おすすめ特集・コラム産業医とは?役割や医師との違い・仕事内容について詳しく解説!
更新日:2025.10.03
- 健康経営
従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業にとって重要な課題です。その中心的な役割を担うのが産業医です。
産業医は、職場での健康障害を未然に防ぎ、安全に働ける環境をつくる専門医として、健康診断の事後措置やストレスチェック、職場巡視など幅広い活動を行います。
近年は健康経営が注目される中で、従業員の健康保持・増進に積極的に取り組むことが企業価値の向上にもつながるポイントです。
本記事では、産業医の役割や選任義務、仕事内容を整理し、実務担当者が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
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産業医とは?
企業の健康経営に欠かせない産業医の役割と種類について、理解しておくべき基本ポイントを解説します。
産業医の定義
産業医とは、職場における健康障害の予防と安全に就業できる環境の確保を目的に、事業者へ医学的な助言・意見を行う医師です。
労働安全衛生法に基づき選任され、健康診断結果の評価や就業上の措置の提案などを通じて、従業員の健康を守る体制づくりを支えます。
従業員のプライバシーを守りつつ、会社とも中立的な立場で関わることで、双方にとって安心できる健康管理を実現する専門家です。
関連記事:産業医面談とは?従業員が「意味がない」と感じる理由や実施する目的・メリットを紹介
嘱託産業医と専属産業医の違い
産業医には、月数回訪問して助言を行う非常勤の嘱託産業医と、事業場に常勤して継続的に関与する専属産業医の2種類があります。
従業員50〜999人の事業場では嘱託産業医を選任するのが一般的です。一方で、1,000人以上の大規模事業場や有害業務に500人以上が従事する職場では、専属産業医の配置が法律で義務付けられています。
これはあくまで最低限の基準であり、たとえばメンタル不調者が多い企業や化学物質を扱う製造業などでは、基準を超えて専属産業医を置く、あるいは訪問頻度を増やすことが有効です。
自社の業務リスクや従業員の状況に応じて最適な体制を整えることが、実効性のある健康経営につながります。
内臓脂肪蓄積の程度とリスク要因のカウント数から、上表のように対象者を選定し「動機付け支援」と「積極的支援」にグループ分けします。
「動機付け支援」「積極的支援」とは
特定保健指導は、健診結果に基づく対象者の健康リスクに応じて「動機付け支援」と「積極的支援」に分けられます。
ここで、「保険者」とは健康保険組合や市区町村など、医療保険制度を運営する団体や機関を指します。また、「被保険者」とは、その保険制度に加入し保険給付をうけることができる個人のことです。
「動機付け支援」は、被保険者に対して、原則1回の面談で行動目標を設定し、3か月後に評価を実施します。保険者の判断により、6か月後に評価を行ったり、3か月後評価の後に独自のフォローアップを設けたりすることもできます。
一方「積極的支援」は、被保険者のうちリスクが高い方を対象に、保険者が3か月以上にわたり定期的な支援を行い、生活習慣の改善に向けた行動の継続を目指します。リスクが高いほど「積極的支援」の対象となりますが、前期高齢者(65歳以上75歳未満)については原則「動機付け支援」に分類されます。
産業医と他の職種の違い
産業医の立場を明確に理解するためには、医師や産業保健師との役割分担を把握することが大切です。
医師や産業保健師との違いを解説します。
医師との違い
医師は患者個人の治療を目的としますが、産業医は職場での健康リスクを予防し、仕事と治療の両立を支援します。診断や薬の処方は行わず、従業員が安全に働けるかを中立的に判断する点が産業医の特徴です。
たとえば、復職時に医師が就業可能と診断しても、産業医は業務内容をふまえて「短時間勤務から開始」と具体的な助言を行います。
両者は対立する関係ではなく、連携して従業員の健康を支えるパートナーです。
産業保健師との違い
産業医が医学的判断を行い、復職判定や就業上の措置を助言する一方で、産業保健師は日常的な健康相談や保健指導、教育を担います。
たとえば、産業医が健診結果から部署のリスクを指摘し、産業保健師が改善セミナーを実施するといった連携が可能です。
両者が役割を分担して協力することで、企業は従業員一人ひとりの健康維持から組織全体の健康経営まで、バランスのとれた体制を整えられるでしょう。
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関連記事:産業保健師とは?企業における役割・業務内容・産業医との違いをわかりやすく解説
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産業医の要件
産業医は、医師であることに加えて、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 厚生労働大臣が指定する研修(日本医師会や産業医科大学が実施)を修了していること
- 産業医養成課程を持つ大学(産業医科大学など、厚生労働大臣が指定した大学)で課程を修了し、実習も履修して卒業していること
- 労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格していること
- 大学で労働衛生に関する科目を担当する教授・准教授・常勤講師、またはその経験者であること
企業が産業医を選任する際には、医師免許だけでなく、これらの資格や修了証を確認することが重要です。
企業における産業医の選任義務
企業における産業医の選任義務について、以下の点を解説します。
- 従業員50人以上の事業場で選任義務がある
- 選任しない場合の罰則
- 従業員数50人未満の企業での対応方法
法律で定められている義務であるため、自社が該当するかどうか確認しましょう。
従業員50人以上の事業場で選任義務がある
常時50人以上の従業員が働く事業場では、産業医を選任する義務が発生します。対象の従業員には正社員だけでなく、パートや契約社員、継続勤務する派遣社員も含まれます。
また、選任義務があるかどうかの判断は企業単位ではなく、支店や工場ごとの事業場単位で行う点に注意が必要です。
従業員の人数によって、以下のように選任すべき産業医の人数も定められています。
- 従業員50人以上3000人以下:1名以上選任
- 従業員3001人以上:2名以上選任
従業員数が50人に近づいたら、速やかに候補者を探し、産業医配置の準備を進めましょう。
選任しない場合の罰則
産業医を選任しない場合、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金が科される可能性があります。名義貸しなどの不正も処罰対象です。
違反が発覚すれば、労働基準監督署から是正勧告を受け、従わなければ罰則が適用されます。
さらに、民事訴訟で不利になったり、企業の社会的信用を失ったりするリスクもあります。
産業医の選任は単なる法令対応ではなく、従業員の安全を守り、企業の持続的成長を支える投資と考えることが大切です。
従業員数50人未満の企業での対応方法
従業員50人未満の事業場は選任義務がありませんが、健康管理が不要になるわけではありません。
国は小規模事業場を支援するため地域産業保健センター(さんぽセンター)を設置し、健康診断の結果相談やメンタルヘルス相談を無料で提供しています。
たとえば、長時間労働者の面接指導や健康教育も依頼可能です。
従業員50人未満の小規模な企業でも従業員の健康を守るため、まずは最寄りのさんぽセンターに登録し、制度を活用することが望まれます。
産業医の職務【労働安全衛生法】
産業医の職務は、労働安全衛生規則第14条第1項で定められており、全部で9個あります。
- 健康診断の実施とその結果に基づく措置
- 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
- ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
- 作業環境の維持管理
- 作業管理
- 上記以外の労働者の健康管理
- 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
- 衛生教育
- 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置
上記の9個の職務に基づいた具体的な仕事内容について、次で詳しく解説します。
産業医の仕事内容
産業医の主な仕事内容は、以下のとおりです。
- 従業員の健康診断と結果に基づく措置
- 仕事と治療の両立を支援
- ストレスチェックの実施と長時間労働者への面接指導
- 職場環境の巡視・改善指導
- 衛生委員会への参加と助言
それぞれの仕事内容について具体的に解説します。
関連記事:特定健診と特定保健指導は義務なのか?対象や基準、企業の役割まで徹底解説
従業員の健康診断と結果に基づく措置
健康診断の結果をもとに、従業員が安心して働けるようサポートするのが産業医の役割です。
血圧が高い場合は夜勤を控えるように、血糖値に問題がある場合は休憩をしっかり取るように、といった助言を行い、業務内容と体調のバランスを取ります。
健診で気になる結果が出た従業員については、リストを共有して産業医との面談につなげることで、病気の重症化を防ぐことにもなるでしょう。
企業には健康診断の結果に基づき必要な就業上の措置を講じる義務があるため、産業医の助言を活かす仕組みを整えることが、従業員と会社の双方にとって安心につながります。
仕事と治療の両立を支援
病気やケガを抱えながら働く従業員が、安心して仕事を続けられるように支援するのも産業医の大切な役割です。復職の際には、主治医の診断に加えて、業務内容や職場の状況をふまえ、無理のない復帰プランを助言します。たとえば、うつ病で休職した従業員には「短時間勤務から始める」といった提案を行い、段階的な復帰をサポートします。
こうした仕組みは、人材流出を防ぐだけでなく、従業員にとっても「会社に支えられている」という安心感につながるでしょう。
関連記事:復職面談の進め方と注意点は?面談目的や確認事項、円滑な復職に向けたコツも解説!
ストレスチェックと長時間労働者への面接指導
産業医は、ストレスや過重労働による健康被害を防ぐため、従業員への面談に関わります。
具体的には、ストレスが高い従業員や、残業が月80時間を超える従業員を対象に、体調や疲労の状態を確認し、必要なアドバイスを行います。
これらの取り組みを効果的に進めるには、対象者を早めに把握し、スムーズに産業医へつなげられる体制を整えておくことが重要です。
ストレスチェックの義務化や面談については、以下の記事で解説しています。
関連記事:ストレスチェックの義務化。従業員50人未満の事業所が対応すべきポイント
職場環境の巡視・改善指導
産業医は、オフィスや工場を実際に見て回り、働く環境に潜むリスクを早めに見つけ出す役割を担います。
労働安全衛生規則で原則として月1回以上の職場巡視が義務付けられています。
ただし、事業者の同意を得た上で、産業医に毎月所定の情報(衛生委員会の議事録や時間外労働時間など)が提供される場合には、産業医の巡視頻度を2ヶ月に1回以上とすることも可能です。
テレワーク中心の職場では、厚生労働省のガイドラインに基づき、オンラインでの状況確認やセルフチェックシートを活用するといった柔軟な方法で、作業環境の把握に努めることが推奨されています。
衛生委員会への参加と助言
衛生委員会とは、従業員50人以上の事業場に設置が義務付けられている、安全衛生に関する審議機関です。労使や専門家が集まり、職場の健康課題を話し合い改善策を検討する場となります。
産業医は衛生委員会の必須メンバーとして参加し、専門家として健康課題をわかりやすく解説し、改善の方向性を助言します。
事前に議題を共有して意見をもらうことで、より実践的な議論が可能になるでしょう。産業医の存在は、組織全体の健康づくりを後押しする大きな力となります。
企業が産業医を活用するメリット
産業医の選任は法的義務であると同時に、企業に以下のようなメリットをもたらします。
- 従業員の健康保持と増進につながる
- 離職防止・人材定着につながる
- 健康経営への取り組みによる企業イメージの向上
それぞれのメリットを紹介します。
従業員の健康保持と増進につながる
産業医を活用することで、従業員の健康リスクを早めに見つけ、予防につなげることが可能です。
たとえば、健診で気になる結果が出た従業員との面談や、衛生委員会でのアドバイスを通じて、重症化を防ぎながら健康意識を高められます。
その結果、休職や体調不良のまま働く状態を減らし、生産性の向上につながるでしょう。
離職防止・人材定着につながる
産業医が関わる体制は、従業員に「安心して働ける会社」というイメージを与えます。不調時に専門家へ相談できる環境があることで、職場への信頼感が高まり、離職防止にもつながるでしょう。
さらに、休職からの復帰支援や治療と仕事の両立支援が整っていると、従業員はキャリアを続けやすくなります。
こうした仕組みは人材の定着にもつながり、採用競争が厳しい中でも企業の魅力を高める要素になります。
健康経営による企業イメージの向上
産業医を中心とした取り組みは、健康経営の実践にもつながります。
健康経営優良法人の認定制度でも産業医の関与が要件の一つとされており、認定を受ければ企業のPRや金融面での優遇につながることもあります。
産業医を法令対応のためだけに置くのではなく、経営戦略の一部として活用することで、社会的評価やブランドイメージが向上し、企業価値そのものを高めることが可能です。
関連記事:健康経営優良法人のメリット・デメリットとは?認定基準をわかりやすく解説
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産業医の探し方
適切な産業医を見つけるために、主な探し方と選定のポイントを解説します。
主な探し方と相談先
産業医を探す方法は、大きく3つあります。
- 地域の医師会に相談する
- 健診を委託している医療機関から紹介を受ける
- 産業医紹介サービスを利用する
一般求人では見つけにくいため、上記の専門ルートを使うのが確実です。
産業医に求めるものを明確にしたうえで、複数の方法を併用し、自社に最適な候補者を見つけることが重要です。
自社に合う医師を見極めるポイント
産業医選びでは資格や経歴だけでなく、コミュニケーション力や企業理解の深さも重視する必要があります。
具体的には、経営層に助言できる姿勢や、従業員との信頼関係を築けるかが重要な判断基準です。
契約前の面談で「当社の課題にどう取り組みますか?」と質問し、対応力や人柄を見極めることで、ミスマッチを防ぎ、長期的に信頼できるパートナーを選べるでしょう。
まとめ
産業医は、従業員の健康を守りつつ企業のリスク管理を支える専門家です。定期的な職場巡視や健康診断後の対応、ストレスチェックや復職支援などを通じ、従業員一人ひとりの安心と組織全体の生産性向上を両立させます。
従業員50人以上の事業場では選任が義務であり、違反すれば罰則や社会的信用の失墜につながりますが、適切に活用すれば健康経営の推進力にもなります。
法令対応として最低限の体制を整えるだけでなく、自社のリスクや特性に合った形で産業医を活用することが、企業の持続的な成長と人材定着に欠かせません。
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