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従業員エンゲージメントとは?向上させる施策と事例を解説

近年、一般メディアでも日本企業の従業員エンゲージメントが世界でも低いことが、たびたび取り上げられるようになりました。一昔前は会社に対する忠誠心が強いといわれ、現在も多くの従業員が仕事にまじめに取り組んでいるように見えるにもかかわらず従業員エンゲージメントが低いのはなぜでしょうか。

本記事では、そもそも従業員エンゲージメントとは何を指すのか?構成する要素やモチベーションとの違い、従業員エンゲージメントを向上させる企業の施策や取り組み事例を解説します。

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従業員エンゲージメントとは

「エンゲージメント(Engagement)」には「約束、婚約、愛着、絆」という意味があります。顧客エンゲージメント、従業員エンゲージメント、ワークエンゲージメントなど、その主体や目的によって、さまざまな用語が存在します。

「従業員エンゲージメント」とは、従業員が会社に抱く「愛着、思い入れ、信頼度」を指す言葉です。所属する企業のビジョンや経営方針への共感、共に働く同僚たちへの思いなどを抱合した組織全体への貢献意欲のことです。

従業員エンゲージメントの3要素

従業員エンゲージメントは、組織に対する「理解度」「帰属意識」「行動意欲」の3つ要素で構成されます。

理解度

企業の理念や長期的なミッション、戦略目標など、所属している企業への理解度です。創業の歴史や自社にいる人たちの価値観、どのような振る舞いが推奨されるのかという行動規範への理解や共感も愛着を深める要素です。

帰属意識

帰属意識は、自分が企業や部署の一員であるという自覚と、共に働く上司やメンバーとの結びつきの強さです。帰属意識が高い従業員は、組織に対して共感や忠誠心を抱き、積極的にチームの成功に寄与する傾向があります。

行動意欲

行動意欲は、組織のために主体的で積極的に仕事へ取り組む姿勢を指します。一般に、組織に対する理解度や愛着が高まるほど、業務に対する熱意が増し、チームメンバーとの協力を通じて共通の目標達成に向けて努力する傾向があります。

従業員エンゲージメントとモチベーションの違い

モチベーションは「動機付け・やる気」という心理状態のことで、人事領域では個人の仕事への原動力や意欲を指して使われる用語です。内発的動機や外発的動機が存在し、組織の評価だけでなく、仕事への興味・関心、キャリアアップ、高収入などさまざまな動機があり、その優先順位は個人によって異なります。

一方、従業員エンゲージメントは従業員の企業への「愛着・信頼」を意味します。企業の経営方針や一緒に働く同僚の人柄、チームとの連帯感、商品への誇りなどをすべて含めた組織との関係性を示す概念です。一度形成されると持続する傾向がありますが、組織の変化によって低下することもあります。

両者は異なる概念ですが、相互に影響し合います。

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従業員エンゲージメントが重要視される3つの理由

近年、日本企業で従業員エンゲージメントが重要視されている3つの理由を紹介します。

人材不足と流動化

少子高齢化が進み、日本は慢性的な人材不足に陥っています。また、終身雇用という概念もかなり薄れ、ミレニアル世代以降は1~2度の転職は当たり前と捉えるようになりました。

つまり、現代は採用の難易度が高く、離職リスクも常にある時代です。そのため、少なくとも採用した人材にできるだけ長く活躍してもらう必要があります。厳しい経済環境のなか終身雇用までは保証できないとしても、できるだけ長期間、従業員と良好な関係を保つために、従業員エンゲージメントの向上に投資する企業が増えました。

テレワークの普及とモチベーション維持

テレワークが普及し、対面コミュニケーションの機会が急減したことにより、従業員のモチベーション低下が課題となりました。

リモートワークでは、テキストコミュニケーションが主流であり、相手の顔が見えないために無用な緊張が生まれ、わずかな言葉の誤解が関係性を損なうことがあります。また、神経を使ったコミュニケーションをする割に感情的なつながりが得られにくい面もあります。組織内で共有される組織文化や暗黙知の伝達も、物理的な共有が難しくなりました。

これらのリモートワークに起因する孤独感や情報の分断、一体感の不足は、従業員エンゲージメントの低下が懸念されるため、これらに対処するための対策を講じる企業が増加しています。

生産性および業績との関係

令和2年7月に経済産業省産業人材政策室が公表した資料集では、従業員エンゲージメントと営業利益率、労働生産性の間に高い相関関係が確認された国内での調査結果が紹介されています。

企業の従業員エンゲージメントスコアが高いということは、多くの従業員が、自分だけでなくチームや組織のためにという思考で仕事をしていることを意味します。彼らは、自分の業務に意義を感じ、目前の仕事に熱心に取り組むだけでなく、高い視座で組織にとってどうかという視点で判断できます。

必要であれば前向きな提案をおこなうため、業務が効率化されたり新たな商品が生まれたりする機会が増え、生産性の向上につながることが考えられます。

従業員エンゲージメント向上の9つの施策

ここでは、従業員エンゲージメント向上のために、企業がおこなえる具体的な施策を9つ紹介します。

従業員エンゲージメントの状態を把握

最初に従業員のエンゲージメントを把握します。従業員エンゲージメントは表面から見えにくく、仕事熱心であっても必ずしも従業員エンゲージメントが高いとは限りません。ツール等を活用して現在の状態を測定しましょう。

ビジョン・企業理念の浸透

ビジョン、企業理念を明確にして発信します。自社の方向性や将来の展望に共感できるとエンゲージメントも向上します。社内報やオウンドメディアなどを使って継続的に発信することが大切です。

納得感のある人事評価制度の導入

人事制度も重要です。ジョブ型人事制度や成果主義人事制度に限ることなく、企業の規模やステージによって自社に適した人事制度を構築しましょう。大事なのは評価基準を明確に説明し、従業員に納得してもらうこと、公平性を担保することです。

適切な人材配置

従業員の適性やスキル、希望をもとに適切な人材配置をおこないます。本人が仕事を通じて成長の実感を得ることができればエンゲージメントが高まり、企業にもプラスです。社内公募制などを設け希望の業務につくチャンスを増やすのも一つの方法です。

上司による適切なフィードバック

上司が従業員に適切なフィードバックをすると、評価されていると感じチームにも貢献する意欲が増します。人事評価を伝える際も相手を成長させるという観点で、貢献したことや改善してほしい点を伝えましょう。評価者研修も実施してください。

コミュニケーションの活性化

組織への愛着や帰属意識は、チームメンバーとの何気ない雑談や同じ場を共有することからも生まれます。社内イベントの実施やコミュニケーションスペースの設置、社内サークルの支援などでコミュニケーションの活性化を図りましょう。

「認める」「褒める」文化の形成

褒められると人は喜び、意欲が増します。ある研究では、人間の脳は褒められると金銭を得たときと同じ部位が反応すると報告されています。仕事の権限を委譲したうえで頑張りに対しては積極的に褒めましょう。よい提案をしたときも同様です。

ワークライフバランスの整備

自分らしく働ける環境は、エンゲージメントの向上に欠かせません。近年は昔より仕事の密度が濃いため、休息を十分とる必要もあります。ワークライフバランスの制度が整えれば、従業員は会社への信頼度を高めるでしょう。

キャリア開発の支援

キャリア開発に積極的な従業員も増えるなかで、成長の場を与え、権限を委譲し、成長が会社の成長とリンクするようにキャリア形成を支援しましょう。提携キャリアコンサルタントによるサポートや資格取得費用の支援なども有効です。

従業員エンゲージメント向上の取り組み事例

ここでは、従業員エンゲージメント向上のために人事制度を改善した企業事例をご紹介します。

自動車部品製造会社

自動車部品メーカーA社の人事部は、外部環境の変化に応じた人事制度に改善したいという課題があり、その内容を経営層と共有するために現行の人事制度についてのエンゲージ(意識調査)をおこなったところ以下の効果が得られました。

  • 社員モチベーションの可視化
  • データ活用による企業課題の明確化

最終成果:調査を機に経営層と制度変更の話を進め、経営方針を評価制度に反映した日常業務とのギャップがない納得度の高い制度設計を構築することができました。

まとめ

少子高齢化が進み、人材の流動化が激しくなるなか、従業員エンゲージメントというテーマは日本の企業にとってますます重要になりつつあります。従業員エンゲージメントは、あくまで会社組織への愛着や思い入れであるため、仕事に意欲的でも従業員エンゲージメントが低いと離職するリスクがあります。

まず、現在の従業員エンゲージメントを把握することから始め、適切な施策を検討していきましょう。

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