SAP Fiori開発の初心者がSAP Business Application Studioを利用して開発の基礎を勉強してみた

私は他のプログラミング言語を利用して開発を行った経験はありますが、SAP Cloud Platformの環境で開発を行った経験はありませんでした。いわばSAP Fiori 開発では初心者です。しかし、SAP資格取得を目標に参考にした書籍を読み、簡単なアプリケーション開発を実装することによって、全般的なSAP開発の基礎知識を身に着けることができました。本記事では私が行ったSAP BTP環境での開発勉強方法を紹介したいと思います。SAP開発入門者の方々にも参考になれば幸いです。

SAP Cloud Platform Certificate GuideでSAP開発の基礎を調べた

SAP資格の勉強を行う際、SAP Pressを利用して「SAP Cloud Platform Certificate Guide」という書籍を参考にしました。

この書籍ではSAP Cloud Platformに関する概要やSAP Cloud Platformの機能を中心として記されています。SAP Cloud Platform環境でユーザがアプリケーションの開発を行ってからCloud Foundryにデプロイ*する仕組みについて詳しく記載されていました。

そして、アプリケーション開発の方法論と特性(例:コードベース、依存関係、ログなど)についても詳しく説明されていたので、開発の基礎や理論を勉強することができました。自分の手を動かしてプログラミングするためには、開発の仕組みや流れを熟知する必要がありますが、この書籍を通じて一連の開発手順を勉強することができました。

さらに、SAPでの開発は「MTA」というモデルの基に成り立っているというところが興味深かったです。MTAの定義や構造を理解すると開発作業がスムーズに進められると思い、MTAモデルに関して集中的に学習しました。

*  デプロイ : ネットワークで提供されるアプリケーション・ウェブサービスを実際の運用環境で利用できるようにさせること(=デプロイメント)

SAP開発の基となるテクノロジー「MTA」とは?

「MTA」とはMulti-Target Applicationの略語で、同じサイクルを共有する様々なテクノロジーで作成された複数のパーツで構成されるアプリケーションのことを指しています。

 つまり、MTAは複数のソフトウェアモジュールで構成された異なる技術で作成されますが、同じ開発ライフサイクルを共有します。

MTAのモデルはYAML形式のファイルとして保存されて、MTAで作成されたアプリケーションはSAP Cloudにデプロイすることにより、SAP固有のコンテンツになります。

 

MTAの構造

最初に開発者は開発・構築ツールを利用して開発を行い、MTAの記述子を作成します。

その後、モジュールや記述子を合わせてアーカイブし、一つのファイルとしてまとめる作業を行います。

記述子にはモジュールだけではなく、リソース、プロパティ、エンティティ、エンティティ間の依存関係が格納されています。そして、記述子はデプロイ記述子の生成に使用されて、必要とするデプロイデータが定義されています。

開発者がまとめたファイルを管理者に送信したら、管理者が最終的に確認し、必要に応じてMTA拡張記述子*を追加します。

最後に、エンドユーザが利用できるようMTA Deployerを通じてターゲットプラットフォームにてMTA拡張記述子とアーカイブをデプロイして、リリースします。

*  拡張記述子 : デプロイ記述子を補完するデータが含まれているYAMLファイル

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基本ガイドブックのご紹介

SAP Business Application Studioで開発してみた

SAP開発の概要と理論、MTAの定義と構造を学習してから更なる理解を深めたいと思い、Business Application Studioを活用して簡単なアプリケーションを開発してみました。

最初は「SAP Cloud Platform Certification Guide」書籍に載せられていた通り、SAP Cloud Platformでの開発を試みました。しかし2022年10月現在ではSAP Cloud Platformのブランド名は廃止しており、その後継であるSAP BTPコックピットを活用して開発を開始しました。

SAP BTP コックピットトライアルバージョンにアカウントを登録し、ログインすると、無料で簡単なビジネスアプリケーションスタジオにて開発用のスペースが作成できます。

作成できるアプリケーションの種類にはSAP Fiori、Full-Stack クラウドアプリケーション、SAP HANA ネイティブアプリケーション、SAPモバイルアプリケーションなどがありますが、今回はSAP Fioriアプリケーションを作成してみました。

Fioriアプリケーションの作成手順はSAP Tutorial Navigatorにあるので詳しくはこちらのURLをご参照下さい。(https://developers.sap.com/tutorials/appstudio-fioriapps-create.html#top)

開発用のスペースを構築し、アプリケーションを作成することは難しくありませんが、アプリケーション作成を実行するためには一つの注意点があります。

それは、SAP BTPとSAPゲートウェイデモサーバー間を繋いでくれるES5を設定することです。

                           ES5 設定

SAPが提供しているSAPゲートウェイデモシステムであるES5を設定すると、ODataサービス*を利用できるようになります。ODataサービスはSAPでアプリケーションを作成するにあたり必要なプロトコルなので、必ず設定する必要があります。

*  ODataサービス : HTTPを使ってサーバとブラウザでデータをやりとりするためのプロトコル

ES5を設定し、新規のマルチターゲットアプリケーションプロジェクトを生成してからDevスペースにてアプリを起動すると、下記の画像のようにアプリケーションを稼働させる準備が整えられます。

ビジネスアプリケーションスタジオ開発環境整備

アプリケーションを作成し、リリースする準備が完了したら、自分が作成しているアプリケーションUIのプレビューすることによって、全体的な模様が確認できます。

UIプレビュー画面

開発環境を整えてから、SAP Fioriアプリケーションを作成してXMLを利用し、簡単な品目リストを作成しましたが、コードを入力して作成することも、GUIでも作成することも可能なので、両方試してみました。下記の画像のように画面を分割することにより、コードを入力しながらプレビューすることもできたので、比較的簡単にプログラミングすることができました。

XMLを利用してアプリケーション作成

下の画像は開発勉強の踏み台として創った品目リストですが、品目だけ書いてあるリストです。ここに止まらず、次回は様々な機能を追加したり、他のアプリケーションを作成したりすることで開発の勉強や実装を行う予定です。

品目リスト作成

まとめ

ここまでSAP開発初心者が行ったSAP開発勉強の手順を紹介させて頂きました。

SAP開発に関して何も知らない状態でしたが、「SAP Cloud Platform Certificate Guide」を通してSAP開発の理論から実装まで学習することにより、SAP開発により一歩近づけることができました。

書籍に書いてある通り、SAP FioriのUIは非常にシンプルで、開発しやすい環境であることを今回の実習で身を持って体験できました。

SAP書籍「SAP Cloud Platform Certificate Guide」を読んでから開発の基盤になるMTAの構造を学習してビジネスアプリケーションスタジオで実習まで実行できれば、SAP Fiori開発の基礎知識はある程度身に着けられたと言えるのではないでしょうか。

ビジネスアプリケーションスタジオではSAPの開発以外にもアプリケーション作成が利用できるので、是非チャレンジしてみて下さい。

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