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RYODENがパソナと共に挑む、クラウド開発内製化の現在。「共に成長を目指せる協業先」としての伴走型内製化支援。
クラウド開発チームでの変化が、組織の“変化の種”になる
DXやクラウド活用が叫ばれ、ビジネスの潮流が目まぐるしく変化する今の時代、自社でエンジニア組織を持たない企業は大きな選択を迫られている。外部に頼り続けるのか、それとも内製開発できる会社を目指すのか――。今回、登場するRYODENが後者を選択したのは2022年のことだった。
「以前は、新たにサービスを作る際は“外注”という選択肢しかありませんでした。ところが、ビジネススキームが驚異的な速さで変わる時代において外注のみに頼っていると、どうしても他社に置いていかれてしまう。自分たちで開発できないと、世の中のスピードについていけない。そんな危機感がありました。」と話すのは、 戦略技術センター 開発技術部でクラウドチームを率いるリーダーの川上貴徳氏だ。
年々デジタル技術を必要とする場面が増えてくるなかで、川上自身、外注中心の開発体制に限界を感じていたと当時を振り返る。その後、2023年にRYODEN内で戦略技術センターが新設されると、開発の内製化が開始された。ただし初期メンバーはごくわずかだったという。
「開発経験があるエンジニアは、ほんの一部でした。正直なところ、開発スピードはさほど早くはなかったというのが、当時の印象です。」(川上氏)
約2年が経過した現在、戦略技術センター・開発技術部は22名体制となり、クラウド開発チームの構成メンバーは、専任5名、兼任3名を含む少数精鋭チームとなっている。ちなみに今回インタビューに参加してくれた熊谷氏は、AI開発などの複数の部門を兼務している。兼任するエンジニアがいるのは、チーム間の連携を強化する狙いもあった。
「クラウド開発チームを立ち上げた当初は、案件数がそれほど多くはなかったということもあり、まずは自分たちの手でやってみようという方針でした。ノウハウを身につけるため、多少時間がかかっても外部には頼らず開発を進めていました。そうしたなかで、ネズミ・害虫の遠隔監視ソリューション『Pescle(ペスクル)』が軌道に乗り、他のサービス開発にも取り組むようになりました。このころから開発案件が一気に増え、人手不足が顕在化してきたのです。この先も内製開発を進めていくには、社内のエンジニア力をさらに高める必要がある。そう考え、私たちと同じ目線・目標で伴走してくれる協業先を探すことにしました。」(川上氏)
「共に成長を目指せる協業先」――パソナとの出会いと伴走支援
開発の内製化を加速するためにはパートナーが必要と考え、協業先を探すことになったRYODEN。パソナを含めた2、3社から提案を受けた。ただ2018年ごろから事業部門でパソナとは既に取引関係にあったという。新たにサービスを作る際、クラウド環境の構築や、複数ツールを組み合わせた状態でも処理速度が向上する「負荷分散/並列処理」を導入するプロジェクトを共に推進した経験があり、RYODEN社内でのパソナに対する評価は高かったという。それに加えて、開発経験が豊富で知見があることも協業先を決めた大きな理由だったと川上氏は話す。
「これまで、外部の方に入っていただきながら開発した経験がありませんでした。ですから最初は、本当にそんなことできるのだろうか?という半信半疑の気持ちもあったというのが正直なところです。でもパソナさんは、ただ開発体制を提供するだけでなく、どうすればRYODENでの開発内製化を推進できるかに徹底して向き合ってくれました。そこが他社との決定的な違いでした。」(川上氏)
提案を受けた中からRYODENはパソナを選び、2024年9月からパソナのエンジニアたちが開発の内製化を伴走支援することになった。とはいえ、初期のころはまだRYODENでも内製化に着手して間もないということと、外部メンバーとの開発は初めてということもあり戸惑ったと話すのは、現場でエンジニアとして活躍する熊谷雄太氏だ。では、どのように信頼関係を築き上げていったのかを伺うと、
「会社は違ってもお互いエンジニア同士なので、プログラミングという共通言語があるんですよね。だから技術的な話をしたときに通じやすいという前提があり、会話のスタート地点が合っていました。これは大きかったと思います。さらに、困ったときに相談を持ちかけると、単なる対処法だけでなく“プロジェクトとしてどうあるべきか”という視点で一緒に考えてくれました。このようなコミュニケーションの積み重ねによって、自然と心理的安全性が生まれたのではないでしょうか。」(熊谷氏)
同じく現場でエンジニアとして活躍する前田一眞氏は、次のように振り返る。
「パソナさんが参画するようになると、毎朝10時からミーティングを行うようになりました。そこでは、わからないことや確認すべきことがあるたび会話を重ねていきました。またRYODEN側から仕様を伝えると、ただ指示通りに作るだけでなく“ここはもっとこう改善したほうがいいのでは?”といった提案までしてくださった。単なる受託開発にとどまらず、新しいプロダクトを一緒に作り上げているという実感がありました。こうした対話を繰り返すことで、両社が単なる業務委託の関係ではなくなっていったのだと感じています。」(前田氏)
やがてRYODENとパソナの混合チームは、実際のプロジェクトを進めながら、開発状況の見える化や各自タスクの透明性の強化、チーム力の見える化、スキル向上などに取り組んでいった。そして戸惑いながらも少しずつ、しかし着実に信頼関係を築いていった。
技術と対話の両輪で、生産性が2倍に向上
パソナの伴走支援が始まった後、特に大きな変化として挙げられるのが“振り返り文化”の定着だったという。そして、パソナの提案で始まったスクラム手法※1での開発は、今ではRYODENにおけるクラウド開発チームの標準スタイルとなっている。
「スクラム手法を導入する前の打ち合わせは、基本的に“作業の報告”にとどまっていました。まさに“ビフォア・スクラム”とも言える状態だったと思います。しかしスクラム手法を取り入れた後は、“次のアクションをどうするか”という前向きな議論が生まれました。悩んでいることや困っていることを率直に共有し、チームで解決策を考える。建設的な会話が増えたことで、定例会議が以前よりもずっと意味のあるものになったと感じています。」(熊谷氏)
「私も、スクラム導入後にチームの雰囲気が大きく変わったことを実感しています。今では、週に1回の振り返りの場で、単なる作業報告から一歩踏み込み『ここは改善できるのではないか』といった意見交換が自然と行われるようになりました。このような取り組みを通して、チームの成長を実感できるようになりましたね。」(前田氏)
こうした現場エンジニアたちの声を裏付ける数字が出ていると、笑顔で話すのはリーダーの川上氏。システムへの仕様の理解が深まったのか、伸び悩んでいたエンジニアの開発スピードが一気に加速し、プルリクエスト(Pull Request・以下プルリク)※2の数も増えたと話す。
特にスクラムマスターとしてチーム全体の調整役を担うパソナ・大杉明里氏がプロジェクトに参加し始めた2024年12月の生産性は、内製開発を始めた当時の2倍近くに大幅アップした。
「プルリクのクローズ(処理)にかかる時間も短くなっています。もちろん、時間が文字通り半分になったわけではありませんが、プルリクの数が増えた分、処理スピードもアップし、効率が良くなっていることは明らかです。おそらく、プルリクの単位や内容も改善され、タスクを適切に処理できるようになったのではないかと考えています。」(川上氏)。
このようにRYODENでは開発内製化とアジャイル転換への重要な一歩を踏み出した。
※1:スクラム手法…短い期間で開発と振り返りを繰り返すアジャイル手法の一種。変化へ柔軟に対応しながら、チームで効率よく成果を出すことが可能となる。
※2:プルリクエスト(Pull Request)…機能追加やバグの修正などについて、開発者が自分のコード変更をチームに共有し、レビューを依頼してメインのコードへ統合を提案する仕組み。
社内開発の内製化は“目的”ではなく“手段”――その先にあるビジネスの変革へ
順調に開発スピードが上がりチーム力が強化されているなかで、今後パソナのエンジニアは、フルリモートと対面の勤務スタイルを組み合わせる柔軟なスタイルを取り入れるという。
「現在、RYODEN様といくつか企画を進めていますが、その一つに“人材の交流をさらに活性化させること”があります。例えば、プロダクトを作るプロセスのなかでワークショップを企画したり、参加者の皆さまと新たな取り組みを進めたりします。また、完成したプロダクトを一緒に営業していくなど、それぞれが連携しながらビジネスを加速させていける関わり方ができればと考えています。お互いの事業がさらに前進できるような協働の形を一緒に作り上げていきたいですね。」(パソナ営業・建部信幸氏)
RYODENと対面での開発を行うことに対して、パソナの大杉氏は「出社することで、体力的に負担が増える面はあります。しかしその一方で、コミュニケーションがよりシームレスになれば開発効率の向上にもつながるのではないか、という期待感もあります。」と話す。他にも、エンジニア同士の空気感――例えば “今ちょっと詰まっていそう”などの気配は、出社しているからこそ共有できるものだと指摘する。そうした小さな気づきがあればチーム全体での開発がしやすくなり、よりスムーズな連携につながるのではないかと期待感を寄せる。
一方で、エンジニアは一般的にリモート勤務が主流となっている世の中の流れの中で、あえて対面での開発を進めることをどのように感じているのだろうか?
RYODENの熊谷氏は「私たちも、フルリモートでうまくいくケースが多々あることは理解しています。ただパソナ建部さんからの『顔を合わせてやってみませんか?』という提案に関して、さらに生産性が上がる可能性を感じました。もちろん、対面が必ずしも効果的でないケースもあると思いますが、まずはトライしてみたいという気持ちです。正直不安はありますが、それ以上にチーム内にどのような変化が生まれるか楽しみですね。」と話す。
またRYODENの前田氏は「私は、エンジニア同士で会話しながら開発を進めるスタイルが比較的好きなタイプです。もちろん出社したからといって、必ずしも生産性が上がるとは限らないでしょう。それは、人それぞれの性質や働き方のスタイルに左右される部分が大きいからです。ただ、パソナさんとの取り組みでも試してみたいという気持ちがあります。これは生産性の向上を狙ってというよりは、チームの一体感や空気感を共有することで得られるメリットがあるのではないか、という期待感からですね。」と話してくれた。
“自分たちでサービスを作れるようになる”ことは、ゴールではない。その先にある“自分たちで新しい価値を生み出せる会社”になること――それが、RYODENのクラウド開発チームが目指す未来だ。
「プロジェクトを管理できる人材にも限りがあります。だからこそ、パソナさんはこちらから課題をお渡ししたらその後は自律的に動いてくださるのが、我々としては何よりありがたいと感じています。まさに、理想的な伴走支援ですね。」(川上氏)
クラウド開発チームの歩みはまだ始まったばかりだが、変革の兆しが、着実に形となりつつある。クラウド開発チームが目指すのは、全社的なDXのけん引役として、スピーディかつ柔軟に、現場の課題やニーズに応えられる開発チームだ。単なる開発リソースではなく、ビジネスの変革をドライブする戦略的パートナーとして、社内外から頼られる存在へ。現場に根ざした挑戦は、これからも進化を続けていく。
株式会社RYODEN
戦略技術センター 開発技術部 基盤開発グループ グループリーダー 前田一眞氏
戦略技術センター 開発技術部 基盤開発グループ 川上貴徳氏
戦略技術センター 開発技術部 先行開発グループ 熊谷雄太氏
インタビュー日時:2025年5月13日