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-ピープルアナリティクスのnext step-

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セミナーレポート アンバサダー誕生秘話<br>-ピープルアナリティクスのnext step-

2023年4月24日、株式会社荏原製作所登壇のオンラインセミナーを開催しました。
同社は、データドリブン経営を目指し、2022年7月に新たに荏原製作所内で社長直轄の組織としてData Strategy Teamを立ち上げました。
企業の変革や新しいビジネスを生み出すため、データを駆使し日々試行錯誤する中で、自社でピープルアナリティクス AIを開発し、データドリブン経営人事を推進中。採用には特に力を入れ、ピープルアナリティクス AIから多様な人材の獲得に成功しただけでなく、更なる発展に向けて、人に魅力を与えられる存在であるアンバサダーという専門ジョブをデータの課題から抽出し定義しました。
今回は、アンバサダーが誕生するまでの秘話をセミナーレポートとしてお送りします。

ピープルアナリティクスに基づくアンバサダー立ち上げの狙いとVisionについて

荏原製作所について

当社はポンプの事業で創業した産業機械メーカーです。1912年に創業して、今年で112年目を迎えました。関係会社数は国内・海外含めて116社、従業員数は連結で約1.9万人です。本社は羽田空港の隣にあり、11階の建物で、最上階は、社員用の食堂施設となっています。11階からの眺めはまるで空港のラウンジのようで、飛行機が飛び立つ様子を見ることができます。

荏原製作所について

荏原製作所の事業

荏原製作所は、5つの既存事業と新規事業を展開し、水、空気、環境、デジタルテクノロジーの領域で社会課題を解決する会社です。水と空気の領域では、創業時からの事業であるポンプ・送風機・冷凍機・コンプレッサ・タービンなどを展開しています。環境の領域では、廃棄物の焼却施設を持ち、デジタルテクノロジーの領域では半導体製造装置を開発しています。

荏原製作所の事業

世界中で活躍する荏原製作所の製品

ポンプの製品が世界中で活躍しています。人々が生活する中でポンプの製品を意識することはあまり無いと思いますが、水がある所にはポンプが必ず必要と言われています。荏原製作所のポンプが主に活躍する3か所をご紹介します。1つ目は砂漠の都市といわれるラスベガスです。ラスベガスは、水資源が乏しく、生活用水を48㎞離れたフーバーダムと呼ばれる所から水を運んでいます。そこでは当社の世界最大級のポンプが収められています。2つ目はシンガポールのマーライオンです。こちらの写真に写っている小さな小屋に噴水システムを収めています。3つめはイタリアのコロッセオです。外壁の修復・清掃作業に当社のポンプが使用されました。貴重な世界遺産ですので、布で擦ったりするのではなく、水圧で洗い流すことで、本来の色味を残せるようにポンプが使用されました。他にもイタリア国内の世界遺産に当社のポンプが使用されています。

世界中で活躍する荏原製作所の製品

新しい取り組み

将来の地球環境保全に向けて、当社が持っている技術を生かす取り組みを3つの領域で行っています。マリンの領域では、閉鎖型陸上養殖、宇宙の領域ではロケット向けターボポンプ、水素の領域ではつくる~はこぶ~つかうまで、幅広く事業を展開する取り組みをスタートしています。このように現状に満足せずグローバルにチャレンジしています。

新しい取り組み

長期ビジョン「E-Visinon2030」

当社が2030年のありたい姿に対して、取り組んでいる内容です。例えば、CO2約1億トン相当の温室効果ガスを削減する、世界の6億人に水を届けるなど、地球上にある様々な問題を解決していきます。ただ、これからのビジネス環境は不確実であり、見通しが立てづらい状況のため、スピーディーに変化に対応することが求められます。Data Strategy Teamは、今までの感覚や経験で意思決定するのではなく、データを活用し、意思決定していくことを目的に発足しました。

長期ビジョン「E-Visinon2030」

Data Strategy Teamの使命

Data Strategy Teamは2022年7月に社長直轄のチームとして設立されました。従来の経験や勘に頼ったものではなく、新しいデジタルの力を使って意思決定していく方針です。AIやメタバースやARなどを使うだけではなく、そもそもなぜデータを使うのかという所にも着目し、そのためストラテジーという名称をつけています。分析・アクション・実行を通じて新しいイノベーションを起こそうとしています。

Data Strategy Teamの使命

Data Strategy Teamの体制

現在10個のセクションに分かれています。データが関連する部署を巻き込んでおり、製造からブランディングからHRも含めて巻き込んでいます。チーム方針は、まずはなんでもトライすること。そしてデータとともに考えて、成功も失敗も共有してシェアするというコンセプトを掲げて、「H or π型人材」を目指し、組織の設計も行います。本チームに関わる人材は2つ以上のセクションを兼任しています。足りないセクションは1か月毎など短いスパンで組織を立ち上げ高速でPCDAを回しています。毎回成功する訳ではないので、失敗を踏まえて次に成功するためにチャレンジした内容を積極的にシェアする姿勢を持ち、心理的安全性を確保した環境を作っています。

Data Strategy Teamの体制

ピープルアナリティクスAIについて

人は似たような経験・共通点を持っている人間を好み、採用担当者においても自身のバイアスをかけないことを意識していても、知らず知らずのうちに自分と似た人材を好んで採用しています。その連鎖により新しいものが生まれない硬直した組織になってしまいます。この課題に対して、ピープルアナリティクスAIは可視化することができます。

ピープルアナリティクスAIについて

目に見えないダイバーシティ=タスクタイバーシティ

組織の硬直化を防ぐためにはダイバーシティ(多様性)が大切です。その中でも当社は、性別や国籍等の目に見えるダイバーシティではなく、目に見えない能力や考え方等のタスクダイバーシティが大切だと考えています。

目に見えないダイバーシティ=タスクタイバーシティ

データドリブン・タスクダイバーシティ

タスクダイバーシティ遂行することで、様々な分野・タイプの人材を採用し、新しい考えやイノベーションを起こすことができると考えています。
新しいイノベーションを創るためにはどのような採用手法を用いたらよいかを検討した結果、「アンバサダー制度 」の立ち上げに至りました。

データドリブン・タスクダイバーシティ

アンバサダー制度について

アンバサダー制度をはじめたきっかけは、面接官でした。人間の判断には限界(バイアス)が存在しており、公平に判断したつもりでも、知らず知らずのうちに同質的な人を選ぶ傾向にあることが過去の採用データの分析から分かってきました。
一方で応募者側も様々な会社の面接を受ける中で、自分と近い・共感できる面接官がいる企業に好感をもつと推測されます。チャレンジ人材獲得のためには、面接官にこそチャレンジメンタルを置くべきと考え、アンバサダー制度立ち上げのきっかけとなりました。

アンバサダー制度について

ピープルアナリティクスAI

ピープルアナリティクスAIは、より多様な人材を採用して、イノベーションが生まれやすい環境へ変えていくために導入しました。様々な情報(適性検査・評価情報等)を活用して分析した結果、チャレンジ人材の特性を掴むことができました。当社では「チャレンジ・エキサイティング・ダイバーシティ」の3つの要素を持っている人材こそ、目指している「競争し、挑戦する企業風土の無限化」を達成することができ、会社の利益・成長に繋がると考えました。

ピープルアナリティクスAI

アンバサダーに求める要件

アンバサダーとは、ピープルアナリティクスAIから導かれた専門の職業となります。アンバサダーに必要な能力は以下の4つとなります。

・人の感情が理解できること
・人を惹きつけられること
・人に寄り添えること
・自分で発信できること

このように人間関係に興味・関心が高く、プレゼンテーション能力が高い方がアンバサダーに向いていると考えます。

アンバサダーに求める要件

アンバサダーの特徴

広く魅力をPRしていく 「ブランディング」、候補者を惹きつけるための 「リクルーター・面接官」、入社後に安心して自分らしく活躍していただく 「オンボーディング」が関わってきます。それぞれの場面で候補者によって状況や心情等も異なるため、どの施策においてもターゲットに寄り添って相手が求めているものを提供したり、ワクワクさせるコミュニケーションを取っていくことを目指しています。

アンバサダーの特徴

アンバサダーの役割①:ブランディング

「チャレンジ人材を楽しませるエンターテイナー」として当社の魅力を広く伝える広告塔としての活動となります。当社のブランドを体現できる存在として、社外に向けて目指しているアイデンティティやビジョンを自分の言葉でストーリー立てて語ることができるスキルが大切であると考えます。
また、アンバサダーの名前もエンターテイナーの要素が重要である点から名づけました。

アンバサダーの役割①:ブランディング

アンバサダーの役割②:採用

チャレンジ人材に好感を持たせ、ワクワク感を醸成し、興味を惹かせ、一緒に働きたいと感じていただくことが大切であると考えています。採用イベントや大学訪問でご挨拶、当社の説明・質疑応答を通じて、当社の魅力を発信します。また候補者と面談し、丁寧に話を聞き出し評価するだけでなく、「動機付けすること」に重点を置いています。その時間の中でファンになってもらえるような心理的安全性を生み出せるような人材です。

アンバサダーの役割②:採用

アンバサダーの役割③:オンボーディング

チャレンジ人材が即戦力化できる仕組みづくりとして、「新入社員・キャリア入社・異動して間もない方」が対象です。組織に新しく加わった人材が心理的安全性を感じながら自信を持って仕事をすることができ、自由に相談ができる環境を作ることで、キャリアパスを自身で考えられるようになるのではないかと考えています。

フォロー:
座談会や1on1のイベントに出席

メンター:
定期的な面談を実施、その中でコーチングのスキルを使いながら多様なキャリアパスの提示、精神面の支援を行います。また、メンターは心理的安全性が重要だと考えます。新入社員の中には心理的安全性を感じにくい方もいるので、データドリブンで相性が良いメンターをセットし、より安心できる環境を作ることで、その方が自分らしくチャレンジできる環境を作っていきたいと考えています。

アンバサダーの役割③:オンボーディング

アンバサダーのミッション

相手から笑顔を引き出せるムードメーカでありながら、人間の感情・コンピテンシーを理解できるセンスやスキルが必要と考えています。このような要素を兼ね備えてこそ、相手にワクワク感や興奮を抱かせることができると思います。アンバサダーに期待することとしては、「候補者の興奮を生み出す」・「候補者のチャレンジ精神を引き出す」・「候補者を多様化する」。それがアンバサダーの活動によって生み出されるのではないかと考えています。
これらは今後の会社の利益・成長に不可欠であり、人材戦略・ブランディング戦略を通して社内外から変革を起こすことによって実現できるのではないかと考えています。

アンバサダーのミッション

アンバサダー制度とピープルアナリティクスAIで得られたこと

同質化を避け、多種多様な人材を採用することができました。ピープルアナリティクスAIから作り出したアンバサダー制度は十分に成果が出たと感じています。制度を知らない研修講師からも今年の新人は例年とは180度違うという評価を得ております。

アンバサダー制度とピープルアナリティクスAIで得られたこと

ミッションサイクル~挑戦心・競争心を持った人材の採用に向けて~

ここで、なぜ今回の取り組みが成功したのか、ポイントを説明します。
データサイエンティスト、データエンジニア、人事、ブランディングなど一緒に関わった方が目標・タスクダイバーシティを理解した上で行ったことが重要であると考えます。戦略面でどんなことを成し遂げたいか、会社のトップダウンだけではなく、現場の観察を組み合わせながら、会社にとって不足している人材・これから大事な人材を明確に定義していました。それに基づき、意図を理解したデータエンジニアがデータベースを構築し、プロジェクト関係者でピープルアナリティクスAIを用いて、ありたい姿に対してどう分析したら結果が出てくるだろうと可視化しました。出てきた問題からAsis(現状)とTobe(なりたい姿)に照らし合わせ、ギャップを抽出し、それに対してどうしたら理想の採用戦略・経営になるか話し合いながらデータに基づく施策を実施しました。関わる人材のタスクダイバーシティが重視され、一人が複数のことを対応する試みがないとできなかったと考えます。

ミッションサイクル~挑戦心・競争心を持った人材の採用に向けて~

アンバサダー制度の将来像

よりリアルなデータで運用していきたいと考えています。非構造化データ(脳波・パフォーマンス・五感等)をデータベースに取っていくと、その人が第三者から見ても笑っている・良い印象であることが分かり、アンバサダーと面接官が話した内容のデータを拾いながら推測することができます。また、メタバースではアバターを用いることで表情が見えなくなるので、どの応募者が良かったのか判定する際に、その人が出したアウトプットによって、本当に会社に必要な人材の要件をデータ化でき、肩書やステータスの情報がなくなるため、持っているポテンシャルで勝負していくことになります。リアルデータを作っていくことで、タスクダイバーシティのように専攻や持っている経験・スキルでいかにパフォーマンス出せるかという観点で進めていきたいと考えています。

アンバサダー制度の将来像

質疑応答

データストラテジーチーム内の横連携を促す仕掛けがあれば教えてください。

― 入社時に各セクションを紹介し、必ず2つ以上セクションに所属するように伝えています。お試しでいろんなセクションを見ていただき、自分に合うセクションがあればそこに所属、なかったら自分がやりたいことをセクションとして作り立ち上げるよう促します。もともとある所属だけでなく、チャレンジを後押ししています。自分でリスキリングしなければならない場合があるので、その場合の費用は会社で全額負担し、様々な分野の勉強をしていただいています。

アンバサダーチームメンバーは社内の方が中心でしょうか。外部採用者も多いでしょうか。アンバサダーを含めてデータストラテジーチームの各チームのメンバー数を教えてください。

― 専任メンバーは外部から採用しています。ピープルアナリティクスAIを使ってアンバサダーに向いている人材を選抜しており、合格率は2%程度になっています。既存メンバーの兼務は4~5名ほどです。

多様な人材を獲得するため、心理的安全性を高めているとのことですが、既存メンバーへの教育・周知は行っていますか?行っている場合、それはどのような手法でしょうか?

― データストラテジーチームでは全員イングリッシュネームを持っており、お互い敬称をつけずに呼んでいます。理由としては、組織内で上下関係を作りたくないためです。ヒエラルキーポストではなくフラットな組織を作っています。

御社の今後の展望について教えてください。

― 今後は面接中の表情等のリアルデータでその人の志望度やwell-beingが判るようになる予定です。面接だけでなく、様々なビジネスシーンでも活用することができるので、組織を活性化するためにはより必要になってくると思います。

アンバサダー制度を導入するうえで、もっとも大きな決め手となったことは何ですか。

― well-beingを高めるために「空間」をデザインできる人材の必要性を感じたことです。

アンバサダーは社内でも活躍している方が多いと思いますが、その方々からは採用活動においてどのようにして協力を得たのですか。

― 社内公募を行いました。新卒採用では説明会プレゼンターや面接官としてそれぞれ学習していただき、研修を通じてスキルを磨き、活躍していただいています。また目標管理(MBO)においても、アンバサダーとして目標を掲げていただき、活躍に対して評価をしています。

さいごに パソナProShareサービスのご紹介

株式会社荏原製作所は企業の変革を促す人材確保の仕組みを構築しました。これからのビジネスにおいて変革は重要なキーワードであり、高い専門性も求められます。ここでは、貴社に役立つ高い専門性を柔軟に活用できるパソナのサービスをご紹介します。

パソナでは、創業以来「社会の問題点を解決する」という企業理念を掲げ、お客様の経営課題解決のため、様々な事業を展開してまいりました。パソナの「ProShareサービス」では高い専門性を持つプロフェッショナル人財を、プロジェクトベースで直接採用以外の形で活用いただけます。

ご支援領域は下記のように多岐にわたります。
IT/DX/マーケティング/人事/法務
/コンプライアンス/新規事業/経理/経営

ご支援領域の詳細は下記ホームページをご覧ください。
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