SAP S/4HANA テスト自動化の留意点に注意すれば恩恵が待っている

SAP S/4HANAの新規導入やECC6.0のサポート期限が迫る中、SAP S/4HANAへのマイグレーションを検討する際、テストの効率化を図るためテスト自動化を考えている企業様も多いと思います。今回は弊社でのテスト自動化導入の経験から、テスト自動化を導入する際に企業様にて準備しておいた方が良いことや、テスト自動化導入時の留意点についてまとめてみました。SAP S/4HANAのテスト自動化の留意点に注意すれば、その先に恩恵が待っているのです。

■テスト自動化とは?概要から知ってみよう

テスト自動化とは何を自動化するかというと、テストでの「人の手による画面操作」と「テスト結果(エビデンス)の作成」を自動化します。

タイムライン

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出典:https://www.pasona.co.jp/clients/service/SAP/service/automation 

テスト自動化の導入の手順としてまず、自動化したい業務の選定をし、業務シナリオ(テストシナリオ)の流れや各業務(システム画面)の操作方法などを確認します。そのあと、確認した画面の操作(カーソルの動き、入力データ内容など)をテスト自動化ツールにスクリプトで実装し、シナリオの流れに即した画面の動きをするためバッチファイルを作成します。

そして、作成したバッチファイルをキックすることで自動で業務シナリオ通りの画面操作が行われ、テストのエビデンスが作成されます。ここで構築したテスト自動化のスクリプトは業務が変わらない限り、再利用が可能となります。

ダイアグラム

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■テスト自動化導入前に準備するもの

テスト自動化を導入する上で必要なものは、「シナリオ」、「データ」、「環境」です。「シナリオ」はシステム導入した際に作成された業務フロー図があれば、一般的には事足ります。しかし最新の状態に更新されていないこともあるかと思いますので、業務フロー図を最新の状態に更新してください。もし業務フロー図がない場合は、ヒアリング等でどういった業務の流れでテストするか確認します。

次に「データ」ですが、シナリオに沿ったデータの作成をお願いします。同じシナリオの中でいくつかのパターンでのテストをしたい場合は、パターンごとにデータの作成が必要になります。

最後に「環境」です。環境自体は検証環境などで問題ありませんが、実際にテストを実施する環境のアプリケーション(画面)のバージョンは、テスト自動化のスクリプトを実装する際に基にするアプリケーションと同じバージョンにする必要があります。

既にEPRが導入されている場合はあまり心配ないですが、開発中の場合、例えばバージョン1.0の画面レイアウトを基にテスト自動化を実装したが、実際にテストを実行する環境のアプリのバージョンが1.1で画面の項目が異なるためテスト実行時にエラーになるケースがあります。よって、開発中の場合は開発が完了し、仕様がFixしたバージョンでテスト自動化を実装するのが理想となります。

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■テスト自動化導入時の留意点

テスト自動化導入時の留意点には大きく3つのポイントがあります。この留意点を事前に把握するかしないかで、テスト自動化の結果が大きく変わってきます。

【テスト自動化導入時 3つの留意点】

  • テストシナリオ、テストデータは人の手で作成

テスト自動化は画面操作は自動化できますが、テストシナリオやテストデータの作成は人の手で作成します。

  • 大量データを扱うテストは注意が必要

テスト自動化は画面操作を自動化するものなので、大量のデータを扱うテストの場合は時間が掛かります。大量データでのテストが必要な場合は余裕をもって計画したほうがよいです。

  • 開発中の場合、テスト自動化は画面の仕様が固まってから実装する。

開発中の場合、テスト自動化で基にした画面のバージョンが変わった場合、テスト自動化のスクリプトも修正が必要になります。そのため手戻りが発生しますので出来るだけ仕様の固まった状態でのテスト自動化が望ましいです。

■SAP S/4HANAのテスト自動化による恩恵

色々と大変そうなテスト自動化ですが、SAP S/4HANAでのテスト自動化の恩恵とは内でしょうか?テスト自動化を導入することによる最大のメリットは、テスト自動化スクリプトを再利用できることです。再利用できることにより、3つの恩恵を受けることが出来ます。

SAP S/4HANA テスト自動化の3つの恩恵

  • テスト工数の削減

テスト自動化による恩恵として、まず挙げられるのがテスト要員の工数削減です。一度作成したテスト自動化スクリプトを再利用することにより、例えば、SAP S/4HANAへのマイグレーションまでにECC6.0のEhP適用対応やクラウドに一旦リフトなどECC6.0の延命措置をするケースもあるかと思います。

こういったS/4HANAへのマイグレーションまでにいくつかプロセスを経る際、そのたびに同じようなテスト(動作確認)をするのは無駄に感じられると思います。そこで一度作成したテスト自動化スクリプトを再利用することで、テスト工数も大きく削減できますし、テストに掛かる費用も大幅に抑えられます。もちろんS/4HANA導入後の改修後の動作確認にも使うことが出来ます。更に、地味に時間が掛かるエビデンスの作成もスクリーンショットの貼り付けも含めて自動で作成しますので、大幅な工数削減が期待できます。

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  • テスト要員が不要

テストを実施する要員は、システムテストなどユーザ企業で行う場合、普段、実際に現場で業務を行っている方々が兼任で駆り出されるケースが多いかと思います。そうなりますと、現場が疎かになってしまいます。しかしテスト自動化を導入することにより、人によるオペレーションは不要になりますので、普段現場で業務をされている方にオペレーションしてもらう必要がなくなります。よって現場の業務とテストを並行して行うことが出来ることになります。

  • 属人化しやすい業務ノウハウを共有できる

テスト自動化により、部署異動、退職など人の出入りで失う可能性のある業務ノウハウ(画面操作など)を、人に依存しない形で共有することが出来ます。画面手順書などドキュメントを作成して共有するやり方もあります。しかし画面の修正などでドキュメントの反映が漏れたりして、いつの間にか陳腐化してしまうケースがあります。画面修正の度にテスト自動化も修正することになりますので、基本的に画面とテスト自動化のバージョンは同じに保つことが出来ます。

■まとめ

「SAP S/4HANA テスト自動化の留意点に注意すれば恩恵が待っている」と題しまして、テスト自動化の留意点と恩恵について、簡単にまとめました。

テストシナリオやテストデータの作成はこれまで同様人の手で作成する必要がありますが、1度テスト自動化を導入することにより、継続的にテスト工数を削減することが出来るようになります。

もしテスト自動化にご興味持たれましたが、下記の記事に詳細を載せておりますので、ご参考になさってください。

https://www.pasona.co.jp/clients/service/SAP/service/automation

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