
INTERVIEW
事例インタビュー株式会社HIPUS様
女性リーダー・管理職向け研修を通じて、ネットワークを作り、組織内の女性活躍に向けた風土醸成に導く
株式会社HIPUS、調達購買領域を中心として、業務改革のコンサルティングから購買オペレーション(BPO)までサービスを提供。元は株式会社日立製作所の調達シェアード会社として設立し、6年前よりInfosys、パナソニック、パソナとの資本提携を経て、株式会社HIPUSとして新たなスタートを切っています。
社員数は全体で600名。女性社員の比率は年々増加し、2025年1月末現在では43%となります。一方、女性管理職の比率は低く、管理職・経営の意思決定層に女性社員が少なく、同社の課題となっています。
今回は、女性活躍推進を進める管理部門の責任者を務める浅井様と同社の研修企画をサポートしたパソナ出射の2名にHIPUSの取り組みについてお伺いしました。
●組織課題
女性社員比率が増加する一方、女性管理職比率は低く、経営の意思決定層に女性社員の意見が反映されていない。また、組織文化も男性主体になっており、女性活躍の組織文化を醸成させる必要があった。
●解決策
男性管理職向けのアンコンシャスバイアス研修の実施し、女性社員の育成・登用に向けた意識改革を促進。また、女性リーダー研修を行い、ネットワーキングとコミュニケーションの強化と経営層へ女性社員の声を提言した。意識改革活動は継続する中で、クリティカル・マスの達成を目指す。
組織の成長に伴い、意思決定に関わる社員構成比を整えていく
株式会社HIPUS Corporate Office Director 浅井 かおり 氏
株式会社HIPUS Corporate Office Director 浅井 かおり 氏
− 御社が女性活躍推進を進める背景について教えてください。
<浅井さん>
6年前に株式会社HIPUSとしてスタートしてから、お陰様で、日立グループ以外のお客様が増え、ビジネスが拡大しています。
これに伴い、従業員数も年々増えており、特に、女性社員の人数も大幅に増えている状況です。ただ、職位別に従業員の分布を見てみると、女性のボリュームゾーンは一般職レベルのジョブレベルに集中しており、一方で管理職の大半は男性で占めています。
また、このスタッフレベルの女性社員の多くが20代となっており、今後は女性活躍が避けて通れないと考えたことが、本取り組みの出発点となります。
実際、ここ4~5年で、優秀な女性社員をマネージャーに抜擢をしたり、働き方等の制度も整えてきましたが、企業文化として女性活躍が実現までに至っておらず、男性マジョリティの企業文化の中で、それぞれの部署に点在する女性マネージャーが孤軍奮闘している、といった状況が続いています。
この男性中心の根深い企業文化を、女性も活躍できる/活躍したい、と思える企業文化に変えていきたい、というのが今回の取り組みのきっかけになります。
− 最初に、取り組まれた男性社員への働きかけについて教えてください。
<浅井さん>
まず、パソナさんにご協力を頂いて、2024年に管理職対象の研修を実施しました。
当社では昔から良くも悪くも、女性社員に優しい男性管理職が多いので、まずは「アンコンシャスバイアス」の概念をインプットしたり、参加者同士で「自分は正当な評価を行えているか?」とか「若手育成ができているか?」といったトピックについて、ディスカッションを実施する研修を行いました。
管理職向けのアンコンシャスバイアス研修では、別部署の管理職と話をしたり、悩みを共有しながら、「改めて自分たちの価値観やマネジメント見直すきっかけになった」という声が多く聞かれたのは良かったですが、一方で、一日研修しただけで企業文化が一気に変わるわけではないので、これで終わりにしてはいけないなとは感じており、第二の矢として女性リーダー研修を企画しました。
− 第二の矢として、実施された女性リーダー研修の内容を教えてください。
<浅井さん>
この女性リーダー研修、元々は弊社社長の発案で、「女性リーダー同士、女性活躍に関する会社の課題を話し合って女性活躍の方向性を考えてほしい」と相談がありました。
このような研修については、社内にノウハウがなかったため、パソナさんと一緒に全体像の設計~企画まで一緒に考えました。その内容を「リーダーシップ・ビジョン研修」という形にまとめ、2日間実施することにしました。
− 女性リーダー研修を企画・運営される中で工夫した点はありますか?
<出射>
まず事前アンケートでは、女性活躍に対して、一般的に考えられる疑問を挙げて、社員に自由記述いただく形式を取りました。普段の業務上では話をしづらい質問を並べることで、社員の本音を拾い上げる設計となりました。
実施した結果、回答欄をはみ出すくらいぎっしり記載いただくことが多く、想定以上の収穫がありました。研修実施前に意見を収集する良い機会になりました。
研修1日目は、これらの疑問に応え、女性活躍が組織にどのような影響を与えるのかというロジックの理解をし、組織の課題に気づくプログラムを行いました。
研修2日目は、リーダーの視点から、組織文化について考える時間を持ちました。
浅井さんとご一緒に検討を重ねて作成したプログラムでしたが、「女性活躍」に対する抵抗感とは男性が持つものという印象があります。しかし、実は、女性自身の中にも、様々な種類の抵抗感やモヤモヤした思いがあり、それが表面化しました。
「女性リーダー同士も方向性が一致しきれている訳ではない」このような状況を正面から受け止めて、女性リーダーのそれぞれの思いに向き合っていこうという、浅井さんの姿勢が大変印象的でした。
<浅井さん>
今回のメンバーも含め、女性リーダーと一言に言っても、キャリアにおいてもプライベートにおいても、様々なバックグラウンド、価値観を持っているので、自分の価値観を押し付けることのないよう、探りながらの繊細な関係構築が要求されるといった、女性ならではの難しさはあると思います。
それでも、研修ではメンバー全員が、それぞれの考えについて、向き合って共有しながらも、最後は同じ方向を向いて、次のステップに進めるような研修になると良いなと考えながら、プログラムを一緒に検討頂きました。
意識改革の推進とネットワーク化されたチームの継続的アクション
− 参加後の社員の方々の意識変化についてどう感じていますか?
<浅井さん>
今まで、自分の部署・自分の部下の問題として捉えていたのが、会社全体ひいては日本全体の問題として捉えるようになり、参加者の皆さんの視野は広がっていると感じています。語弊を恐れずいうと、最初は「ウチの部署は・・」「ウチのチームは・・・」など少し目線が下がった意見が多い印象でしたが、議論を続ける中で、「会社としてこうした方がよいよね」などの、1段階上がった意見が出るようになりました。
合わせて、女性管理職同士の横のネットワークが構築できたので、何か悩みや相談をしたい時の、パートナーのような存在がそれぞれに取ってつくることができたと思います。
− 研修実施後の効果とその後のアクションについて教えてください。
<浅井さん>
参加者全員の中で「行っただけで終わりにしては意味がない」という強い想いがあり、定期的に集まって話をしています。
その中で、目先自分たちでできることとしては、若手女性社員に対して、女性マネージャーのキャリアヒストリーを公開して、女性ロールモデルを発信したり、働き方等の制度改革の検討委員会の立ち上げについて意見がまとまってきています。
また、先日は社長に対して研修の報告と提言をする会を実施し、女性管理職比率30%にするという方針を掲げました。
<出射>
女性管理職比率30%という目標を設定は、研修でも取り上げた、クリティカル・マスを目標の基準にしたということですね。
単純に、女性社員の比率を向上させることではなく、「女性活躍の組織文化醸成に向けて、同じ目標や価値観を共有する女性リーダーが組織を変えていく」このための具体的な数値を設定したところが、HIPUSさんの現在地だと感じました。
− 浅井さんから見て、パソナの支援サービス・提供して価値について印象を教えていただけますか。
<浅井さん>
パソナさんは女性活躍推進などの特定の領域だけの支援だけではなく、人材開発・人材育成に関わる全般を網羅されているため、弊社の課題に対する解決策へのアプローチに多数引き出しがあり、心強かったです。なにより研修を実施するという手段ではなく、当社組織をどうしていくのか?どういう状態を目指していくのか?という課題抽出~目標設定~施策~フィードバックまで一貫して支援いただけるので、当社内のノウハウも蓄積されますし、内製化で推進する上での土壌を作っていただいている印象です。いつも、ありがとうございます。
− 最後に、今後の御社の女性活躍に向けた意気込み・方針を教えてください。
<浅井さん>
まだまだ当社は、男性が中心の組織文化ですが、これから女性幹部が複数名登用される中で、先ほどのクリティカル・マスを達成し、女性社員の発言力がある程度確保でき、臆せず意見を交わせる職場を作りたいと考えています。
また、今回の研修は若手の女性社員も興味をもって見ていたようなので、若い世代の期待を背負っていることを認識して、この研修で構築できた女性リーダーのネットワークを上手く活用しながら、企業文化の変革に取り組んでいきたいと思います。
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社内キャリアコンサルタントの育成支援をしながら、コストパフォーマンスを最適化した人的資本経営時代のキャリアのアップデートを実現。各社の課題に沿ってフルカスタマイズで行う研修の具体的な事例や、効果をまとめました。
HIPUSとパソナが協働で制作した研修事例を動画で解説!
研修企画の制作過程をHIPUS様とパソナ担当者が振り返ることにより、研修企画立案を通じて得た気づきや、参加者女性社員の研修前後の変化をお伝えしたセミナーのアーカイブ動画です。
企業プロフィール
株式会社HIPUSは、調達購買領域を中心として、業務改革のコンサルティングから購買オペレーション(BPO)までサービスを提供。元は株式会社日立製作所の調達シェアード会社として2002年設立。
- 会社名
- 株式会社HIPUS
- 所在地
- 東京都千代田区大手町2丁目2−1 新大手町ビル
- 設立
- 2002年6月4日
- 代表者
- 代表取締役 浅海 清
- 社員数
- 600名(2025年4月1日現在)
※記事の内容については掲載時点のものとなりますので予めご了承ください。
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出射 詩予
2025年は、男女雇用機会均等法が制定されてから40年目を迎えます。育児・介護休業法においても柔軟な働き方が見直されるなど、女性にとって働きやすい環境は整いつつあります。しかし、制度が導入されても、企業内で真の女性活躍が進まないジレンマが依然として存在しており、当社にも、企業様からそのような課題に関するご相談をいただくことがあります。
ライフイベントに影響される女性はキャリアが硬直化しやすく、その結果、男女間に見えない壁が生じ、男性中心の同質化した組織と女性がその外側に位置するという構造が、社会や多くの企業内に依然として存在しています。2024年、日本のジェンダーギャップ指数は146か国中118位で、先進国中最低レベルであったことが話題になりました。女性の「教育」と「健康」指数は世界トップレベルである一方で、「政治参加」と「経済参加」の低さが順位を大きく下げた背景には、このような同質化した社会の構造が影響していることも、度々、指摘されています。
同社で女性活躍の変革を担う浅井氏は、単なる制度の導入や整備にとどまらず、組織文化そのものを変え、女性が活躍できる土壌を築くことを目指しています。組織文化は目に見えない部分であり、リーダーの価値観や行動、振る舞いが大きな影響を与えます。浅井氏は、まず女性リーダーたちがネットワークを築き、同じ思いを共有することが重要だと考え、一歩を踏み出しました。本研修を転機とするため、女性リーダー同士が集まり、互いに語り合う場を設け、準備を進める過程で、女性活躍に対して一枚岩になれない背景に、ひとり一人のバックグラウンドや視点、価値観の違いがあることに気づきました。
研修では、事前に取り組んだ課題を通じて、女性活躍に対する後ろ向きな思いを敢えて言語化し、その上で、データなどを踏まえて、ロジカルに議論を行い、ポジティブな方向性を見いだし共有しながら、自分たちが目指す組織の姿を整理することを目指しました。今後、株式会社HIPUSはさらに女性リーダーの声を集結させ、制度や仕組みの改革にも取り組んでいく予定です。
この度開催されたウェビナーでは、同社が定義した課題に深く共感し、浅井氏の姿勢やチャレンジに勇気や希望をもらったという感想を複数いただきました。見えない壁に挑むということは、その壁の存在を認め、明らかにしていく必要があります。社会や公共の場では声を上げやすいことでも、企業の中でそれを行うことの厳しさは、誰もが感じるところではないでしょうか。30%のクリティカル・マスの目標を達成することは、これを突破する契機となるものと思います。また浅井氏の忍耐強く柔らかな人柄、静かで力強いリーダーシップが、この取り組みを推し進める力になっているように感じました。