SAP MM 購買業務フローを解説 業務フローへの2つの対応策も提示

SAPは、業務の領域で分けられたモジュールと呼ばれる機能群で構成されています。代表的なものに、SD(販売管理)やMM(在庫/購買管理)、FI(財務会計)、CO(管理会計)などがあります。SAPの導入はモジュール単位で行うことができますが、より正確に言うと、モジュール毎にインストールするわけではなく、導入するモジュールのみを使用するようなイメージです。そのなかでもMMを導入している企業も多いかと思います。

本記事では、MMにおける購買業務のフローについて解説していきます。

SAP MMモジュールとは?

最初にMMモジュールについて解説します。

SAPの代表的なユーザインターフェースであるGUIにログインしてMMの項目を確認すると、日本語では「在庫/購買管理」と表示されています(図1)。これはつまり、商品を調達する「購買」機能と、調達した商品の管理をする「在庫」機能を合わせてMMモジュールと呼んでいることを表しています。

図1 GUIの設定画面

購買管理と在庫管理、それぞれに業務フローはありますが、今回は購買管理における業務フローを、SAPの機能を交えて解説します。

購買業務のプロセスをフロー図で表すと、以下のような流れになります。

なお、購買依頼のあとに、見積依頼や購買契約のプロセスが入る場合もあります。それぞれ、サプライヤーへ価格や納期の見積依頼をするプロセス、サプライヤーとの長期的な購買契約を交わすプロセスとなりますが、今回は割愛します。

購買業務プロセス : 購買依頼

商品を調達したい、と各部署から購買担当部署へ依頼するプロセスです。この時点ではサプライヤーが決定されるわけではなく、あくまでもどの商品がいつまでにどのくらい必要か、が必要情報となります。

ただ、SAPでは購買依頼は必須のプロセスではなく、つぎに説明する購買発注から始まる場合もあります。

購買業務プロセス : 購買発注

購買担当部署が実際にサプライヤーに向けて購買発注するプロセスです。購買依頼がある場合はその情報を基に作成します。

このプロセスによりサプライヤーが決定するので、価格や納期も決まります。また、その他の詳細条件もこの時点で決定されます。以下、いくつか重要な決定項目を説明していきます。

・発注タイプ

購買発注の種類を識別します。

たとえば、商品ではなくサービスを購入したり、購入ではなくリースで調達したり、と購買発注には様々なものがあります。どのタイプの購買なのかをこの項目に設定します。

発注タイプにより、伝票番号の採番体系も変わります。

・勘定設定カテゴリ

どの補助勘定で会計処理するかを指定します。

たとえば、購入したものが資産ではなく費用として計上しなければならない場合があります。勘定として何を使うかをこの項目に設定します。

ちなみに、購買依頼と購買発注にはそれぞれ承認機能があります。各部署や購買担当部署の上長が購買依頼伝票や購買発注伝票を確認し、承認することでつぎのプロセスに進む、といった制御が可能となります。

SAP S/4HANA導入支援サービス
基本ガイドブックのご紹介

購買業務プロセス : 入庫検収

サプライヤーから発注した商品が届き、問題がなければ入庫し、在庫として計上するプロセスです。

入庫することで在庫の数量も増えます。一方で、在庫として計上したくない場合はいったん入庫保留することもできます。これは在庫管理の機能にも関わってきますが、SAPでは在庫に対するステータスの制御を移動タイプと呼ばれるものでしています。

なお、会計の話になりますが、このプロセスでは在庫の相手勘定として 入庫請求仮勘定が設定されます。本来であれば、在庫計上の相手勘定は債務となることが正しいのですが、SAPではつぎのプロセスである請求書照合ではじめて債務が計上されます。請求書照合を行うまでの間の仮の勘定となるのが、入庫請求仮勘定です。

購買業務プロセス : 請求書照合

サプライヤーから届いた請求書を照合するプロセスです。

金額や内容に問題がなければ、先述のとおり、サプライヤーへの支払義務、すなわち債務が計上されます(入庫請求仮勘定は消込されます)。債務が計上されたら、つぎのプロセスとして支払処理の実施がありますが、以降はFIモジュールの領域となります。

また、購買発注時の設定により、入庫されると同時に請求書照合を自動で行うこともできます。これをERS(入庫請求自動決済)と呼びます。

まとめ

「SAP MM 購買業務フローを解説 業務フローへの2つの対応策も提示」と題しまして、本記事では、SAP MMの購買管理における業務フローについて解説しました。ここまでのような購買業務フローを採用している企業も多いのではないでしょうか。

MMに限らない話ですが、もしSAP標準で想定されているフローとは異なった業務運営をしている企業がSAPを導入する場合、対応策としてはふたつの方法があると言われています。

ひとつは、企業の業務フローをSAPの標準機能に合わせることです。企業は現在の業務のやり方を変更する必要がありますが、SAPで用意されている機能をそのまま使用できるということは大きなメリットです。

対応策のふたつ目は、企業の業務フローはそのままで、SAPの機能をアドオン(追加開発)やモディファイ(標準機能の変更)することです。企業は現在の業務のやり方を変える必要はありませんが、アドオンやモディファイに対するコストがかかります。とくに、SAPはモジュール単体で独立しているわけでなく、相互につながっているため、他モジュールに対する影響も考えて慎重に行わなければいけません。

いずれにせよSAPを導入する際には、現在の業務フローや問題点を洗い出し、そこから何をしたいのか、どう変えていきたいのか等の要件を定義していくことが大切になります。

パソナではSAP S4/HANAマイグレーションを検討する際に欠かせない、考慮すべきポイントをまとめた入門資料「SAP S4/HANAマイグレーションで知っておくべきこと、今からやれることとは?」をご用意しました。本資料は、SAP S4/HANAマイグレーションへ進む方へ必見の資料です。ぜひダウンロードいただき、ご覧ください。

オフショア ラボ型開発事例集
SAP FioriとBTPが理解できる基本ガイドブック