RPAによる経営資源の最適化と、その先にある未来■議題テーマⅣ

昨今、知的生産性の高い業務にシフトすることで競争優位を高める働き方が注目されています。そんな中、定型業務からの脱却の手段としてRPAが注目を集めています。
2017年11月2日に開催したセミナーでは、RPA導入を成功に導くために、導入後のビジョンと、RPAがもたらす効果を経営視点から捉えることが重要であるとし、RPA導入を成功に導くためのポイントを紹介しました。


<パネリスト>
株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ 代表取締役 MBA/統計士 坂本 裕司 氏
株式会社パソナ Dotank本部 東日本ソリューション事業部 事業部長 薮本 佳典

<トピックス一覧>

■テーマⅣ:“RPA導入効果”と、“全体の知的生産性の向上”は リンクできているか?

薮本:

RPAはツールの一つですので、ツールファーストでいくとその後何を実施したかったのか?目的は何か?あるべき姿は何か?となってしまいます。ツールありきでなく、あくまで「人の働き方」が重要だと考えます。
目的は、創造的業務へのシフトを実現するために、定型業務を開放することだと思います。
それによって、20%~30%の効率化の議論で終わるのではなく、10倍~20倍の成果を目指すことで初めて働き方改革と言い切れるのではないでしょうか。
RPAに限らず、オフィスレイアウトの改善やテレワーク、グループウェアなどの情報共有基盤の変更など様々な投資を伴う働き方改革の施策が世の中で実行されていますが、その後どのような状態になっているかを定量的に継続的に把握されているケースは非常に少ないと思われます。
働き方改革の難しさはホワイトカラーの業務実態の把握や、効果や成果を定量的、継続的に把握・測定することにあると感じています。

坂本:

ブレーズ・パスカルが、「人間は考える葦(あし)である」と表現したように、人間に期待される仕事とは知的資本を向上することと考えます。従って作業のロボット化は、「既存の時間経営資源の余力回収」に過ぎず、経営的にはこの取組みはプロローグであってゴールではありません。昨今ダイバーシティへの取組みも顕著になってきており、日本では女性の管理職登用がその狙いのように扱っておりますが、本来目的は「知的資本の向上」ではないでしょうか。故に、RPA導入は目的ではなく手段の一つに過ぎません。貴社が目指している就業環境ビジョン(コトのデザイン)が明確ではないままRPA(モノの優位性)導入に期待しても結果は何も変わりません。
創造的な業務に従事する為に、RPAによって既存の時間経営資源から余力を回収する。まだまだこの順番が逆のケースは散見されます。
仮に、期待されるこの順番通りでRPAを手段として採用していたとしても、改革成功の確率は高いとは言えません。成功への付加因子として、創造的な業務に関する具体的な方向性の提示が中間管理職には求められます。現場担当者からすると「定型業務から創造的業務へ時間経営資源をシフトさせたいことは理解できるが、どんな業務が自分にとって創造的業務なのかわからない」、というのが実際です。現場担当者におけるこの不安を払拭しない限り、RPAによる作業の置き換えは、「自ら(=現場担当者)の仕事が奪われる」、という見解に落ち着いてしまいます。そして、昨今のRPA導入現場において、「創造的業務の定義は、とりあえずRPA導入が終了した後・・・」、となっている企業が多いようです。これも経営改革として正しい順序ではなく、現場担当者のモチベーションを低下させています。
この状況打破を期待されている人材こそが、中間管理職です。企業の方向性に沿って中間管理職自身が保有している現場担当者の時間経営資源を、そもそもどんな創造的業務に活用したいのか。経営者同様、中間管理職にも高邁な主語で活動することが求められます。

■まとめ

RPAプロジェクト推進者の皆さんは下記を踏まえてプロジェクトを推進していくことが肝要です。

  1. RPAは導入が目的ではない
    (RPAは手段であり、むしろスタート)
  2. 目的意識の設定(そのあり方)が重要である
    (目的を明確に共有すること)
  3. 全体の知的生産性の向上、即ち「全体成功」のイメージと、RPAによる 作業効率化 「部分成功」 がリンクしているか
    (経営者の考え方からすると、「効率化手段としてのRPAの導入」が成功しても部分成功であり、会社としての全体成功(知的生産性の向上)を回収することが重要)