導入事例

東日本旅客鉄道株式会社 TAKANAWA GATEWAY CITY

#ワークショップ  #デジタルツイン 

東日本旅客鉄道株式会社 TAKANAWA GATEWAY CITY

業界
鉄道
効果
地域課題解決

地域住民と共に愛着の持てる新たな街の魅力発信を目指し「ストーリーテリング型GIS」を活用

街のプロモーションとして新しい情報発信手段に挑戦

2020年、東京都心の大動脈ともいえる山手線で、品川駅と田町駅の間に30番目の新駅として高輪ゲートウェイ駅が誕生した。現在駅周辺では、2025年3月の「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」のまちびらきに向け、街づくりが着々と進んでいる。

(左)東日本旅客鉄道株式会社 櫻井 昭夫氏 //(右)東日本旅客鉄道株式会社 入澤 允崇氏 (左)東日本旅客鉄道株式会社 櫻井 昭夫氏 //(右)東日本旅客鉄道株式会社 入澤 允崇氏

「国際交流拠点である品川駅近く、高輪ゲートウェイ駅周辺ではグローバルな視点で街づくりを進めてきました。一方で、駅周辺には高輪の住宅地があり、地元の方々が暮らすローカルな一面もあります。“グローバル×ローカル”という二つの側面を備えた街としては、他に類を見ない特性を持っていると捉えています。」と話してくれたのは街づくりプロジェクトに関わってきた、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の櫻井昭夫氏だ。

現在新たな街づくりのため、デジタル領域では主に4つのプロジェクトが進んでいるという。

1)デジタルツイン
国土交通省が推進する3D都市モデルを活用している。災害時の避難誘導を円滑に行うためにシミュレーションを行い、街を訪れた人たちが災害発生時に安全・安心に過ごせるような準備を進めている。

2)スマートシティの実行計画
鉄道と街のデータを活用することで、大規模イベント前後では街への滞在を提案するなど、駅の混雑緩和につなげるのはもちろん、公共交通を使ったトータルでの移動のしやすさを提供しようとしている。

3)空間自在プロジェクト(KDDI株式会社様と協業)
人それぞれの働き方に寄り添って、空間を超えたオフィス空間を提供。高画質モニターを壁に設置し、遠隔地にいる人とあたかも隣同士で会話しているような空間づくりを目指している。

4)スマート健康ステーション
駅で気軽にオンライン診察ができるような場づくりを進めている中で、TAKANAWA GATEWAY CITY​から、睡眠や食、運動機能などにフォーカスしてサービスを提供する計画だ。

このように同社では街づくりの一環として、4つの主な取り組みを進めると同時にWebサイトを立ち上げ、SNSも活用しながら積極的に情報発信を行っている。
これら既存の情報発信に留まらず、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」という街のコンセプトにふさわしい取り組みを検討するなかで、今回は実証実験として、地域住民たちと共に街を知り、理解を深めるためにノーコードの「ストーリーテリング型GIS」※1を活用することになったという。近年、デジタル地図上に写真や動画、音声などを織り交ぜ、物語のように仕立てた「ストーリーテリング型GIS」※1による情報発信手法が、プロモーション等において効果的と言われていることも実証実験に挑戦した理由の一つだった。

「私たちの街づくりを感じていただくため、地域の方と定期的に清掃活動を行ったり、駅でのイベントを企画とともに行政主催のイベントへ参加したりすることで、地域やイベントに参加してくださる方々への情報発信を行っています。一方で、そういったリアルな場での発信やWebサイトの運用、SNS投稿だけでなく、より多様で街の魅力を伝えられる情報発信手段の開拓にチャレンジしたいと感じていました。そこで、地域の方々と一緒に物語を表現しながら繋がることができる『ストーリーテリング型GIS』※1に可能性を感じたのです。」(櫻井氏)

※1…地理情報をデジタル化した地図で管理することをGIS(地理情報システム)といいます。その地図上に写真や音声などを織り交ぜることで、まるで物語を話すような形でその場所の魅力を伝えることができるものです。

街歩きでヒントを得て、参加者たちが自らの物語をデジタル地図上で表現

実証実験では、3D都市モデルの利活用を図る国土交通省「Plateau(プラトー)」事業に参画し、WebGIS「Re:Earth」を活用することになった。まず、WebGIS「Re:Earth」で、ユーザがWebサイト上の地図をスクロールすると、コンテンツが展開されるストーリーテリング機能を新たに追加実装。このストーリーテリング機能を使って、デジタルの3D地図上へ高輪エリアの魅力を表現するストーリー仕立てのコンテンツを制作するワークショップが行われることになり、参加者の募集が行われた。

「ワークショップは合計3回。1回目は2023年8月に実施し、2回目は年末、最終の成果発表会は年明けに行うスケジュールを組みました。Webサイト等での参加募集と同時に、普段からエリアマネジメント活動に参加してくださっている人にお声がけしました。その結果、高輪周辺の大学や企業など幅広い年齢層の17名が参加してくれることになったのです。」(JR東日本 入澤允崇氏)

ワークショップの様子 ワークショップの様子

デジタルツールの活用に興味を持った企業担当者や、周辺にキャンパスのある東海大学や明治学院大学の学生も参加するなど、バラエティー豊かな参加者が集まり、3チームに分かれて取り組みを行うことになった。

「1回目のワークショップでは、高輪にお住まいの大学の先生が街歩きをしながらエリアを案内してくれました。このアパートにはかつて太宰治が住んでいた、というように街に愛着がわくような興味深い話をしてくださったおかげで、1回目の街歩きワークショップは大いに盛り上がりました。」(入澤氏)

事前のGISツール操作指導など、懇切丁寧な支援がワークショップを成功に導いた

年末に行われた2回目のワークショップでは、ストーリーテリング機能が付加されたWebGIS「Re:Earth」を使いながら、デジタルの3D地図上へ高輪周辺の情報を落とし込む作業に挑戦。実はこのWebGIS「Re:Earth」はノーコードなのでIT知識がなくても操作可能なツールだ。とはいえ、初めてGISツールを触る人にとって操作は容易でない。そこでワークショップを円滑に進めるため、パソナが中心となり操作方法についての参加者向け事前勉強会を実施した。

「パソナさんが万全の体制で事前勉強会をサポートしてくれたおかげで、参加者の皆さんも少しずつ操作方法を覚えていただけました。おかげでワークショップの本番当日は、スムーズに作業できました。」(櫻井氏)

ワークショップはJR東日本のサテライトオフィスで実施することになったものの、オフィスのネット環境は社内向けのもので、ワークショップの参加者は利用できない状態だった。そこでパソナはWi-Fi端末を用意して通信環境を整備するなど、ソフトだけでなくハード面でのバックアップも行っている。

「作業前に、パソナの担当者さんがWebGIS「Re:Earth」を使った飛行機の航路シミュレーションを事例として見せてくださいました。それもあったおかげで、参加者の皆さんはどのようにGISツールを使えば良いのかイメージできたようです。こうやって具体的な事例を示していただけたのは良かったですね。」(櫻井氏)

今回のワークショップは、1回目から2回目を実施するまでに3~4カ月期間が空いてしまった。そこで、継続参加してもらえるよう定期的にメールで連絡を取るなどのフォローを行ったと振り返る入澤氏。こまめなコミュニケーションを経ることで、最終の成果発表会を終えた頃には、参加者同士の新たなネットワークが構築されていた。

「今回は、ワークショップで街歩きをしたときに見聞きした情報をデジタル上にある3Dモデルの中で写真や動画などを貼り込み、マップを作り、ストーリーを組み立てていきました。参加者の中にはデジタルデータとして残すことで、今後データが利活用できることについて新たな可能性を感じたという意見やこれまで模造紙とポストイットが主流だったワークショップの成果物への新たな可能性を感じたといった意見も。また、学生たちからは、大学の授業や教育現場で活用したいといったポジティブな意見を多数いただきました。」(入澤氏)

櫻井氏は最終成果発表会のなかで、学生チームのプレゼンテーションが強く印象に残っていると振り返る。

「大学生たちが作った作品には、日常生活の中に溶け込んでいる“ふとした発見”が表現されていました。私も仕事柄、駅周辺をよく歩くのですが、その際には気づかなかったことが多く表現されていて、学生たちの素晴らしい感性を感じられると同時に、自分の学生時代の感覚にも戻るようなところがあり、とても興味深かったです。」(櫻井氏)

ワークショップ参加者制作コンテンツ(テーマ/高輪ゲートウェイ駅周辺の遊び・憩い) ワークショップ参加者制作コンテンツ(テーマ/高輪ゲートウェイ駅周辺の遊び・憩い)

ワークショップ参加者制作コンテンツ(テーマ/高輪ゲートウェイ駅周辺の建築) ワークショップ参加者制作コンテンツ(テーマ/高輪ゲートウェイ駅周辺の建築)

他にはない唯一無二の街の特性を生かし、新たな物語づくりを目指す

“グローバル×ローカル”という二面性を持つこの街で、100年先の心豊かなくらしのための実験場​と銘打ち、今後も進化を続けていく高輪ゲートウェイ駅エリア。JR東日本は新たな文化を創造し発信していく取り組みを行うなかで、日本が元気になるような次世代につながるビジネスや文化の創造・発信をこれからも続けていきたいと考えているという。

「次世代を育てていくというと大げさですが、街づくりについて地域の方たちが自発的に考えながら動ける仕組みを街へ実装するような、良い流れを作れるように私たちも貢献していきたいです。」(入澤氏)

「今回、ワークショップの実施経験が豊富なパソナさんにいろいろとサポートいただき、本当に助かりました。一般的に『パソナ』と言えば、人材派遣をメインとする企業イメージがありました。しかしシステム開発会社と経営統合したことで、人材×テクノロジーという両軸でビジネスを展開されるようになりました。システムは効率的にビジネスを進めるうえで必要ですし、人材も必須。この相乗効果を発揮していただきながら、今後も協業させていただけるとうれしいです。」(櫻井氏)

2025年3月には「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」が誕生する。山手線の30番目の駅、高輪ゲートウェイの周辺には新たな人の流れが生まれ、その数だけ物語が生まれるのだろう。“グローバル×ローカル”という二軸でどんな街に進化していくのか、これからが楽しみだ。

東日本旅客鉄道株式会社

東日本旅客鉄道株式会社
櫻井 昭夫氏
入澤 允崇氏

インタビュー日時:2024年7月8日


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