INTERVIEW

事例インタビューキヤノンマーケティングジャパン株式会社様

グッドキャリア企業アワード2024大賞受賞!
~はじまりは「不幸な退職をなくせ」~社員のキャリア形成支援に向けた取り組み

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様キヤノンマーケティングジャパン株式会社様
キャリアデザイン支援室 主管 櫛原 敦様(左端)主管 富永 友嘉利様(中央左) 主席 増渕 顕之様(中央) 室長 釘本 健太郎様(中央右) 主管 黒崎 孝典様(右端)

キヤノンマーケティングジャパン株式会社は、お客様の近くで販売・サービスを行える体制を確立するために、キヤノン株式会社より独立し、1968年に設立されました。キヤノン製品および関連ソリューションの国内マーケティングを担う同社は、個人向けのカメラ、プリンターからドキュメント関連・映像ソリューションなどの法人向けのITソリューションを提供し、社会課題の解決に日々、積極的に取り組まれています。

同社は、2021年のキャリアデザイン支援室の立ち上げ以降、様々な施策の展開により着実な成果を挙げられ、昨年にはグッドキャリア企業アワード2024大賞を受賞されました。
今回は、社員のキャリア自律支援に取り組むキャリアデザイン支援室の5名の方にお話をお伺いしました。

若手社員の定着への危機感からキャリアデザイン支援室の設置を行う

− 2021年にキャリアデザイン支援室を設立されることになった背景についてお伺いさせてください。

まずは、人事部門が当時行っていた退職者の退職理由を遡って分析することからスタートしました。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

当社は、リーマンショック以前から新卒一括採用を中心に行っており、リーマンショック後の2010年~2015年は、新卒採用を抑制しましたが、2016年より新卒採用を徐々に増やしていきました。その後、2019年~2020年にかけて入社3年未満の早期離職が増えたことをきっかけに、若手社員の定着に向けた取り組みの必要性があると考えました。

施策としては人事制度の見直しや働く環境の改善、また賃上げなど「外発的な働きがいの向上」という手段もありますが、社員の「内発的な働きがいの向上」という観点からキャリアコンサルティング手法が、若手の早期離職対策に有効ではないかと考え、現場の社員の目線を重視し、あえて人事業務未経験の管理職社員2名を専任し、退職ヒアリングの分析からスタートしました。

− 新設されたキャリアデザイン支援室では、どこから手を付けられたのでしょうか。

人事として経験や知識がない中で、まずは、総務省や厚生労働省や他機関の退職理由を整理し、その上で当社オリジナルの「退職理由分類」を作成しました。退職理由は大きく分けると会社・個人に分けられ、個人事情ではなく仕事・職場・制度といった会社が原因となる退職を「不幸な退職」として位置づけました。そして、それをなくすことを目指していくことにしました。退職ヒアリングやキャリア面談から得られたデータを蓄積することで傾向を分析、その後の施策に活用しています。

− 具体的に行った取り組みについて教えていただけますか。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

退職ヒアリングやキャリア面談を行い、得られた社員の声を元に、先行して2年次と5年次のキャリア研修を開発・実施しました。その後、研修対象層を細分化して、課題や目的に合わせて、各研修を開発しています。

並行して、目標管理面接とは別に各組織内で年1回実施する「上司と部下とのキャリア面談」や、キャリアデザイン支援室による常設型のキャリア相談、異動・復職・昇進など転機に合わせたイベント後面談を行っています。

単発的な研修実施だけではなく、年代別セミナーやキャリア面談などを通じて、様々な場面で社員と接点を持つことで、キャリアを振り返ったり、考えたりする機会を提供し、不幸な退職を防止するだけではなく、社員のキャリア自律を支援しています。

それらを通じて拾い上げた社員の声をまとめ、分析することで、人事制度に反映させたり、組織や経営への提言により職場環境の改善に貢献したり、というサイクルが生まれています。これら一連の流れをセルフ・キャリアドックの運営体制として取り入れています。

− 様々な施策を行う中で、印象的なエピソードがあれば教えてください。

例えば、年1回の「上司と部下とのキャリア面談」ですが、運用当初は、上司側からは、キャリアについて部下と何を話せば良いのか分からない、という相談もありましたが、私達からは「とにかく部下の話を聴くことに徹してください」とアドバイスしたところ、「普段のコミュニケーションでは聞けていなかった、部下の本音(価値観やキャリア志向など)を知ることが出来た」などの声を得ることができました。

一方、部下側からは、上司にどこまでキャリアについて話をしてよいのか分からない、という相談をいただき、上司との面談に向けた事前面談を行ったところ、自身のキャリアの方向性が明確になり、当日の上司との面談の中では、自身の話を聴いてくれて、「上司との関係性が深まった、距離が近くなった」という声を得ることができ、信頼関係の構築に寄与出来ているのではないかと思います。

3年間、毎年実施してきた中で、キャリアの方向感を考えるところから、自己理解を経てキャリアビジョン(ありたい姿)を描き、昨年、行動計画・アクションプランを作成するところまで達することができました。開始当初から形にすることを目的にせず、時間を掛けて取り組んだことが良かったと思います。

私達としては、年1回のキャリア面談を通じてキャリアについて考えるのではなく、日頃のコミュニケーションの中で、上司と部下の間でキャリアについてオープンに相談できる関係性を目指してもらいたいと考えています。

それ以外ですと、中途入社者、育児休業からの復職者や海外帰任者など、大きな環境変化(転機=イベント)があった方に対して、イベント後面談として、「新しい職場に馴染めていますか。居場所を確保していますか」と、声掛けする面談を実施しています。

基本的には、受け入れ部門の社員の方々がフォローしているので問題ないのですが、イベント後面談という形で、同じ会社の社員でありながら、組織的には第三者の立場にあるキャリアコンサルタントが、社員の方と接点を持つことが有効なのでは、と考えています。

グッドキャリア企業アワード2024大賞を受賞

− これらの取り組みが、今回グッドキャリア企業アワード2024大賞に繋がったと思いますが、このような賞に応募されたきっかけについて教えてください。

キャリアデザイン支援室を立ち上げてから3年間、さまざまな施策を整えてきました。ひとつの区切りとして、これまでの私達の活動が外部からどのように評価されるのか確認してみたいという想いからコンテストのようなものにも応募してみようと考えました。また、評価いただき受賞できた場合には、社員と共有することで、キャリア支援の取り組みがより一層認知されるとも考えました。

表彰事業はいくつかありますが、「グッドキャリア企業アワード」は厚生労働省主催で、その審査もキャリア支援に精通された方々により行われています。キャリア支援の分野において、もっとも歴史と権威のある賞だと思い、同賞に応募しました。

申請準備は正直、大変でした。応募を決めて申請するまでに、社内ですが「合宿」と称して皆で会議室に終日籠り、どのような内容にしていくのか、どう表わすのか何度も話し合いました。業務と並行しての作業でしたので、メンバー全員大変だったと思います。

ただ、申請資料を作成していく過程で、「なぜ、キャリア支援に取り組むのか?」という根本的なことを改めて考える機会を得たり、今まで実施してきたキャリア支援の沿革を振り返ることで、「こういうことを会社として行ってきたのか」というメンバーにとっては、どのような背景で、どんな想いでキャリア支援施策を立ち上げてきたのか理解が深まったりと、チームとしての一体感を高めることができました。

− 今回受賞にあたり、評価されたポイントがあれば教えていただけますか。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

同賞をいただいたポイントは、「退職理由を分析・把握した課題をもとに社内キャリアコンサルタントによるキャリア面談、年代別セミナーなどのキャリア支援施策を導入して、従業員のリテンションに貢献した」ことです。

一般的には人事部門等のメンバーが兼務する形でキャリア支援を行っているケースが多いと思いますが、当社は専任者により構成された組織が、セルフ・キャリアドック運営体制を構築し、世代別セミナーなど点ではなく線での取り組みを進めてきました。さらに「上司と部下とのキャリア面談」など、すべての職場で社員が主体的にキャリアを考える、言わば面での取り組みまで行ってきたことが評価されたのではないかと思っています。

− パソナと一緒に取り組んでいらっしゃる施策について教えていただけますでしょうか。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

パソナさんとは、若手の離職が課題に感じていた2020年頃から相談をしており、キャリアデザイン支援室立ち上げ時のメンバーが、パソナさんの「キャリアコンサルタント養成講習」を受講した時点よりお付き合いがスタートしています。当社では、当時「キャリア」や「キャリア自律」という言葉が公式に発信されることもなく、定義もありませんでした。そこで、パソナさんにオリジナルの動画「キャリアデザイン入門 ~一人ひとりのキャリア自律をめざして~」を作成いただき、全社員約4,500名に視聴してもらうところからはじめました。

その後、2021年10月頃から「管理職」と「24歳(2年次)」のキャリア研修をパソナさんと一緒に作り上げ、その後は、毎年「新任ライン管理職研修」「2年次研修キャリアデザインセミナーⅠ」として、講師も含めてお願いしています。

パソナさんでは、様々な企業の研修を実施されてきたノウハウの蓄積があり、例えば、2年次研修キャリアデザインセミナーⅠでは、若手の主体性向上を促進するためのプログラムを作っていただきましたし、新任ライン管理職研修では、キャリア支援の基本と、管理職としての部下へのマネジメントに関するノウハウを提供いただきました。

各々の研修を作りこんでいく過程で、適宜アドバイスや、新しい知見や知識を提供していただいており、非常に有難く思っております。

− 今後、パソナに期待することがあれば、教えてください。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様様

若手社員の定着だけではなく、さらに、全社員のエンゲージメント向上を促進したく、パソナさんと一緒に議論・アイデア出しが出来ればと考えています。研修などを通じて感じた気づき・課題などがあれば、ぜひご指摘いただき、双方向の観点で企画改善していければと思います。

− 今後、御社の展開・取り組みがあれば教えてください。

様々な施策を行ってきていますが、課題や取り組みたいことはまだまだあると感じています。
私達キャリアデザイン支援室は、「社員一人ひとりが主体的に業務に取り組むことによる働きがいの向上と、自律した社員により活性化された組織風土の醸成」を目指して、その下支えをするキャリア支援体制をさらに充実させていきたいと思っています。

【セミナー動画】キヤノンマーケティングジャパンに学ぶキャリアデザイン支援

キヤノンマーケティングジャパン様の若手社員定着に関する豊富な取り組みを、現代の学生キャリア教育の豊富な知識とご経験をもつ株式会社ライフキャリア総研の城氏による視点から紐解き、課題解決のヒントを提供したセミナーです。

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【セミナー動画】キヤノンマーケティングジャパンに学ぶキャリアデザイン支援

人的資本経営時代におけるキャリア支援 パソナのセルフ・キャリアドックサポートサービス

パソナのセルフ・キャリアドック導入支援サービスは、コストパフォーマンスを最適化した人的資本経営時代のキャリアのアップデートを実現します。各社の課題に沿ってフルカスタマイズで行う研修の具体的な事例や効果、セルフ・キャリアドック導入の成功事例も交えてご紹介します。

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社員のキャリア自律を促し組織を強くする パソナのキャリア自律研修

パソナからのコメント

キャリアアセット事業本部 組織人事コンサルタント 出射 詩予
キャリアアセット事業本部 ヒューマンキャピタル事業部
ライフキャリアクリエイトチーム
組織人事コンサルタント
出射 詩予

キヤノンマーケティングジャパン様の取り組みは、キャリアコンサルタント養成講習を受け、国家試験に合格したメンバーが、専門家集団としてキャリア形成支援室を立ち上げるところからスタートされました。キャリアコンサルタントの専門性は「聴く」ことから始まります。この「聴く」=「傾聴」は、単なるアンケートやヒアリングとは異なります。「社員の内発的な動機形成による施策」に掲げられた通り、社員本人が気づいていないような個別の問題や、背景にある組織全体の共通課題を、その内面から丁寧に深掘りし、言語化して浮き彫りにしていきます。

特に若手社員を中心とした個別面談には多くの時間とエネルギーを用いられたと思いますが、こうして得られた会社独自の分析や課題認識が、若手社員への効果的な取り組みにつながり、上司・部下のコミュニケーションにかかわる研修コンセプトを生み出しました。この先も、全世代のキャリア自律へと波及し新たな取り組みや成功事例を生み出していかれるものと思います。人的資本経営の時代、働く人の心・内面を丁寧に捉えることからスタートされたこの事例は、セルフ・キャリアドックに取組む多くの企業様の参考になるものと思います。

企業プロフィール

1968年に設立し、キヤノン製品と関連ソリューションの国内向け商品企画、広報・宣伝活動、コンサルティング、営業・販売、アフターサービスなど幅広い活動を展開しています。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社様

会社名
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
所在地
東京都港区港南2-16-6
創業
1968年
代表者
足立 正親
社員数
4,593人(連結18,326人)※2025年1月末時点

※記事の内容については掲載時点のものとなりますので予めご了承ください。

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