おすすめ特集・コラム特定健診と特定保健指導は義務なのか?対象や基準、企業の役割まで徹底解説
更新日:2025.07.15
- 健康経営
特定健診・特定保健指導は、生活習慣病の予防や早期発見を目的として毎年実施されている制度です。この取り組みを通じて、個人の健康意識を高めるとともに、よりよい生活習慣への行動変容を促すことが期待されています。
この記事では、特定健診・特定保健指導の実施義務はどこにあるのか、制度の対象や基準、企業に求められる役割とともに詳しく解説します。
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特定健診・特定保健指導とは
特定健診・特定保健指導は、自分自身の健康状態を把握し、生活習慣を見直すきっかけとなる重要な取り組みです。具体的にどのような制度なのか、まずは特定健診・特定保健指導の対象者や目的などの基礎知識を解説します。
特定健診とは
特定健診(正式には「特定健康診査」)は、40歳から74歳までの医療保険加入者を対象とした健診です。メタボリックシンドロームに着目していることから「メタボ健診」とも呼ばれ、生活習慣病のリスクを早期に見つけることを目的としています。定期的に健診を受けることで、自らの健康状態を正しく把握し、糖尿病や高血圧といった生活習慣病リスクの予防につなげることができます。
特定保健指導とは
特定保健指導は、特定健診の結果から生活習慣病のリスクが高いと判定された人に対し、保健師や管理栄養士などの専門職がサポートを行う制度です。健診結果をもとに、食生活、飲酒、運動習慣、喫煙などの生活習慣を総合的に見直し、現在の健康状態に応じた適切な支援が提供されます。これにより、生活習慣病の予防や健康状態の改善に向けて、自発的かつ継続的な行動を促すことにつながります。
特定健診・特定保健指導の目的とは
特定健診・特定保健指導は、2008年度から導入された制度です。「病気になってから治療する」のではなく「病気になるのを防ぐ」ことに重点が置かれており、生活習慣病の予防・改善や医療費の適正化を目的としています。
初期の生活習慣病は自覚症状がない場合も多く、早期にリスクを発見し、生活習慣の改善を図ることが非常に重要となります。また、医療費の増加が社会的な課題となるなか、特定健診・特定保健指導を通じて病気の予防と健康維持を図ることは、医療費の抑制にも寄与すると期待されています。
●特定保健指導対象者の選定基準
特定保健指導の対象者は、健診結果をもとに「内臓脂肪蓄積の程度」と「リスク要因の数」に応じて選定されます。
まず腹囲とBMIで内臓脂肪蓄積のリスクを判定し、健診結果や質問票から追加リスクをカウントします。追加リスクは「①血糖」「②脂質」「③血圧」の3項目で、メタボリックシンドロームの判定項目である①〜③のリスクが1つ以上ある場合のみ「④喫煙歴」を関連リスクとして追加します。
内臓脂肪蓄積の程度とリスク要因のカウント数から、上表のように対象者を選定し「動機付け支援」と「積極的支援」にグループ分けします。
「動機付け支援」「積極的支援」とは
特定保健指導は、健診結果に基づく対象者の健康リスクに応じて「動機付け支援」と「積極的支援」に分けられます。
ここで、「保険者」とは健康保険組合や市区町村など、医療保険制度を運営する団体や機関を指します。また、「被保険者」とは、その保険制度に加入し保険給付をうけることができる個人のことです。
「動機付け支援」は、被保険者に対して、原則1回の面談で行動目標を設定し、3か月後に評価を実施します。保険者の判断により、6か月後に評価を行ったり、3か月後評価の後に独自のフォローアップを設けたりすることもできます。
一方「積極的支援」は、被保険者のうちリスクが高い方を対象に、保険者が3か月以上にわたり定期的な支援を行い、生活習慣の改善に向けた行動の継続を目指します。リスクが高いほど「積極的支援」の対象となりますが、前期高齢者(65歳以上75歳未満)については原則「動機付け支援」に分類されます。
特定健診・特定保健指導は義務なのか
特定健診・特定保健指導は、高齢者医療確保法に基づき、2008年4月より医療保険者の義務として実施されています。
特定健診・特定保健指導は保険者の義務
特定健診・特定保健指導は、医療保険者に実施が義務付けられている制度です。健康保険組合や協会けんぽ、市区町村などの保険者は、対象となる被保険者に対して毎年度、特定健診・特定保健指導を実施する義務があります。
【特定健診の実施義務】
保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、四十歳以上の加入者に対し、特定健康診査を行うものとする。
(高齢者医療確保法第20条より抜粋)
【特定保健指導の実施義務】
保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、特定保健指導を行うものとする。
(高齢者医療確保法第24条より)
○保険者に対する罰則
特定健診・特定保健指導の実施率が著しく低い場合は、厚生労働省からの勧告やペナルティ(財政的措置)の対象となる可能性があります。具体的には、後期高齢者支援金の加算・減算制度において、実施率が一定基準に満たない場合に加算対象となり、保険者の財務負担が増すことになります。
企業(事業主)としては努力義務
前項のとおり、高齢者医療確保法に基づく特定健診・特定保健指導は保険者の義務で行われるものであり、企業(事業主)においては努力義務として対応することになります。
ただし、企業には労働安全衛生法に基づく健康診断・保健指導の実施が義務付けられています。企業が行う健康診断と、特定健診の項目は重複する部分が多いため、実務上は事業主と保険者が連携し、健康診断と特定健診を兼ねるケースもあります。これにより、特定健診の受診率向上や健康管理体制の強化につながることが期待されます。
本人に義務はない
被保険者本人には特定健診・特定保健指導を受ける義務はありません。案内が届いても、健診の受診や指導の参加については任意となります。
特定保健指導の推進が企業にもたらすメリット
特定保健指導は企業の義務ではありませんが、指導を通じて従業員の健康を維持することで以下のようなメリットを享受できます。
従業員の健康意識が高まり、生産性が向上する
従業員が自らの生活習慣を見直すことで心身の健康状態が改善され、仕事に対する集中力やモチベーションが高まり、生産性の向上につながることが期待されます。さらに、体調不良による欠勤や休職のリスクも軽減され、組織全体として安定した稼働が実現しやすくなるというメリットもあります。
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健康を大切にする企業として人材確保にも好影響をもたらす
特定保健指導を含む健康支援への取り組みは、従業員一人ひとりの健康に配慮する企業としての姿勢が示され、従業員の満足度と定着率の向上に寄与します。このような姿勢は求職者にとっても魅力的に映り、採用活動や人材確保の面でも好影響をもたらすことが期待できます。
健康経営優良法人の認定が受けやすくなる
特定健診・特定保健指導の実施率は、健康経営優良法人認定の加点項目となっており、企業の健康経営への取り組みとして高く評価されます。認定を受けることで、企業としての社会的信頼が高まるとともに、融資条件の優遇や公共調達の加点といった実利的なメリットも享受できます。
関連記事:健康経営優良法人のメリット・デメリットとは?認定基準をわかりやすく解説
特定保健指導を効果的に活用するには
企業が特定保健指導を効果的に活用するには、専門職による日常的なサポート体制が不可欠です。具体的な取り組みとして以下の2点が挙げられます。
産業保健師や外部専門家のサポートを活用
特定保健指導や健康経営の推進においては、産業保健師や外部専門家のサポートを活用する方法が有効です。産業保健師の導入により、産業医や人事労務担当者の負担を軽減しながら、従業員の健康維持と生産性向上につなげることができます。
パソナの「産業保健師紹介サービス」は、企業ごとの課題やニーズに合わせて最適な人材を提案し、健康経営の推進を強力にサポートするサービスです。産業保健師による適切な指導・相談対応を通じて、組織全体で病気の早期発見・早期対応が可能となり、従業員が心身ともに健康に働ける環境を整備できます。
関連記事:産業医面談とは?従業員が「意味がない」と感じる理由や実施する目的・メリットを紹介
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オンライン健康相談サービスの導入
特定保健指導を効果的に活かすには、従業員の健康意識を日常的に支える仕組みが必要です。例えば、いつでも気軽に相談できるオンライン健康相談サービスを導入することで、従業員が自身の健康状態を意識しやすくなり、健康課題の早期発見やセルフケア意識の向上・促進につながります。
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まとめ
特定健診・特定保健指導は企業の義務ではありませんが、従業員の健康維持・増進や生活習慣の改善を支援することは、組織全体の生産性向上につながる取り組みです。また、健康経営を推進する企業としての評価も高まり、採用活動や人材定着の面でもよい影響をもたらすことが期待できます。義務かどうかにとらわれず、前向きな姿勢で健康支援に取り組むことが大切です。
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