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パソナ ミュージックメイトコラム-MUSIC LIFE 第2回

(2014年05月22日)
ミュージックメイトコラム

パソナミュージックメイトでは、MUSIC LIFE-自分らしいオンガク活動とは-と題してコラムを始めます。
今を生きる音楽家に向けて、広がりつつある新たな可能性を全5回、毎月1回のペースで掲載していきます。
コラムを連載するにあたり長年、音楽シーンでご活躍されている永田純氏をお招きしお話を伺いました。


第2回:FOCUS〜音楽を続ける〜

第1回 FACT 音楽と向き合う
音楽活動をする上で、どのような考え方をもって生活と折り合いをつけていけば良いのか、多様化する価値観に焦点を絞り永田純氏(以下・永)にお話を伺った。

「仕事・趣味」という二元論からの脱却

----連載第1回では、プロとアマの垣根が無くなり、最近の音楽家にとっては「食べていけるかどうか」だけが唯一の判断基準ではなくなってきた、というお話がありました。では「音楽を仕事にする・趣味にする」というくくりもなくなってきていると考えて良いのでしょうか?

永:それについては少し大きな話になりますが、社会全体がどう変わってきているかということだと思うんです。そこには2つ意味があって、1つは「プロ・アマ」もしくは「仕事・趣味」というカテゴライズの根底には結局、音楽を続けようと考えた時に職業にしないと続けられない、そうでない場合それは趣味でしかない、というこれまでの二元論があったと思うんです。それが現在は音楽をとりまく環境だけに留まらず、社会構造全体が変わりつつある。もう1つは、例えば沖縄を例に挙げると、ちょっとした祝い事があればみんなが集って三線を持って歌ったりしていて、今日にも民謡が息づいていますよね。それは若いバンドにさえ受け継がれていて、自分達のライヴのゲストに民謡の大御所を呼んだりしています。それだけ社会にちゃんと等身大の音楽が根付いているという意味では日本で唯一と言ってもいい場所だと思うんです。そして、民謡や三線を受け継いできた人達には民謡協会の会長さんとかもいるわけだけど、じゃあその人がその名誉職で食べているかというとそうではないんですよね。そこは最初から「民謡で食べて行く」という発想すらなく、ただただ文化として受け取って引き継いでいくというものであって、1人ひとりの生業は他にあるわけです。音楽の歴史を考えたら、人ひとりの一生なんて一瞬みたいなものですから。

---なるほど、確かにそうかもしれません。

考えてみると外国でもそういう国は沢山あるんですよね。そもそも職業が1つじゃなければいけないというのは僕らにとっては比較的最近できた幻想みたいなものではないかと思うんです。しかも、そこで優劣がついたり、お受験に始まり、シューカツ、コンカツと限りなく続く連鎖がこの国の社会の基礎みたいなものになっている訳だけど、そこから少し頭を切り替えて、沖縄のように大事なものは大事なものとして受け継いでいきながら、生業としての職業は別にあって良いのではないか、という考え方が最近は少しずつ広がってきているように思います。そういう社会の方がラクだし、多様性や柔軟性があって楽しいですよね。

--- 一番大事にしなければいけないのはまず音楽がすごく好きだということなんですね。

永:そうですね。音楽って元々そういうものだと思いますし、そもそもお金を生む対象になるのかっていう疑問もあります。その先は個人の考え方だから、自分はもうギターを弾く以外のことはしたくないから少しでもギターがお金を生むような方向に持っていきたいんだ、という考え方もあるでしょうし、そうではなくて音楽は音楽として別のものとして続けていこうという時に、他にどういう仕事を持ちながらやれば良いのかとか、そこにもっと多様性が出て来れば面白くなるなと僕は思っています。ここでもうひとつ大事なことは、これまでは趣味で音楽をやるとなったとたんに、作品が広がり、聴かれる可能性はほとんどゼロになっていた訳だけど、今はもうそんなことはないんです。逆に職業にしなくても面白い音楽を作っている人は沢山いるし、僕らもリスナーとしてそういう人の音楽と出会う機会というのはたくさんあるから面白いですよね。

●時代の変化に沿った方法論

---- 一般的には「社会に出て音楽に携わること」=「音楽を仕事にする」と解釈されがちで、音楽以外の仕事をした時には音楽を諦めなければいけないという恐怖観念みたいなものや不安を持ってしまう方もまだまだいると思うんです。音楽を続けるか、別の職業に就くか、どちらかを選択する必要性というのはあるとお考えですか?

永:ロックやポップスのバンドをやっているミュージシャンたちにとって、そうした考え方はもうすでになくなっているんじゃないかと思います。ちょっと前までは大手のレコード会社やプロダクションがスカウトに来たりして、アルバイトや会社勤めをしながらバンド活動をしていた人たちが「バンドで生きていこう」と決断し仕事を辞めた途端にバンドが終わってしまったりということもあったかと思いますけど、さすがに最近はレコード会社もそんな状況にはないし、バンド側も自分たちで出来るなりのことをストリートやライヴハウスでやって、物販などでそれなりの収入を得たりする人たちも結構出てきています。

一方で、クラシック系の音楽家の方たちには、もう少し大変な刷り込みがあるかもしれませんね。小さい頃からレッスンを受けて音大に入るっていうレールに乗ってきた方が多いと思いますが、そこで思い描いてきたものが今の世の中でどこまで実態があるものなのかということでしょう。これまで「音楽家として社会に出る」というと、オーケストラに入る、演奏家として独り立ちする、音楽講師をやるというくらいの選択肢しかなかったのではないかと思うんですよね。それこそが「プロかアマか」ということだったと思うんです。けど、今はクラシックと世の中の接点というのも広がってきて『image(イマージュ)』のような作品がひとつのジャンルになったり、普通の人がクラシックを聴く環境も増えてきていますから、そこをちゃんと見つめれば、その人なりのやり方は必ず見つかるはずだし、「音楽を続けるか別の職業に就くか」という二択で考える必要はもうないと思います。そして、これは今、どんなジャンルの音楽家にも言えることではないでしょうか。もしかしたら、すでに音楽だけに限った話しでさえないかも知れません。

----なるほど。そうした二元論にこだわらずに、音楽を続けていきたいという思いを実現する生き方というのは、どんな感覚で音楽を捉えることなのでしょうか?

永:生きていくためにお金は必要だけど、もっと大事なものはあるよね、というシンプルなことだと思います(笑)。そういうことにみんなが少しずつ気付いてきているんだと思いますね。例えば、所謂セッション・ミュージシャンとして食べていけている人たちがいるとします。もちろん、それができるということは、高い演奏技術やコミュニケーション能力をはじめ、その職能があるからできている訳ですけど、では、そういう人たちすべてがやりたい音楽をやれているかというとそうじゃなかったりするわけでしょう。

 

「マルチキャリア」という生き方

---音楽を仕事にしているから好きなことができて楽しい、とは限らないわけですね。

永:そう、これは音楽に限りませんけれど、職業としてやるというのは世の中でのある役割を担うことですから、当然好きなことだけをやれるわけではないですよね。だからこそ、「健全に自分の音楽をやり続けられるのであれば、その為に就職することも厭わない」って言っているミュージシャンもいれば、音楽だけで食べているミュージシャンの中にも、好きでやる音楽と食べるための音楽を明確に分けて、バランスをとりながら両立している人もいる。ならば、食べるための音楽の部分がほかの仕事に代わってもまったく構わないと思うんです。先の沖縄の例も同じですよね。「Wキャリア」とか、「マルチ・キャリア」と呼んでいますけど、生活の為に稼ぐことに何か貴賤があるわけじゃないんだから、どちらも胸を張っていて良いと思うんですよね。主・副の副業じゃなくて、複数の複業ですね。だからアルバイトをしながらでも好きな音楽を続けている音楽家が心底「カッコイイね」って言われるようになったら素晴らしいし、それが認められる社会になれば良いと思います。

----確かに、マルチキャリアとして他に仕事を持ちながら音楽を続ける人がちゃんと認められる世の中になれば素晴らしいですね。

永:うん、それが徐々にできるようになってきたのは世の中の変化もあるし、音楽を続けたい人を後押しして、作品を広めていけるようなネット上のツールが出てきているということも大きいでしょうね。音楽活動をしていく上での価値観は多様化していますし、もうこれまでのものの見方や選択肢に囚われる必要はまったくないんです。

インタービュー:永田純×ミュージックメイト (ライター:岡本 貴之)

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プロフィール

永田純 ナガタジュン 音楽エージェント/ プロデューサー。
1958年東京生まれ。70年代中頃よりコンサート 制作等にかかわり、79-80年、YMOのワールド・ツアーに舞台スタッフとして同行。84 年 坂本龍一アシスタント・マネージャーを経て、85年以降、矢野顕子、たま、大貫妙 子、レ・ロマネスクらをマネージメント、細野晴臣、友部正人、野宮真貴、マルセル・ マルソーらを代理した。プロデューサーとしては 東京メトロ、六本木ヒルズ、東急 文化村、J-WAVE、世田谷文化財団等の主催公演、NHK「みんなのうた」、セサミストリー ト日本版テーマ・ソング、スタジオジブリ「ホーホケキョ となりの山田くん」サウ ンドトラック等にかかわる。また、オーディオ代理店、音楽出版等を手がけ、2011年 秋に設立された“独り立ちするミュージシャンのためのパブリックサービス”一般社団 法人ミュージック・クリエイターズ・エージェント代表理事を務める。京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部教授。有限会社スタマック代表。元・東京シュタイナーシュー レ理事。著書に「次世代ミュージシャンのためのセルフマネージメント・バイブル」 「次世代ミュージシャンのオンガク活動ハンドブック」。

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