RPAによる経営資源の最適化と、その先にある未来■議題テーマⅡ

昨今、知的生産性の高い業務にシフトすることで競争優位を高める働き方が注目されています。そんな中、定型業務からの脱却の手段としてRPAが注目を集めています。
2017年11月2日に開催したセミナーでは、RPA導入を成功に導くために、導入後のビジョンと、RPAがもたらす効果を経営視点から捉えることが重要であるとし、RPA導入を成功に導くためのポイントを紹介しました。


<パネリスト>
株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ 代表取締役 MBA/統計士 坂本 裕司 氏
株式会社パソナ Dotank本部 東日本ソリューション事業部 事業部長 薮本 佳典

<トピックス一覧>

■議題テーマⅡ:現場のロボット化対象業務のヒアリングにおいて困ることはないか?

薮本:

一部には、「ロボットを導入することで自分の仕事が奪われる」とか、「新しいシステムを導入して余計忙しくなったり、ロボットに自分の仕事を合わせなきゃいけないのか」などの声を間接的に聞くことがあります。
お客さんによってはユーザヒアリングの時間をなかなか確保していただけなかったり、業務情報の記載をお願いしても、ラフなものしか提出されなかったり、業務抽出にご協力いただけない場合もあります。RPAを導入する意味が現場に正しく伝わっていないことが原因かもしれません。特に、RPAを導入した後の期待役割内容が伝わっていないケースが多いと感じます。そうなると人は自分の立場を守るようになり、非協力的になることが多いと感じます。

坂本:

ロボットを導入することで得られるメリットを、会社と現場担当者の双方で事前に共有できていますか?このメリットを語れるということは、テーマⅠの「本来実現したい目的」が共有できているとも言えます。
ここで現場担当者のメリットを解説すると、「成果に直結する仕事(だけ)に従事できる環境」を提唱したいと我々は考えています。会社は、戦略からデザインされた「期待される成果」を回収したいのであり、現場担当者にはその期待される成果に直結する業務(以下、基本機能業務という)だけにアサインさせられることが望ましいはずです。現場担当者も、期待される成果に直結する基本機能業務だけに従事できる環境は本来望むところであります。
しかし、基本機能業務以外の業務(以下、補助機能業務という)に振り回されていることが実際であり、補助機能業務を現場担当者から手離れさせるためにRPAを導入することは、会社と現場担当者に双方にとってメリットがあると考えられます。
以上を踏まえると、RPA関係者が現場から業務実態を回収する際に、業務を洗い出すこと以上に自社の戦略に基づいて現場担当者業務(基本機能業務と補助機能業務)の分類作業を怠っている現場では、結果として正しく業務を洗い出せていないとも言えます。
ここで次のような意見が聞こえてきます。「基本機能業務かどうかはさておき、本来業務と非本来業務に分類しているので、そこはクリアできている」。では、なぜ本来業務が定義できているにも関わらず、RPA導入に現場担当者はメリットを感じないのでしょうか。その答えは、本来業務・非本来業務を定義する軸に起因します。例えば、一般的には事務作業は「非本来業務」に分類されると思われます。しかし、この議論は一般論であって自社の戦略という軸に基づいた議論ではありません。経営者レベルならば一般論でも理解はできますが、現場担当者レベルでは一般論に理解はできても納得したくないのが心情です。結果、その一般論は共感されません。世間のベストプラクティスであっても自社のベストプラクティスにならなければ何の役にも立ちません。
現場担当者の心情に対してここを打破するために、自社なりのオリジナルな論理性を確立させる必要があります。その為には、自社の戦略から期待される成果の定義、及び成果の定義に直結する基本機能業務の分類作業が求められます。

モデレーター:

RPAが使えるか否かだけで判断していないか?誰の為の取組みなのかを皆が認識できるように、そして仕事が奪われるのではなく、負荷を取り除いてあげる方向にもっていけるとよいですね。
そして、業務を洗い出すだけでなく 分類もしておくことが重要ですね。これは洗い出しによって見える化された業務に信念を吹き込む作業とも言えますね。
期待される成果に直結する基本機能業務だけに現場担当者が取り組めるように考えられているか?論理性と客観性の高い丁寧な取組みが求められますね。