォーマンスに影響していることも判明しました。
対象者をヘルスリテラシーの高いグループと低いグループに分類して調査した結果、以下の傾向が明らかになっています。
- ヘルスリテラシーの高い女性グループは、1カ月間の業務のパフォーマンスが有意に高い
- 女性に関するヘルスリテラシーの高さは、望んだ時期の妊娠や不妊治療の有無に関係する
- ヘルスリテラシーの高い女性グループは、女性特有の症状があったときに対処できる割合が高い
ヘルスリテラシーの高い女性はそうでない女性よりも、月経異常時に約2.8倍、PMS(月経前症候群) 時に約1.9倍、更年期症状および更年期障害のある際に約 1.9 倍、市販薬や医師の処方薬を飲んだり、医療機関を受診したりしているというデータが出ています。
ヘルスリテラシーの高い女性ほど、専門家を活用し、自己をメンテナンスし、それが仕事のパフォーマンスにつながっていることがわかります。
参考資料:「働く女性の健康増進調査 2018」- 日本医療政策機構
女性特有の症状に対する施策
経済産業省の調査では、生理痛やPMSなどの女性特有の症状による労働損失は、1年間で約4911億円になると試算されています。この問題はセンシティブな内容なため、これまで企業が深入りすることはあまりありませんでした。同じ女性でもまったく問題を抱えていないケースや、男性従業員にとっては想像しにくい内容なため、どちらかというと自己責任の範疇として捉えられてきたといえるでしょう。
しかし、生理痛は個人によっては病気に等しい激痛があり、軽度な人でも心身のだるさなどの症状があります。PMSについては多数の女性が何らかの症状を抱え、場合によっては原因に気づかずメンタル不調に陥っていることがあります。
多くの女性のパフォーマンスが落ちる時期が継続してあるのは本人にも企業にも損失になるため、企業側もサポートすることが望ましいでしょう。一般的な施策には以下があります。
- 女性従業員が気軽に体の不調を相談できる窓口の設置
- リモートワークや時短勤務など多様な就労体制の整備
- ヘルスリテラシーを向上させるための研修やセミナーなどの実施
ヘルスリテラシー向上にむけた企業事例
女性特有の健康問題に適切な施策を実施して、ヘルスリテラシーを向上させた企業事例を紹介します。
事例①:NTTドコモ
NTTドコモでは女性の健康に関するヘルスリテラシー向上を目指した取り組みとして、5年目の女性社員とその上司を対象に「女性のライフステージと健康セミナー」を開催しています。また、男性管理職を巻き込む理由として、男性管理職が妊娠や出産を控えた女性社員に対して過度な配慮をしがちだったことをあげています。
成果:
受講後のアンケートでは96%が「大変満足・満足」と回答しています。男性管理職からは「今後のスタンスや接し方に役立ちそう」、女性社員からは「日頃の不調の原因のひとつがPMSであることを知った」などの感想が寄せられました。導入前と導入約3カ月後の比較調査では、ヘルスリテラシーと業務パフォーマンスの両方が上昇しました。
事例②:パソナグループ
パソナグループでは女性の健康作りのための取り組みとして、産婦人科医師による女性の健康講座を全従業員に実施しています(年間15回)。さらに産婦人科医・小児科医によるオンライン相談窓口を用意し、気軽なチャット相談や音声や動画、電話などで時間をかけて相談できる夜間相談窓口を提供しています。また、女性の乳がん・子宮がん検診の全額補助のほか、多様な施策を進めています。
成果:
女性の健康講座受講後のアンケートでは、約65%が「オプション検査を定期的に受診しようと思った」と回答しています。実際に2020年度から2021年度にかけて、オプション健診の受診率が22%向上しました。また、20代女性のプレゼンティーズム(心身の不調を抱えていながら業務をおこなっている状態)の指標が、大幅に改善する成果が得られました。
このような幅広い取り組みにより、パソナグループの健康経営度調査の「女性の健康課題への対応」の偏差値は76.0(業種平均49.3)に上昇しました。
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ヘルスリテラシー教育を実践するための手順
全従業員のヘルスリテラシーを向上させるには時間もかかるため、段階を踏むことが大切です。以下のステップで実践するとよいでしょう。
ステップ1:現状の把握
健康情報を理解する段階です。現状を把握できれば効果的なアプローチが可能になります。具体的には「伝達的・批判的ヘルスリテラシー尺度」や「eHealth Literacy Scale 日本語版」などで現在のヘルスリテラシーを測定します。
ステップ2:各自のレベルに応じた指導
現状にあった教育を実施します。ここでは研修が中心となりますが、単発で終わるのではなく、実施期間を定めてテーマを変えつつ複数回の学習機会を設けましょう。
ステップ3:医療機関や相談窓口の情報提供
情報を選別して活用する段階です。従業員が自分の健康状態に合わせて、インターネットで情報を収集してその信憑性を確認することや、実際に医療機関に相談して自ら意思決定できることが求められます。
ただし、ネット上に玉石混載の医療情報が流布している現状を考えると、企業側からも信頼できる医療機関や相談窓口の情報を提供しサポートすることが望ましいでしょう。
まとめ
従業員のヘルスリテラシーを向上させることは、健康経営を実践するための土台です。しかし、ヘルスリテラシーは専門性が高い領域のため、社内リソースでは対応しきれないことも多いでしょう。その場合は医師と連携できる外部サービスの活用などが有力な選択肢となります。
パソナでは記事で紹介した取り組みを「女性の健康サポートプログラム『Kira+sup(キラサポ)』」として企業様にも提供しています。プログラムの目的は、女性特有の健康課題を取り上げて理解を深めることです。研修動画の提供、産婦人科医によるオンライン相談、運動・食事実践講座を組み合わせています。
全社的なヘルスリテラシーを高め、女性従業員の行動変容につながった取り組みですので、自社の参考にしたい、ヘルスリテラシー向上に向けた取り組みを考えているという人事担当の方は、ぜひ以下リンク先で詳細をご確認ください。
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