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ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは?ビジネスにおけるその意義と取り組み事例

近年は、人事領域でも「フィジカルキャピタル(物的資本)」や「ヒューマンキャピタル(人的資本)」という用語に続き「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」という言葉が注目されています。

ソーシャルキャピタルとは、端的にいえば個人の持つ社会的なネットワークを資本と捉える考え方ですが、なぜ企業経営において重要視されているのでしょうか?この記事ではソーシャルキャピタルとは何か?企業がソーシャルキャピタルを高めるメリットや取り組み事例を解説します。

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ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは

ソーシャルキャピタル(Social capital)とは、直訳すると「社会関係資本」という意味であり、個人が持つ信頼関係や人間関係などの社会的ネットワークを資本とみなす概念です。

1900年に米国の教育業界で使われ始め、現在はさまざま領域で使用されており、領域によって多様な定義があります。ビジネス領域においては、米国政治学者ロバート・パットナム氏が提唱した以下の定義が一般に用いられます。

定義:

人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴

(出典:内閣府NPOホームページ

つまり、ソーシャルキャピタルとは、人と人との関係に内在する個人や社会に利益をもたらす仕組みや特徴といえるでしょう。

物的資本(フィジカルキャピタル)と人的資本(ヒューマンキャピタル)との関係

ここでは、物的資本、人的資本、ソーシャルキャピタルの意味と関係性を解説します。

  • 物的資本(フィジカルキャピタル):建造物、土地、設備、製品など有形の資本
  • 人的資本(ヒューマンキャピタル):個人の知識、スキル、ノウハウ、資質などの資本
  • 社会関係資本(ソーシャルキャピタル):人々のネットワークおよびネットワークが持つ規範、アイデンティティ、信頼、互恵性などによってその社会で形成される資本

ソーシャルキャピタルの3大要素

ソーシャルキャピタルとは、人と人との関係性やネットワークそのものの価値です。ソーシャルキャピタルは、「信頼」「規範」「ネットワーク」の3つの要素があります。

信頼

ソーシャルキャピタルの最大の要素は「信頼」です。人は、誰かに何かを依頼するときやチームを組む必要があるときに、相手を信頼していると疑ったり迷ったりせずにすみます。「信頼」は組織のコミュニケーションコストを下げます。

一方、知らない人が多い、信頼できる人が少ない組織では、情報を収集し小さな取り組みから始めて、相手の評価を固めるプロセスが必要になりコストが発生します。

なお、パットナム氏は「知っている人に対する厚い信頼」よりも「知らない人に対する薄い信頼」のほうが協調行動を促すことや、顔の見える関係性が重要なことを指摘しています。

(互酬性をもった)規範

互酬性のある関係とはWin-Winの関係ということです。組織内に、フェアであることやお互いを助け合う行動をよしとする規範が存在すると、メンバーは安心して活動することができます。

必ずしも成果や仕事量を杓子定規に平等にするということではなく、お互いを尊重する言動やマナー、助けられた側が感謝することなども該当します。

明文化されていなくともこのような目に見えないルールがあると、現在または将来的に等価なものが得られることがわかっているため、メンバー同士は自然に協力し合います。その結果、組織はさらに活性化します。

ネットワーク

ネットワークには、垂直的なネットワークと水平的なネットワークがあります。水平的ネットワークが密なほど、メンバーはお互いのために互恵的な活動をする傾向があります。

垂直的なネットワーク

上司と部下、教師と生徒などヒエラルキー構造を持つネットワーク。ほとんどの企業は垂直的ネットワークで構成されています。

水平的なネットワーク

趣味やスポーツのサークル、組合活動などのように上下関係がない組織に見られるフラットなネットワークです。

ただし、企業の場合は情報伝達手段として垂直ネットワークも有効なので、いずれも重要であると理解しましょう。

企業におけるソーシャルキャピタルを取り入れるメリット

企業が組織内にソーシャルキャピタルを積極的に取り入れると、組織運営や事業運営の円滑化につながります。職場の心理的安全性が高くなるため、人材の離職率低下にも効果的でしょう。

組織運営の円滑化

企業内のソーシャルキャピタルが充実していると、社内の情報共有がスムーズになるため、意思決定もスピーディになります。教え合うカルチャーが醸成されるので、暗黙知に相当する情報も共有化されやすく、一人ひとりの従業員の問題解決能力が向上します。

また、部署の垣根を超えたネットワークによってセクショナリズムが緩和されるため、組織内のコミュニケーションが効率よくなり、組織運営が円滑になっていきます。

事業の円滑化

ソーシャルキャピタルは、個人やチーム、上司や他部署の従業員などの間に存在するネットワークです。事業部内でソーシャルキャピタルが形成されていると、報連相が機能するためマネジメント層は最適な判断をすることができます。

部署を超えたソーシャルキャピタルが存在すると、全社的なプロジェクトもスムーズに進行します。違う視点のメンバーが意見を交換する機会が多くなるため、イノベーションにもつながりやすく、事業成長につながるでしょう。

心理的安全性の向上

お互いへの信頼や互恵性の存在するネットワークは心理的安全性を高めます。もちろん、企業組織なのでヒエラルキーはあるのですが、お互いを尊重しあう暗黙のルールが存在するため、若手でも上司や他部署の人に萎縮せずに意見を交わすことができます。

知らないことをそのままにして悩んだり、行き詰まったりすることが減少し、仮に失敗しても早期に周りに相談することができます。安心して仕事に打ち込める環境のため、離職率の低下も期待できるでしょう。

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定着率向上にまず自社の労働環境・社内環境の分析と認識から始めましょう。ターゲットを明確にし課題の検討を行います。段階を追って進めることで、選択する施策がより効果的なものとなります。

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ソーシャルキャピタルの取り入れ方

ソーシャルキャピタルを取り入れるための具体的な施策をご紹介します。オフィスレイアウトやイベント開催、サークル支援などいろいろな切り口があります。自社の規模やカルチャーに適した施策を検討しましょう。

社内設備、オフィスレイアウト

オフィスレイアウトや社内設備への投資はソーシャルキャピタルの形成に役立ちます。例えば共有のコミュニケーションスペースがあると社内コミュニケーションは自然に促進します。社内食堂や社内カフェ、ミーティングスペース、提携コワーキングなどで挨拶を交わし、顔と名前を知るといったことから、薄い信頼関係が生まれていきます。

イベント、福利厚生

社内イベントや社内サークルなどの福利厚生も有効です。イベントには歓送迎会や花見、社員旅行、表彰式、ワークショップ、シャッフルランチなどがあります。サークルはスポーツや趣味、勉強目的などさまざまです。今の時代ならオンラインサークルも十分機能するでしょう。このようなコミュニケーション活動を金銭面で支援します。

メンター制度

メンター制度とは、先輩社員が新人や若手社員の相談に乗ったりアドバイスをしたりする制度です。新人は組織で自分の居場所を作るまでに時間がかかるものですが、メンター制度があることで部署とは別の社内ネットワークをつくることができます。また、メンター制度そのものが新人に信頼を感じさせるソーシャルキャピタルとして機能します。

ジョブローテーション

ジョブローテーションは、組織のさまざまな部署のリアルな仕事内容を知るうえで有効です。複数の部署で異なるタイプの人材と働くので、多層的な社内ネットワークが形成されます。ともに働いた経験は信頼関係を強くするため、その後、他部署を巻き込んだ仕事をするときや、マネジメント職になったときに非常に役立ちます。

グループインセンティブ

部署やチーム単位に支給するインセンティブです。グループ全体が評価されるインセンティブなので、自分の仕事の評価だけでなくチームの成果に対してのモチベーションも高まります。オフィシャルな評価に反映されにくい仕事を担うメンバーにも報いることができるため、チームに一体感が生まれやすくなります。生産性向上につながるでしょう。

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まとめ

近年は、物的資本(フィジカルキャピタル)、人的資本(ヒューマンキャピタル)に続きソーシャルキャピタル(社会関係資本)が注目されています。企業の魅力や成長力が可視化しやすい人的資本や物的資本だけでなく、社内の人と人との関係性が持つ特性に由来するという考え方は、マネジメントの視座を変えるきっかけになるでしょう。

オフィスのレイアウトや環境を変えたり、サークル活動などのネットワーク形成を支援したりするなど、できるところからソーシャルキャピタルを高めていきましょう。ソーシャルキャピタルが高まれば、他の二資本をより有効活用でき生産性も向上することが期待できます。個人にとっても企業にとっても恩恵があるので、ぜひ取り組んでいただければと思います。

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