おすすめ特集・コラムジョブクラフティングとは?意味や効果、やり方を解説
公開日:2025.01.28 更新日:2025.01.29
- キャリア自律支援
生産性向上や離職防止に効果がある取り組みとして、近年企業での導入が増えている「ジョブクラフティング」。
社員自らが自分の働き方に工夫を加えることにより、仕事のやりがいや満足度を高める取り組みで、人材育成の手法の一つとしても注目されています。
この記事では、ジョブクラフティングとは具体的にどういうものなのか、その意味や効果、やり方について詳しく解説します。
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ジョブクラフティングとは
ジョブクラフティング(Job Crafting)とは、仕事のやりがいや満足度を高めるために、社員自ら主体的に仕事への認知や行動を変化させる取り組みです。イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー准教授と、ミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授により2001年に提唱された概念で、論文においては「課題や対人関係における社員個人の物理的・認知的変化」と定義されています。
ジョブクラフティングの具体的な手法としては、社員自ら自分の働き方に次のような工夫を加えます。
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作業クラフティング
作業クラフティングとは「仕事のやり方に対する工夫」を指します。目標設定や優先度をつけたスケジュール管理などにより、仕事の量や範囲を変化させることで、仕事がより充実したものになるように工夫することを意味します。
単にスケジュールやToDoリストの作成によって仕事の量やスピードを調整するのではなく、自分のやりたい仕事や新たな挑戦に向けて時間をつくるという意識を持ったり、心身の負担軽減を考えたりしながら取り組むことがポイントです。ジョブクラフティングはやりがいや満足度を高めることが目的であるため、自分にとっての理想的な働き方ができるように工夫することが大切です。
人間関係クラフティング
人間関係クラフティングとは「仕事で関わる周囲の人への働きかけの工夫」を指します。先輩や上司にアドバイスを求めたり、同僚と積極的に情報共有したりして、人間関係の充実を図る取り組みです。
周囲の人との円滑な関係を築くことで、サポートやフィードバックをもらいやすい環境をつくることができます。仕事がしやすくなるだけではなく、自分の仕事に対してやりがいや自信を持てるようになり、満足度を高めることにつながります。
認知クラフティング
認知クラフティングとは「仕事の捉え方に関する工夫」を指します。仕事の目的や意義について捉え直し、個人の興味関心と結びつけて考えることで、やりがいを感じながらポジティブに仕事に取り組めるようになります。
仕事のモチベーションや満足度の向上につなげるには、自分にとっての個人的な意義だけでなく、社会的な側面から自身の仕事の価値や貢献について考えることも有効です。再認識した目的や意義は、付箋に書いてデスクに貼ったり、PCのデスクトップに表示させたりして目につきやすくすると、日常的に認知クラフティングに取り組むことができます。
ジョブクラフティングが必要とされる背景
近年、ジョブクラフティングが必要とされるようになった背景には、働き方の変化や価値観の多様化があります。
時代の流れとともにトップダウンの意思決定方式や終身雇用制度が薄れつつあり、上からの指示に従い業務をこなすだけの受け身の姿勢では評価や安定を得ることができなくなってきました。このような状況下において、社員は主体的に考え仕事のやりがいを模索し、自らキャリア開発をおこなう必要性が出てきたのです。
また、業務の複雑化や専門化が進むなかで、モチベーションの維持や生産性の低下に課題が生じていること、効率の追求だけでなくやりがいを求める価値観を持つ人が増えていることへの対策としても、仕事や人間関係の認知を改めるジョブクラフティングが有効とされています。
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ジョブクラフティングがもたらす効果
企業がジョブクラフティングを推進することは、以下のような効果をもたらすと考えられます。
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人材育成
ジョブクラフティングの取り組みにより、仕事に対する姿勢が受動的から能動的に変わることで、人材育成の面でも大きな効果を発揮します。社員それぞれが当事者意識やプロ意識を持ち、自身が果たすべき役割を遂行できるようになれば、個々の強みを活かせる適切な人材配置が実現します。さらに、その過程でリーダーシップが発揮されることも期待でき、リーダーの育成にもつなげることができます。
創造性の向上
ジョブクラフティングを推進すると、仕事がより充実したものになるように創意工夫を繰り返したり、目的意識や情熱を持って業務に取り組んだりする姿勢が定着します。業務を単純にこなすのではなく、社員自ら考え行動できるようになることで創造性が生まれ、新しいアイデアやイノベーションの創出につながっていきます。
ワークエンゲージメントの向上
仕事にやりがいや価値を感じることで、社員の精神的な健康度を表す指標である「ワークエンゲージメント」が向上します。ワークエンゲージメントの高い社員は、メンタルヘルスが良好な状態を保てるため、生産性向上や組織活性化にもよい効果をもたらします。
関連記事:ワークエンゲージメントとは?意味、測定方法、高める方法を解説
離職率の低下
ジョブクラフティングにより社員が現在の仕事にやりがいを見出せれば、モチベーションや満足度が高まり、離職を防ぐことにつながります。また、人間関係クラフティングによって周囲との良好な関係や風通しのよい環境を構築し、社員の心理的安全性が確保されれば、組織への愛着や帰属意識が生まれ、定着率が向上すると考えられます。
関連記事:心理的安全性とは?心理的安全性を高めるメリットと測定方法をご紹介
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ジョブクラフティングのやり方
ジョブクラフティングは、新人研修やキャリア研修、シニア向け・女性向けなどさまざまな研修の一環としておこないながら、職場で取り組んでいくものです。研修を通じて、社員自ら現在の業務の整理や自己分析をおこない、作業クラフティング・人間関係クラフティング・認知クラフティングの3つの視点から計画を立てていきます。
ここでは、ジョブクラフティングを実践する方法をご紹介します。
業務やタスクを洗い出す
まずは社員がいま受け持っている業務や細かいタスクを洗い出し、一覧にリストアップします。
業務・タスクをまとめた一覧は、優先順位をつけてToDoリストやスケジュールを管理する作業クラフティングで活用することができます。また、業務ごとにジョブクラフティングがどの程度できているかを評価したり、どの業務に対しておこなうべきかを考えたりする材料にもなります。
自身の強みや動機について自己分析する
仕事の目的や業務で発揮できる社員自身の強み、興味・モチベーションにつながる動機など、幅広い側面から自己分析をおこないます。
自分では強みと思っていても業務において十分に発揮できていない能力や、自分では意識していなくても同僚や顧客から褒められた行動などもあわせて書き出しておくと、作業クラフティングや認知クラフティングについて考える際に役立ちます。
ジョブクラフティングの計画を立てる
洗い出した業務やタスクのなかから、作業クラフティング・人間関係クラフティング・認知クラフティングの3つの視点から仕事に加えられる工夫を考えていきます。
実効性を高めるポイントは、計画を考える際に何を・いつ・どこでおこなうか具体的に記すことです。まずは1か月の間に実施する計画を、作業・人間関係・認知でそれぞれ一つずつ考えるところから始めてみるのがおすすめです。
ジョブクラフティングを実践する
計画したジョブクラフティングを業務のなかで実践していきます。社員が仕事への向き合い方を急に変化させたり、複数の取り組みを同時に実行したりするのは難しいと感じる場合は、一つひとつ、小さなことから試してみるとよいでしょう。
また、実践して感じた気持ちの変化や、やりにくいと感じた点などを記録しておくと、振り返りや改善の際に役立ちます。
振り返りと改善をおこなう
はじめに立てたジョブクラフティングの計画を振り返り、実践した際に感じたことや成果をもとに、より具体的かつ実行しやすいジョブクラフティングの計画を再考します。
業務の属人化を防ぐため、あるいは第三者の視点を取り入れたより良い改善をおこなうためには、上司やチームと共有し、フィードバックをもらう機会があることが望ましいでしょう。
職場で実際に取り組む際の注意点
ジョブクラフティングを職場で正しく活用していくための注意点を以下にまとめました。
やりがい搾取に注意
やりがい搾取とは、社員の「やりがい」につけ込み、低賃金や長時間労働を強いる企業の行為をいいます。たとえば、作業クラフティングにより新たに発生した「やりたい」業務に対し、正当な報酬を支払わなかったり業務時間外にやらせたりすることなどが挙げられます。
企業としては社員のやりがいを高めることを目的にジョブクラフティングに取り組んだものの、意図せずやりがい搾取になってしまう恐れもあります。そのような事態に陥らないように、企業からやりがいを与えるのではなく、あくまで社員が主体的に取り組めるように注意が必要です。
チーム全体への影響に注意
ジョブクラフティングは社員それぞれが仕事に対する認識を変え、やりがいを見出すプロセスです。そのため、チームで取り組むプロジェクトにおいては、個々で異なる意味づけをおこなうとチーム全体へ影響を及ぼす可能性があります。
社員それぞれのやりがいとチームワークを両立させるには、お互いを尊重する姿勢でのコミュニケーションが欠かせません。また、チームワークが重視される場面では効果が発揮されにくいことを踏まえ、ジョブクラフティングが効果的に機能する業務を見極めることも必要となるでしょう。
まとめ
ジョブクラフティングとは、仕事のやりがいや満足度を高めるために、社員が主体的に認知や行動を変化させる取り組みをいいます。作業クラフティング・人間関係クラフティング・認知クラフティングの3つのポイントで仕事に工夫を加えることで、物理的・認知的変化を促し、生産性やワークエンゲージメントの向上につなげられます。
ジョブクラフティングに取り組む前に組織の現状を把握したい、PDCAに客観的な分析を用いたいという場合は、外部サービスを利用するのも一つの方法です。パソナが提供するクラウド型社員意識調査「パソナエンゲージメント」は、3種類のサーベイによる客観的な分析で、組織の状態把握から施策立案まで短期間で実行できるサービスです。
ジョブクラフティングを実施する際は、あわせて導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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