SAP ABAPプログラミング初心者がABAP資格を取得するまで

皆さんは、海外での勤務を経験されたことがありますか? 私は韓国人で去年から来日し、現在は日本の企業に勤務しています。

来日する前は、単純に日本語を活かしてバックエンド関係の技術を活用した仕事に就きたいという考えを持っていました。しかし、新入社員研修を受けてSAP関連の部署に配属されてからはSAPに興味を持つようになりました。

最初はSAPについて全く知らず、どのような方法で学習を始めればいいのか悩んでいました。そして、SAPアドオン開発に用いられるABAP言語も今まで学んできたPython, Cのようなプログラミング言語とは違う形をしているため学習するのは簡単ではありませんでした。しかし、学習すれば学習するほど興味が湧いてきてもっと学習してみたいと思いました。

外国人が日本に来て0からSAPの仕事に携わってABAPプログラミングを学習するというのはあまり例のないことかもしれません。本記事では、私がABAPを勉強するために努力したことから、ABAP資格を取得するまでの過程を紹介したいと思います。

ABAPの基礎知識を学習する

ABAPを書けるようになるためには、ABAPの基礎知識を勉強することが大事だと思い、ABAPに関連する基礎知識の資料を探して勉強するつもりでした。

しかし、学習に適したABAPの資料が見つからなかったため、私が以前加入していた韓国のSAPコミュニティに載せられているABAP基礎知識を利用して学習を行いました。

コミュニティに載せられていた資料はデータタイプ、用語定義のようなABAP基礎知識を勉強するものとしては充分でしたが、コードを書くプログラミングのような応用に関する資料は無かったため、他の資料を参考にする必要がありました。

そこで、コミュニティのあるユーザにABAPの基礎から応用までの内容が入っている韓国の書籍を推薦して頂きました。書籍の題目は「Easy ABAP 2.0(改訂版) ― キムソンジュン(著)」で、韓国のSAPコミュニティ上では有名な書籍として知られています。この書籍は1200ページもあり、現在でも学習を続けています。

「Easy ABAP 2.0(改訂版) ― キムソンジュン(著)」

ABAPプログラミングを実践してみた

ABAPに関する基礎知識を勉強してからSAP GUIを活用し、実装を通してさらに理解を高めました。私の場合は、ローカルでVirtual Boxという仮想マシンを使用し、ソフトウェアopenSUSE64を利用してABAP開発環境を構築しました。

開発環境を構築する前にSAP社から提供しているABAP デベロッパーのトライアルバージョンをダウンロードする必要があります。ダウンロードしたソフトウェアを仮想環境に設置し、デーモン起動、SAPを起動するユーザ設定のような諸々の作業を行いSAP GUIに繋げるSAP環境を構築しました。

仮想環境でSAP ABAPソフトウェア起動

仮想環境でSAP ABAPを起動した後は、SAP GUIにてのローカルサーバを設定しました。トライアルバージョンの説明書に書いてあるデベロッパーユーザでログインするとSAP ABAPトライアル開発環境に接続することができます。

グラフィカル ユーザー インターフェイス が含まれている画像

自動的に生成された説明

SAP ABAP トライアル開発環境

そして、開発を行うためには、SAP ABAP開発者用のライセンスキーを発行する必要があるので、SAPライセンスサイトでライセンスを発行することが必須です。有効期限は3か月で、期日を過ぎると接続できないので、期限が切れるまでに改めて再発行しなければなりません。

SAP ABAP プログラミング練習

ライセンスまで発行したら、ABAP開発環境構築は完成です。

今まで学んできたABAPの基礎知識を活かしてこの場で実装してみました。ABAPはWrite構文が基本なので、Write構文を作成することから始めて、変数を指定して出力し、パラメータやデータタイプ設定まで実装してABAPプログラミングの基礎を身に付けていきました。

また、書籍で書いてある実装も直接やってみたり、SAPコミュニティに載せられているABAP関連の例題を解いてみたりなどして、学習を続けていきました。

インターネットや書籍に書いてある知識を頭の中で理解して勉強するのも楽しかったのですが、学んだことを直接やってみることが非常に楽しくて、理解度が高まりました。

そして、最初にABAPでコードを書く時に頭の中では理解できていても手に慣れていないため、コードを書く速度も遅く、例題の1つに1日中掛かりました。しかし、実装を繰り返すことにより、ABAPプログラミングの仕組みに徐々に慣れていきました。今はデモのテーブルを呼び出す例題に挑戦しています。

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基本ガイドブックのご紹介

SAP ABAP Certification(C_TAW12_750)の取得に向けて

単純にSAP ABAPを勉強したいという考えも持っていましたが、勉強する上で今まで学習してきたことが正しいかどうか証明したいという考えもありました。そこで、SAP ABAP資格にも挑戦したいと考えるようになりました。

試験を受ける前に、資格勉強を行いたいと思いましたが、資格試験の範囲や例題が予想できないため資格勉強の方向や計画を設定するのに苦労しました。

ABAP資格(C_TAW12_750)は他の資格より情報が少なく、コミュニティでも資格を保有している人があまりいなかったので、資格に関する情報を得られなかったのです。

結局、私が考えたのはABAP書籍の全体を勉強してみようということでした。しかし、書籍は約1200ページと膨大な量のため、全部の内容を完璧に覚えるのは無理がありました。

そこで、1200ページの全体に目を通してみて、自分からみて肝心なところであると思った内容を集中的に勉強して覚えました。例えば、ABAPデータタイプやイベント処理の順序、ビューとテーブルの特徴や構造などは必ず一問くらいは出るだろうと思い、特に注力してキーワードに関連する詳細な部分まで勉強しました。

私が行った勉強方法が必ずしも正解ではないと感じていました。試験を受験する際に一発で合格できなくてもいいので、もう一度試験を受けるつもりで問題を解いていきました。リラックスして試験に臨んだ結果、75%の正解率でABAP試験に合格することができました。

SAP ABAP Certification(C_TAW12_750) バッジ

まとめ

ここまでABAPプログラミング初心者の韓国人がSAP ABAP勉強方法から資格取得までの過程を紹介させて頂きました。勉強から資格取得するまで掛かった日数は約1ヶ月くらいです。

ABAPの基礎を勉強し、実装、資格取得まで想定していた予想時間よりは長引いてしまいました。その分ABAPに関する理解を深めることができてやりがいのある1ヶ月でした。

まだまだ勉強しなければならないこともたくさんあるので、現在も書籍やコミュニティを通してABAPを勉強しています。

SAP関連の部署に配属されてから1年未満で、経験も少ないためできる仕事は限られています。今後も経験と学習を続けて、ABAPに関連するプロジェクトに学習の成果を活かしたいと思います。

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